【柏レイソル】井原レイソルは殻を破れるか「2023Reysol Report Vol.12」

柏レイソル
チーム・協会
 井原正巳監督が就任する前のリーグ戦13試合では、チームの総得点はリーグワーストの8と極度の得点力不足に陥っていた。しかしそれ以降の4試合で、レイソルは8得点を記録しており、特に直近2試合では7得点と、ビルドアップ面も含めて攻撃には飛躍的な改善が見られている。ゴール前に人数をかけて攻め入る形から、カウンター、セットプレー、クロス、相手のミスを突いた攻撃など、得点パターンも多岐に渡り、武藤雄樹も「いろいろな形で点が取れるようになっているのはプラス材料」とチームの変化を話していた。

札幌戦では課題のセットプレーから武藤雄樹が得点を挙げた 【©️KASHIWA REYSOL】

 だからこそ、直近の2試合がもったいなかった。北海道コンサドーレ札幌戦は、アディショナルタイムに武藤の得点で同点に追いつき、前節の横浜F・マリノス戦は90分の時点で3−2とリードしていた。残りの数分間を持ち堪えていれば、合わせて勝点4が手に入ったかもしれない試合を、土壇場の失点で星を落とし、結局勝点は0。順位も前半戦を終えて最下位に沈んだ。

 ラスト数分間の戦い方、試合の終わらせ方だけではなく、コンサドーレ戦、F・マリノス戦では、自分たちが得点を決めた直後の失点もあった。得点というのは、自分たちが流れを手繰り寄せる最大の効果を発揮する。点を決めて「さあ、ここから」というときに失点をしてしまえば、その流れは断ち切られ、逆に流れは相手に傾く。

王者マリノスを土俵際まで追い詰めただけに悔いが残る逆転負けだった 【©️KASHIWA REYSOL】

 こうして試合がうまく回らないときに、選手たちからよく聞かれるのが「声だけでも解決できる部分はある」ということだ。今回も同じように、片山瑛一はこういうことを言っていた。
「感じたことをもっと人に伝えないといけない。おとなしい選手、真面目な選手が多い分、心では思っていても、何をやるかを擦り合わせていかないと、チームとしてはまとまっていかないですし、声ひとつで解決できる守備のところもある」
 この「おとなしい選手が多い」という点は、現チームに限らずここ数年のレイソルが抱える課題でもあり、選手から「声だけでも解決できる部分はある」という課題が飛び出すときには、決まって「おとなしい選手が多い」という言葉も聞かれる。

今季加入のベテラン片山瑛一はコミュニケーションの必要性を説く 【©️KASHIWA REYSOL】

 戦術の落とし込みや、ゲームプランの指示は監督から伝えられる。各コーチングスタッフからも、さまざまな指示が出ていることだろう。しかし実際にピッチで戦うのは選手であり、サッカーは相手があるスポーツで刻一刻と局面が変化する。用意してきた戦い方が必ずしもハマるとは限らず、その状況に応じて柔軟に対応しなければならない。その時にコーチングをして味方を動かす、一つのプレーに対してうまくいかないと思ったらコミュニケーションを取って意思疎通を図る。そこはもっとやれることがあるのではないか。

 現コーチの大谷秀和は、現役時代に「『多分、分かっているだろう』ではなく、分かっていないとまずいから、分かっていても言う」とコーチングの大切さを説いていた。また、かつてレイソルでプレーをしていたGKの桐畑和繁も「声を出して出しすぎるということはない」と言っていた。もちろんそれをしたからといって勝てるようになるわけではないが、少なくとも勝つ可能性を高めることはできる。戦術面や与えられたタスクの他にも、自分はチームに対して何ができるのか、それを考え、実行に移し、やり切らなければ、そう簡単に結果は付いてこない。

 チームとしての戦い方は、確実に良い方向へ向かっている。あとは選手一人ひとりが自分自身に矢印を向けて、殻を破れるかだ。

【文】柏レイソルオフィシャルライター:鈴木潤

攻撃での変化を起こした井原正巳監督。現役時代同様の堅守を植え付けたい 【©️KASHIWA REYSOL】

https://twitter.com/REYSOL_Official/status/1669998731897499648?s=20

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント