新監督のもと上昇気流に乗る日大ハンドボール部
関東大学ハンドボール連盟2023春季リーグ戦で3位に入った日本大学ハンドボール部 【日本大学】
密なコミュニケーションがチームの雰囲気を変える
1998年以来、じつに24年ぶりに2部で戦うことになった2022年。チームの雰囲気はどん底だった。当時を知る現キャプテンの植松彬(生物資源科学部・4年/駿台甲府)は「僕自身、そのシーズンは試合に出ていました。ですが、入れ替え戦の前にケガをしてしまい、コートに立てないまま負けて2部降格。やるせないような気持ちで、チーム全員の気持ちも落ちていました」と振り返る。
関東を代表するセンターの植松彬。巧みなパス、シュートでチームのOFをコントロールする 【日本大学】
コロナ禍という特殊な状況で、さらに初めて大学で指揮を執ることになった伊藤監督は、まず選手たちと密にコミュニケーションを取ることを重視した。練習中はもちろんのこと、練習後はいっしょに食事に行き、どのようなプレーをしたいのか、どのような練習をしたいのかなどをとことん話し合い、選手たちと信頼関係を築いていった。
選手とのコミュニケーションを重視したチーム作りを進めてきた伊藤治也監督 【日本大学】
チームの雰囲気がよくなると、それが結果にも直結する。気持ちを切り替えて戦った2部リーグ(2022年春季)を圧倒的な力で制すと、入れ替え戦でも勝利し1シーズンでの1部復帰を決めた。さらに、1部に復帰した昨秋のリーグ戦(7位)、全日本インカレ(ベスト16)を経て迎えた今シーズンは、初戦こそ筑波大に敗れたが、そこから6戦無敗(4勝2分)。最終的には5勝2分2敗の3位と、一時は優勝の可能性が出てくるなど、昇格から2度目のシーズンはインパクトあふれるものだった。
学生王者を撃破して手にした手応え
結果的に、この春で中大から勝点を奪えたのは日大だけ。これから続く秋季リーグ、11月の全日本インカレ(函館)につながる白星になるだろう。
キャリアは高校からながら体格を活かしたキーピングで日大のゴールを守る成田翔樹。今季は個人賞(特別賞)に輝いた 【日本大学】
「優勝の芽が出てきた時期もありましたが、そこで1分1敗と勝てませんでした。まだまだ課題だらけです。もし、最終戦(東海大に35−26で勝利)も敗れていたら負け癖がついていたでしょう。ですが、よく勝ってくれました。2部からのスタートで、しっかり立て直してくれたと思います。私が監督に就任してから、学生の中では苦労した部分もあったと思いますし、ここまでの努力を認めてあげたいです」
伊藤監督が今季のチームMVPとしてあげたのは、ディフェンダーの4年生・松原綾汰(文理学部・4年/浦和学院)。フルバックとして気の利いた動きでDF陣をけん引した。「(春季リーグの)目標だった3位以内に入れてホッとしています」と安堵の表情を見せると、すぐに気を引き締めた。
「次の秋季リーグは優勝が目標です。今回得た自信が慢心にならないようにこれから練習していき、試合で自分たちのやるべきことをやれば、自ずと結果はついてくると思っています」
キャプテンの植松も同じ思いを口にする。
「このまま秋季リーグ、全日本インカレを戦っても優勝はできないと思います。これから、1つひとつのプレーをより丁寧にできるようにしていき、メンタル面、技術面の細かなところまで強化していきたいです」
伊藤監督も次の戦いに向けてすぐに気持ちを切り替えていた。
「このチームはここで一旦解散です。次の戦いに向けては、ベンチ外のメンバーを含めて選手選考からやり直します。新しい選手を引き上げ、新しいシステムを取り入れていきたいです」
最大のターゲットとなる全日本インカレまで約半年。今春の結果におごることなく、足元を見つめながら日大セブンは39年ぶりの学生王者へと突き進む。
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