【神戸スティーラーズ特別連載第6回/RWC2023フランス大会〜神戸から夢の舞台へ】 「すべてが印象深くて夢のような時間でした(PR中島)」 「目標を達成できたことが誇らしかった(CTBラファエレ)」 中島 イシレリ、ラファエレ ティモシー 「ラグビーワールドカップ2019日本大会」を振り返る。
【コベルコ神戸スティーラーズ】
連載第6回目では、前回大会で日本代表史上初のベスト8進出に貢献したPR中島 イシレリとCTBラファエレ ティモシーにインタビューを実施。「SHIZUOKA SHOCK」と世界に配信されたアイルランド戦のことやワールドカップに出場し感じたことなどを聞いた。(取材日:2023年4月28日)
目の前のことにフォーカスし、気が付けばワールドカップだった。
ラグビー選手なら一度は憧れる大舞台だが、意外にも彼らは目標にもしていなかったそうだ。
ラファエレは、2016年秋、初めて日本代表に招集され、同年11月のアルゼンチン戦でファーストキャップを獲得。
「日本代表としてテストマッチに出たい。その一心でハードワークし、試合に出続けたら、気がつけばワールドカップだったという感じでしたね」
中島は、2018年秋に初招集され、同年11月ニュージーランド戦にロックで後半9分から出場した。その後、当時総監督を務めていたウェイン・スミス(現・メンター)からの勧めもあり、プロップに転向。チームでは故・スティーブ・カンバーランドコーチや元日本代表PRの平島 久照、日本代表では長谷川 慎スクラムコーチから指導を受け、驚異的な成長を遂げ、日本代表の左プロップとして「ラグビーワールドカップ2019日本大会」出場を果たす。
「先を見ずに1回1回の練習にフォーカスして、目の前のことに取り組んでいました。そうしたら、ワールドカップメンバーに選ばれて。ラッキーでしたね」と茶目っ気たっぷりに笑う。
大会ではラファエレは全5試合にフル出場。中島は、左プロップの控えとして試合途中からピッチへ。特別意識はしていなかったというワールドカップの舞台だが、両選手は「楽しかったですね!」と声をそろえる。
侍のような気持ちでアイルランド戦に臨んだ。
当時ランキング2位の同チームと激突し、19–12で日本代表が勝利した。開催地が静岡・エコパスタジアムであったことから、「SHIZUOKA SHOCK」と海外メディアに報じられた一戦だ。
試合は、前半を9–12で折り返すと、後半18分、ラファエレからのラストパスを受けたWTB福岡 堅樹(元パナソニックワイルドナイツ)がインゴールへと飛び込み、逆転。SO田村 優(横浜キヤノンイーグルス)がゴールキックを決め、16–12に。31分にもPGで加点し、リードを広げる。終盤、アイルランドの猛攻を受けるも、福岡のインターセプトからピンチを脱すると、そのままリードを保ってノーサイド。グラウンドには歓喜の輪ができた。
攻守で活躍したラファエレは、「用意したことをやり続ける。それが、ゲームプランでした。得点差が開かなければ、チャンスがある。それを信じて、やり続けました。それが勝利につながりました」と振り返る。
初戦のロシア戦は、30–10で勝利したものの、ミスが目立ち、どこかぎこちなかった。しかし、アイルランド戦は違う。
「開幕戦は緊張もあって、いろんなことを考え過ぎていました。けど、アイルランド戦は、皆、リラックスできていて、その上で、自分の仕事に集中しようとなっていました」とラファエレ。
BLOCK THE NOISE.
