【記録と数字で楽しむ第107回日本選手権】女子5000m:田中希実vs廣中璃梨佳の6度目の対決を制するのは?日本新の可能性も!
【アフロスポーツ】
各種目の「2023年日本一」を決める試合であるとともに、8月にハンガリー・ブダペストで行われる「ブダペスト2023世界選手権」、7月のタイ・バンコクでの「アジア選手権」、9月末からの中国・杭州での「アジア競技大会」の日本代表選手選考競技会でもある。また、「U20日本選手権」も同じ4日間で開催される。
本来であれば全種目についてふれたいところだが、時間的な制約のため10種目をピックアップしての紹介になったことをご容赦いただきたい。また、エントリー締め切りは5月15日であるが、この原稿はそれ以前の10日までに執筆したため、記事中に名前の挙がった選手が最終的にエントリーしていないケースがあるかもしれないことをお断りしておく。
過去に紹介したことがあるデータや文章もかなり含まれるが、可能な限り最新のものに更新した。
スタンドでの現地観戦やテレビ観戦の「お供」にして頂ければ幸いである。
※リンク先は外部サイトの場合があります
【女子5000m】
田中と廣中の至近5年間の3位以内入賞率はともに80%、至近3年間は100%!!
21年は800mのフィニッシュから33分あまり、22年は1時間13分あまりだった。
21年は800m3位(2.04.47)で5000mは3位(15.18.25)。2500mあたりから少しずつ離されて優勝した廣中璃梨佳(日本郵政グループ)との差は12秒56だった。
22年は、800m2位(2.04.51。トップを最後に激しく追い込んで0秒27差)のあと前年の倍以上の70分あまりの間隔があいての5000mだった。ラスト400mを62秒0の高速タイムで駆け抜け、この1周で2位の廣中に5秒47もの差をつけ15分05秒61で快勝した。
今回のタイムテーブルは5月19日に発表される予定だ。
以下に5000mと10000mの長距離種目が別日程で開催された20年も含め、田中と廣中が初めて5000mに出場した18年から(田中は、17年にエントリーしたが欠場)の至近5年間の入賞者を紹介する。
【 】
これに続く4年連続入賞は廣中。18年に高校3年生で初出場し入賞まであと一歩の9位。19年からは「3位・2位・1位・2位」。田中ともども「恐れ入りました」の成績である。
男子5000mの記事で3人の選手で「至近3年間の表彰台占有率77.8%」と紹介したが、女子は田中と廣中の2人で「至近3年間の表彰台占有率66.7%」だ。といっても2人しかいないのだから「表彰台占有率66.7%」はマックスで、これ以上の数字にすることはできない。
「至近3年間の1・2位の表彰台占有率」ならば「83.3%」になる。ともに五輪・世界選手権の中長距離種目で入賞した選手だけのことはある。個人に限ると5大会での入賞率は、田中が100%、廣中が80%。3位以内はともに80%。2位以内もともに60%。見事な成績である。
田中と廣中以外の選手で至近3年間ですべて入賞しているのは2人。
今年4月末での引退を発表した萩谷楓(エディオン)の「3・4・5位」と五島莉乃(資生堂)の「8・7・3位」だ。これまた世界大会で「日の丸」をつけた選手である。五島は3年連続入賞を継続中だ。
19年からの4年間で2回入賞は、木村友香「1・6位」、佐藤早也伽「5・8位」、川口桃佳「5・7位」、細田あい「5・6位」の4人。細田は、2年連続入賞中だ。
こうしてみると、田中と廣中の強さと安定ぶりがより一層鮮明になる。
過去5度の日本選手権での直接対決は、田中の3勝2敗だが、田中・廣中・田中・廣中・田中と1年毎に順位が入れ替わっている。さて、6度目の対決となる今回は?
5月7日時点で参加標準記録をクリアしている日本人選手はいない。
上記の期間と1国3名以内でカウントした世界選手権用の「WAランキング」には、5000m・10000m・3000mSCでは上位3試合のポイントが採用される。他の種目は5試合だが、長距離種目ではあまり何度も出場できないので、そのあたりが考慮されている。
5月2日現在の「WAランキング」で、前回優勝のワイルドカードと参加標準記録を突破している人が計17人。ランキングでは、田中が19位、廣中が23位、山本有真(積水化学)が24位でここまでが日本の上位3人。
5月2日時点でターゲットナンバーの「42位」の選手のポイントを上回っている日本人4番目以下の選手は20人近くもいる。ただ、5月2日の時点での「42位」の選手の3レースの内訳は、「16分00秒前後で3本」といったレベルに過ぎない。これから世界の各地で多くのレースが行われ、最終的なボーダーラインは、15分10秒前後くらいにアップしそうである。
【フォート・キシモト】
日本で活動しているケニアを中心とする外国籍の選手のうち10人くらいは、14分40秒台から50秒台の力を持っている。オープン参加の扱いではあるが、出場を希望してエントリーしたうちの記録の上位2人が出場できる。日本記録に向けては「ちょうどいい相手」になってくれそうである。
東京五輪の決勝で廣中が日本記録(14.52.84)を出した時の100m毎のペースは下記の通りだ。最初の100mが16分40秒の超スローペースで「遅過ぎる」と判断した廣中がすぐに先頭に立って、本来の100m18秒0前後、400m72秒前後、1000m3分00秒前後のペースに戻した。
6月4日のレースを現地のスタンドから、あるいはテレビの中継で観る場合にもこの表を手許に置いて観戦すれば、日本記録の時と比較して速いのか遅いのかをすぐに確認することができる。
通常は、1000m毎、あるいは400m毎のタイムで判断するが、何しろ100m毎の通過記録が残っているので、2700m地点であろうが3500m地点であろうが、どこでも大丈夫。今が何m地点なのかということさえわかっていれば、手許のストップウォッチ、場内のタイマー、あるいはテレビ画面のタイム表示といつでも比較することができる。大いに活用していただきたい。
日本記録のレースは基本的には、400mを72秒、1000mを3分00秒の「15分00秒ペース」のほぼイーブンで3000mまでを刻み、4000mまでに2秒、ラスト500mで6秒を「削り出した」というペース配分での14分52秒84だった。
・2021年8月2日=東京五輪・決勝。
・世界陸連HPのデータ。
・カッコ付き数字は通過順位。
【 】
【 】
【 】
【 】
【 】
・ラスト800m、2.18.6
・ラスト1500m、4.22.8
・ラスト2000m、5.52.1
・ラスト3000m、8.52.0
【 】
・記録は、5月7日判明分。
・記事中の「WAランキング」は5月2日時点のもの(毎週火曜日に発表されるので、できる限り最新のものを盛り込みたいところだが、原稿の締め切りの都合で5月2日時点のものとした)。
・記事は、5月7日時点での情報による。上述の通り、エントリー締め切り5月15日以前に書いた原稿のため、記事に登場する選手が最終的にエントリーしていないケースがあるかもしれない。また、競技の実施日は確定しているが具体的なタイムテーブルとエントリーリストは5月19日に公表される予定である。
・現役選手については敬称略をご容赦いただきたい。
なお、日本選手権の期間中、ここで取り上げることができなかった種目以外の情報(データ)も日本陸連のSNSで「記録や数字に関する情報」として、その都度発信する予定なので、どうぞご覧くださいませ。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
▼参考リンク▼
※リンク先は外部サイトの場合があります
▼チケットプレゼントキャンペーン実施中!▼
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