新監督のもと上昇気流に乗る日大ハンドボール部

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関東大学ハンドボール連盟2023春季リーグ戦で3位に入った日本大学ハンドボール部 【日本大学】

日本大学ハンドボール部が、5月28日に開催された関東学生ハンドボール連盟2023春季リーグ最終戦で東海大を35−26で下し、3位に入った。2シーズン前となる昨年の春季リーグでは2部を戦っていたが、そこから一気にステップアップ。リーグ戦を制した中大に土をつけ、一時は優勝争いを演じるなど、最大の目標である学生日本一に向けて、充分過ぎるほどの収穫を得た。

密なコミュニケーションがチームの雰囲気を変える

 関東学生連盟リーグ戦が10チーム制になった2001年の秋季リーグ以降、1部で戦い続け、全日本学生選手権(全日本インカレ)でもメダルを何度も手にしていた日大ハンドボール部に危機が訪れたのは、2021年の秋季リーグ。9位で入れ替え戦に回り、そこで延長戦の末、立大に22−23で敗れて2部降格が決定したのだ。

 1998年以来、じつに24年ぶりに2部で戦うことになった2022年。チームの雰囲気はどん底だった。当時を知る現キャプテンの植松彬(生物資源科学部・4年/駿台甲府)は「僕自身、そのシーズンは試合に出ていました。ですが、入れ替え戦の前にケガをしてしまい、コートに立てないまま負けて2部降格。やるせないような気持ちで、チーム全員の気持ちも落ちていました」と振り返る。

関東を代表するセンターの植松彬。巧みなパス、シュートでチームのOFをコントロールする 【日本大学】

 重苦しい空気に包まれている中、新監督としてチームを任されたのが、伊藤治也氏だ。日大出身で、自身の学生時代に関東学生リーグ初制覇(1982年春季リーグ)を経験し、大学卒業後、埼玉県で教員になると、指導者として浦和市立高(現・さいたま市立浦和高)を全国大会に4度導いた実績を持つ。教え子には、日本代表になった選手もいる。

 コロナ禍という特殊な状況で、さらに初めて大学で指揮を執ることになった伊藤監督は、まず選手たちと密にコミュニケーションを取ることを重視した。練習中はもちろんのこと、練習後はいっしょに食事に行き、どのようなプレーをしたいのか、どのような練習をしたいのかなどをとことん話し合い、選手たちと信頼関係を築いていった。

選手とのコミュニケーションを重視したチーム作りを進めてきた伊藤治也監督 【日本大学】

 それと同時に、選手たちに責任感を持たせるようにした。伊藤監督が練習に顔を出せるのはウエイトトレーニングの日を除き、土日を含めた週4日。そのうち平日の2日間はあまり練習に口を出さず、どういったトレーニングをするのかを選手たち自身で考えさせるようにした。そして、土日に選手たちとその週の練習内容、改善点などの意見を交わす。ゴールを守る4年生のGK成田翔樹(スポーツ科学部・4年/伊豆中央)は「部員全員がこれまで以上に全力で練習に取り組むようになりました。主力以外の選手もレベルアップし、チーム力が上がりました」と伊藤監督就任後の変化について話した。

 チームの雰囲気がよくなると、それが結果にも直結する。気持ちを切り替えて戦った2部リーグ(2022年春季)を圧倒的な力で制すと、入れ替え戦でも勝利し1シーズンでの1部復帰を決めた。さらに、1部に復帰した昨秋のリーグ戦(7位)、全日本インカレ(ベスト16)を経て迎えた今シーズンは、初戦こそ筑波大に敗れたが、そこから6戦無敗(4勝2分)。最終的には5勝2分2敗の3位と、一時は優勝の可能性が出てくるなど、昇格から2度目のシーズンはインパクトあふれるものだった。

学生王者を撃破して手にした手応え

 とくに大きなポイントになったのが、4戦目の中大戦。中大は全日本インカレ2連覇中の強豪で、年代別の日本代表に入る選手を多く抱えている。対して日大のメンバーに年代別の日本代表を経験した選手はゼロ。戦前の予想では中大有利は揺るがなかったが、日大は伝統の高い位置で仕掛けるDFシステムで食らいつく。何度も相手に流れが傾きかけ、そのたびにGK成田を中心としたDFで耐えていった。残り2分を切り、29−30の場面から植松のミドルシュート、左サイド石川稜大(スポーツ科学部・3年/埼玉栄)の速攻が連続で決まり逆転。相手のラストアタックを守り切って31−30で学生王者から貴重な勝点2をもぎ取り、「昨年2部リーグだった自分たちでも、充分に戦える」(植松)という手応えを得た。

 結果的に、この春で中大から勝点を奪えたのは日大だけ。これから続く秋季リーグ、11月の全日本インカレ(函館)につながる白星になるだろう。

キャリアは高校からながら体格を活かしたキーピングで日大のゴールを守る成田翔樹。今季は個人賞(特別賞)に輝いた 【日本大学】

 昨年2部を戦っていたチームがわずか1年で1部3位に。上出来のように見えるかもしれないが、選手、スタッフはこの結果に満足していない。伊藤監督は今季の戦いを振り返る。

 「優勝の芽が出てきた時期もありましたが、そこで1分1敗と勝てませんでした。まだまだ課題だらけです。もし、最終戦(東海大に35−26で勝利)も敗れていたら負け癖がついていたでしょう。ですが、よく勝ってくれました。2部からのスタートで、しっかり立て直してくれたと思います。私が監督に就任してから、学生の中では苦労した部分もあったと思いますし、ここまでの努力を認めてあげたいです」

 伊藤監督が今季のチームMVPとしてあげたのは、ディフェンダーの4年生・松原綾汰(文理学部・4年/浦和学院)。フルバックとして気の利いた動きでDF陣をけん引した。「(春季リーグの)目標だった3位以内に入れてホッとしています」と安堵の表情を見せると、すぐに気を引き締めた。

 「次の秋季リーグは優勝が目標です。今回得た自信が慢心にならないようにこれから練習していき、試合で自分たちのやるべきことをやれば、自ずと結果はついてくると思っています」

 キャプテンの植松も同じ思いを口にする。

 「このまま秋季リーグ、全日本インカレを戦っても優勝はできないと思います。これから、1つひとつのプレーをより丁寧にできるようにしていき、メンタル面、技術面の細かなところまで強化していきたいです」

 伊藤監督も次の戦いに向けてすぐに気持ちを切り替えていた。

 「このチームはここで一旦解散です。次の戦いに向けては、ベンチ外のメンバーを含めて選手選考からやり直します。新しい選手を引き上げ、新しいシステムを取り入れていきたいです」

 最大のターゲットとなる全日本インカレまで約半年。今春の結果におごることなく、足元を見つめながら日大セブンは39年ぶりの学生王者へと突き進む。
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著者プロフィール

日本大学は「日本大学競技スポーツ宣言」を競技部活動の根幹に据え,競技部に関わる者が行動規範を遵守し,活動を通じた人間形成の場を提供してきました。 今後も引き続き,日本オリンピック委員会を始めとする各中央競技団体と連携を図り,学生アスリートとともに本学の競技スポーツの発展に向けて積極的なコミュニケーションおよび情報共有,指導体制の見直しおよび向上を目的とした研修会の実施,学生の生活・健康・就学面のサポート強化,地域やスポーツ界等の社会への貢献を行っていきます

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