【柏レイソル】問われる選手の自主性と責任「2023Reysol Report Vol.10」

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チャレンジに伴う責任

 5月17日の井原正巳監督の就任から約2週間が過ぎた。監督交代から週末のヴィッセル神戸戦まではほとんど準備期間がなく、先週はミッドウィークにYBCルヴァンカップの鹿島アントラーズ戦を挟んだ連戦のため、グラウンドの上でチーム全体に戦術を落とし込む時間はごく限られていたはずである。
 公式戦3試合を戦い、1分2敗と結果が出ていないことは真摯に受け止める必要はあるが、裏を返せば、限られた準備期間内で早くも変化の兆しは見え始めている。

井原新監督は選手たちにアグレッシブな姿勢を求める 【©️KASHIWA REYSOL】

 采配初戦のヴィッセル戦後の会見で、井原監督は「ミスを恐れずにやろうと試合前のミーティングで言いました。ミスが起こってもみんなでカバーしながらゲームを進めていこう、積極的なミスはOKだけど、消極的なミスはやめようと送り出しました」と言った。
 この監督のアプローチによって、選手一人ひとりがボールを受けることを怖がらず、味方のボールホルダーに対して積極的に顔を出すようになった。パスコースを作る動きの少なかった以前と比べれば、これだけでも大きな変化である。

 ルヴァンカップのアントラーズ戦にスタメン出場した中村慶太は「ボールを受けにいかない方がミス。もし受けてミスをしても、そこから切り替えればいいと、みんなが積極的にボールを引き出すようになった」と振り返った。
 ボランチを務める中村、椎橋慧也、あるいは高嶺朋樹や戸嶋祥郎がポジションを取り、センターバックからパスを引き出すアクションを起こせば、当然相手はそこにプレッシャーに来る。その場合、相手の中盤の選手が食いついた背後にはスペースが生じやすい。今度はそのスペースにレイソルの二列目や前線の選手がスッと入って、最終ラインから直接彼らに付ける縦パスが増えた。

今季、札幌から加入した高嶺朋樹。左足のパスにビルドアップの成否が大きく関わる 【©️KASHIWA REYSOL】

 古賀太陽はこう言う。
「ボールを受けたときの選択肢が増えて、みんなが立ち位置を取ってくれることで、見えてくるパスラインが増えました。今まで以上に奥に飛ばすボール、クサビを入れるボールを増やしていける自覚はあります。もっともっとその本数を増やしていければいいと思います」
 成長著しいプロ2年目の土屋巧もまた、「スイッチを入れる縦パスを増やしていこうと思います。高校のときは、相手のボランチが空ける背後のスペースを常に見ていたので、その部分をどんどん出していきたい」と今後に向けての意気込みを語った。

5/28川崎戦で途中起用された土屋巧。その正確なキックに井原監督も期待を寄せる 【©️KASHIWA REYSOL】

 呼応して、二列目の選手の動きには流動性が出ている。マテウス・サヴィオはポジションに固執することなく、様々なスペースでボールを受けては攻撃に変化を与え、サイドアタッカーも外に張るばかりではなく、状況に応じて中央に入り、攻撃に絡む枚数が増えた。その点については、山田康太が「自由というよりは制限がないという方が正しいと思います。自分のアイデアを思い切ってトライしようという感じに変わったと思います」というチームの変化を説明した。

山形から加入の山田康太。ボールの扱いに長けたアタッカーだ 【©️KASHIWA REYSOL】

 ただし、井原監督は「積極的なミスはOK」と言うが、やはりミスが多くなればなるほど、失点のリスクが高まるのは必然の流れだ。井原監督が言うように「ミスが起きたらみんなでカバーする」ことに加えて、各選手はチャレンジするからには、そのプレーを必ず成功させる。もしチャレンジをしてミスが発生してしまったら、人任せにせず迅速に切り替えて守備に戻ることが必要だ。
 トライできる環境になったからこそ、今まで以上に責任が問われることを、選手は忘れないでほしい。

【文】柏レイソルオフィシャルライター:鈴木潤
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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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