強豪との一戦に臨むにあたり、ジェイミー・ジョセフ日本代表ヘッドコーチからそう声をかけられたそうだ。
「対戦相手のこと、勝っている負けているとかスコアのことなど関係なく、とにかく自分たちのことに集中しようというマインドになっていました。本当に侍になったような感じで、最後まで無心で戦いました」と中島。
適度な緊張感の中、全員が自分の仕事を遂行し、勝利を手繰り寄せた。
「あのアイルランドに勝ったんだと、嬉しかったです!(中島)」
「最高にハッピーでした!これまでのハードワークがあのような形で結実して、幸せでした(ラファエレ)」
勝利の瞬間を思い出し、笑みを浮かべる両選手。ワールドカップのすべてが印象に残っているが、アイルランド代表戦は忘れられない試合になったと話す。
仲間がいたから頑張れた。ワンチームで戦った。
準々決勝では南アフリカと対戦し、前半は3–5と善戦するも、後半突き放されて、3–26で完敗した。
後半28分から出場した中島は「南アフリカはスクラムがやばかった!今までで一番強かったです」と言い、試合中、スクラムを組んだ際に肋骨を折ったことを明かした。しかし、負傷よりも、ある選手との対戦に心が踊ったという。
「ビースト(テンダイ・ムタワリラ)は昔から大好きな選手で、ワールドカップ前に行われた試合でも対戦して興奮しましたが、改めてワールドカップで、しかも、準々決勝という大舞台で、彼のプレーを間近に見ることができ、『すげぇ!』と思いましたね」
ムタワリラは先発出場で後半14分に交代し、中島は憧れの人と一緒にグラウンドに立つことはなかったが、「めちゃ幸せでした!」と目を輝かせる。
ラファエレは「誰もがベスト8進出は無理だろうと思っている中で、目標を達成できた。それがすごく誇らしかったですね」とまとめる。
最高の時間を過ごしたと声を弾ませる2人は、「一緒に戦った仲間も誇らしい」とも話す。大会中のオフには、寿司屋に行ったり、バーバー(理容店)で髪を切ったり、グラウンド内外で多くの時間を過ごした。
「仲間がいたから頑張れた。ワンチームで戦ったワールドカップでした」と2人。
「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」で日本代表はどんなドラマを見せてくれるのか。そして、神戸スティーラーズからは誰がメンバー入りするのか。
まずは7月5日から始まるW杯メンバー入りをかけた日本代表の国内5連戦に注目だ。
「リポビタンDチャレンジカップ2023」
●7月8日(土)17時キックオフ
ジャパンXV vsオールブラックスXV (東京・秩父宮ラグビー場)
●7月15日(土) 18時05分キックオフ
日本代表 vsオールブラックスXV (熊本・えがお健康スタジアム)
「リポビタンDチャレンジカップ2023 パシフィックネーションズシリーズ」※キャップ対象試合
●7月22日(土)14時50分
日本代表vsサモア代表(北海道・札幌ドーム)
●7月29日(土)19時30分
日本代表vsトンガ代表(大阪・東大阪市花園ラグビー場)
●8月5日(土)19時15分
日本代表vsフィジー代表(東京・秩父宮ラグビー場)
取材・文/山本 暁子(チームライター)
「ラグビーワールドカップ2019日本大会」後、明るいキャラクターと「Yeaboii」の掛け声であっという間に人気者になった中島。「声をかけられることは多くなりましたが、オレはオレ。これまで通り、何も変わりませんね」と笑う。 【コベルコ神戸スティーラーズ】
ラファエレは2022年夏、ナショナル・デベロップメント・スコッドに招集され、ウルグアイ戦に出場。秋は代表合宿に参加も、メンバーから外れることに。「NTTリーグワン2022-23」では本職のCTBだけでなく、SOでもプレーし、10試合に出場。 【コベルコ神戸スティーラーズ】
1989年7月9日生まれ、トンガ・ヴァイオラ出身。186cm・123kg。15歳からラグビーをはじめ、高校卒業後、日本へ。流通経済大学ではNo,8で活躍し、2012年度NECグリーンロケッツ(現・NECグリーンロケッツ東葛)に入団。2015年度、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現・コベルコ神戸スティーラーズ)へ。同年、日本国籍を取得。2018年シーズンは9試合に出場し優勝に貢献。No.8でベストフィフティーンに選ばれた。その後、PRに転向し、「ラグビーワールドカップ2019日本大会」に出場。2022年シーズンは、バイスキャプテンとしてチームを牽引した。日本代表9キャップ。
ラファエレ ティモシー
1991年8月19日生まれ、サモア・アピア出身。186cm・97kg。ラグビーをはじめたのは6歳から。18歳の時に来日し、山梨学院大学を経て、2014年度コカ・コーラレッドスパークスに入団。日本代表やサンウルブズで活躍し、2019年度、神戸製鋼コベルコスティーラーズ(現・コベルコ神戸スティーラーズ)へ。「ラグビーワールドカップ2019日本大会」では全試合に出場し、オフロードパスや絶妙なキックでチャンスを作り出した。2022年夏はNDSとして合宿に参加しウルグアイ戦に出場。「リーグワン2022–23」では、SOでもプレーし、10試合に出場。日本代表キャップ27。
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