【雑感】2023/5/6 ACL-Final-2ndLeg 浦和vsアルヒラル

note
チーム・協会

【【雑感】2023/5/6 ACL-Final-2ndLeg 浦和vsアルヒラル】

【これはnoteに投稿されたゆうき(y2aa21)さんによる記事です。】
何から書き始めるのが良いのか整理するのが難しいですが、兎にも角にも、浦和に関わる人たちが「こうやったら勝てるはずだ」ということをやり尽くして最高の結果を掴んだことには喜びしかありません。

この試合の内容について話すときに欠かせない要素の一つは強風でした。南から北に向けて、中継映像で言うと画面の右から左に向けて、この日はずっと強い風が吹いていました。前半はアルヒラルにとって追い風、浦和にとって向かい風で、これは試合の形勢にもそのまま当てはまっていたと思います。

アルヒラルの方は、1st-Legでサレム・アリドサリが退場したことによってメンバーの入れ替えが必要だったということ、1st-Legではマレガとイガロを2トップで当てれば浦和に対して質的優位を取れると目論んだと思われたところがそうはいかなかったということ、この2点からこの試合では4-1-2-3のような並びに変更したのかなと思います。

1st-Legで4-4-2でプレーしている間はアルヒラルの選手同士が分散してしまっていたことと、浦和の守備ブロックの内側に選手がいないことで攻めあぐねていた印象です。

1st-Legの雑感で作った図 【ゆうき(y2aa21)】

そこで、アルヒラルの方は左ではWGのアルハムダンが内レーンに入ってきて、SBのアルブライクが外レーンという役割分担、右ではWGのミシャエウが外レーンでIHのカンノかSBのアブドゥルハミドが内レーンに入ってくる、あるいは3人がローテーションするというイメージでCFのイガロと合わせて浦和の中盤ラインの奥で5レーンを埋めるようなバランスになっていました。

ビルドアップ隊は、左SBが最初から高い位置を取るのと左CBのアルブライヒのボール扱いが怪しいという点からカリージョが左側に下りることが多く、アンカーのオタイフと3-1のようなバランスになったり、オタイフも下りる時には一時的にカンノがへその位置まで下りてきていました。

浦和はいつも通り4-4-2で構えていましたが、興梠と小泉の2枚の周辺にアルヒラルのビルドアップ隊4人と時々カンノが加わる4~5枚がいる状態なので、なかなか前からプレッシングを仕掛けていくことは難しかったと思います。

また、8'40~に左のハーフレーンをアルハムダンに抜け出されたこともあって酒井はショルツとの間を空けることを控えて、その分外レーンは大久保が下がって対応するというタスクになっていきました。

【ゆうき(y2aa21)】

アルヒラルの方が右側に人数が多かったこともあって前進経路が右になりがちだったので大久保が外に引っ張られる点について困る場面は少なかったですが、41'13のカリージョのミドルシュートの場面はカンノからの横パスに対して出ていく選手がいなかったのはこの影響があったのかもしれません。



浦和の保持で1st-Legと違っていたのはゴールキックの始め方でした。1st-Legは安全第一でロングボールを蹴って始めることが多かったですが、この試合では最初のゴールキックからショルツ、ホイブラーテンと西川の3枚でつなぐところから始めています。

アルヒラルは非保持では4-5-1のような並びになって、CFのイガロがショルツとホイブラーテンの間に立つことで左右分断させるような役割になっていたように見えます。岩尾と敦樹のところもIHやWGが押さえに来るのでボールが入れにくい中で、23'30~のゴールキックでは小泉が下りてホイブラーテンからボールを受けた上でターンして逆サイドへ展開してチャンスを作りました。

外レーンで酒井が運んでいくときに内レーンの大久保がハーフレーンの奥を狙って動いていたことでアルヒラルの左SBと左CBを引き付けることが出来ていて、それによって酒井から中央の興梠への花道が生まれました。今季のチームの原則であるポケットへの侵入を狙ったこと、それに対する相手の対応を見てより危険な中央へのパスを選べたことというのは、向かい風でロングボールを使うことが難しかった前半の中で大きなプレーだったと思います。

【ゆうき(y2aa21)】

押し込まれる時間が長かったものの、こうして一発俺たちも裏返せちゃうよ?というのを見せることが出来たのは良かったと思います。この後には27'15に敦樹のボール奪取からカウンター、コーナーキック、スローインから興梠の決定機と、浦和にとってポジティブな時間帯を作ることが出来ました。



後半早々の浦和のゴールに繋がるフリーキック獲得の場面も、アルヒラルがあまりプレッシングでチームとして連動していないことを咎めたものでした。この場面も、その後の50'50も小泉が中央で相手から浮いたポジションを取ってボールを受けた後にターンで前向きな状態を作れています。

浦和はハーフラインを越えたあたりでフリーキックになった時には繋いで始めることが多い気がしますが、後半は浦和にとって追い風なのでセットして浮き球を入れた方が得策だと判断したのかもしれません。

アルヒラルのセットプレー対応は前半のコーナーキックなどを見た感じではマンツーマンかなと思いますが、この場面では浦和の選手がゴール前に5人、アルヒラルの選手が8人いる中で誰が誰につくのかが定まっていない上に、ラインを揃えるとかスペースを埋めるとか、そうした細やかさが欠けていたように見えます。

そうした相手に対して一旦ファーサイドに振って目線を動かしたところで中で仕留めるというのは、ファーサイドにいたのがヘディングに強い明本とホイブラーテンだったことからもきっちり準備した形だったのだろうと思います。



スコアが動いた後も浦和の4-4-2(大久保が外レーンに引っ張られるので5-3-2気味になることも多々あったが)のブロックはしっかりと対応できていたと思います。

FWとMFの間に横パスを入れられても興梠、小泉がしっかりプレスバックすることでターンして逆サイドへ展開されるような場面は作らせなかったですし、浦和の中盤ラインの内側を縦パスで通される場面も作らせませんでした。

53'45~は奪った後のカウンターは上手くいきませんでしたが、相手に中を使わせない、外へ追い出したところで囲い込んで奪うというチームとしての守備の連動性が見事に表現できた場面だったと思います。このシーン自体を図にするのは難しいので抽象化した図で整理しておきます。

【ゆうき(y2aa21)】




アルヒラルは68分の選手交代でカリージョを右SH、ミシャエウを左SHにした4-4-2へ配置変更しました。配置で上回れないので両SHの個人の質で打開を図ったのだろうと思いますが、カリージョに対しては明本と関根のダブルチームが粘り強く対応していましたし、ミシャエウの方についても大久保が外へ引っ張られる分、交代で入った安居がスライドして5-4-1のようなバランスになることも厭わないような体勢でした。

浦和がバランスを崩さずに対応し続けたことでアルヒラルがチャンスを作れるとすればパワープレー的にボールを放り込んでスクランブルを作ることぐらいだったと思います。

その中で訪れた89'55~のイガロのシュートを西川が防いだ場面は本当に決定的でしたが、これ以外のシュートストップ、クロスボールへの対応も含めて本当に西川のプレーはパーフェクトでした。



この試合を迎えるにあたっては、僕自身も仰々しく決意表明をしたようにサポーターたちの鼻息はものすごく荒かったですし、クラブも北側だけでなく南側のゴール裏も全席浦和サポーターに配席し、スタンディングと太鼓を用いた扇動を容認するなど、今できる全てをやり尽くして勝利を掴むんだという気持ちが溢れ出ていたと思います。
https://note.com/y2aa21/n/n4a397cba1904
この試合はAFC主催だったので、2019年の決勝と同様に浦和に関わる人たちは望まないような演出が企画されました。それでも、試合当日の浦和美園駅から埼玉スタジアムへ向かう道までの旗とメッセージ、バスを待ち構えた後には「大脱走」に始まりチャントを唄いながら南スタンドまでの大行進、アップ開始から試合終了までスタジアム全体での大きな手拍子と声、それらすべてが埼玉スタジアムをパーティ会場ではなく闘いの舞台であり続けさせました。

◆本物志向を大切にし、極上のエンターテインメントを提供できるスタジアムづくりを目指します。

浦和レッズのホームゲームでは、マスコットであるレディアがピッチに登場しません。それは、試合を行う舞台には、なるべく試合以外の要素を入れず、純粋にサッカーという競技、一流の選手たちのプレーを楽しんでほしいという考えがあるからです。選手たちのプレー、チームのパフォーマンス、そしてファン・サポーターのみなさまが作り上げる他にはない、熱気あふれる雰囲気。そうした浦和レッズにしかないスタジアム、極上のエンターテインメントの場を作っていけるよう、私たちは全力で取り組んでいきます。
https://www.urawa-reds.co.jp/club/phirosophy.php
浦和レッズのクラブとしての理念の中に謳われていることがそのまま表現されたのがこの日のスタジアムだったと思いますし、これこそが浦和レッズのアイデンティティだと思います。クラブ、チームだけでなく、サポーターもまた理念を体現する存在であること示したことで、「We」という言葉の説得力とプライドをより強くしたのではないでしょうか。

DAZNで見返してみると、後半アディショナルタイムでまだ試合が終わっていないにも関わらずアルヒラルベンチにはユニフォームで顔を覆って絶望している選手がいました。試合前から、もしかするとアウェーの1st-Legから示し続けた浦和のサポーターの圧力が彼らにとっての地獄を作り出したのかもしれません。



そして、この優勝が示したことはチームやサポーターの力だけではないはずです。2019年末、前回のACL決勝での敗戦の後に発足したフットボール本部体制による強化、クラブとしての力も示すことが出来たと思っています。

フットボール本部体制の発足に合わせて、その時の監督によって選手選びの基準やチームスタイルが変わることをやめる、クラブとして一貫したコンセプトをもってチームを作る、そうしたことを標榜しました。

2020年にチームを「更地にする」という意味も込めて大槻さんが非保持の陣形を4-4-2にしました。そして、「守備は最終ラインを高く設定し、前線から最終ラインまでをコンパクトに保ち、ボールの位置、味方の距離を設定し、奪う、攻撃、ボールをできるだけスピーディーに展開する」というクラブとしてのコンセプトの表現を目指しました。2021年と2022年はリカルドが、そして、今年はマチェイさんがこの方向性を踏襲してきました。

その成果が、個人の身体能力やボール扱いの技術では上回るアルヒラルに対して、先ほど図にもしましたが、チームとして4-4-2のブロックを保ち、相手に攻め筋を作らせないことでした。

この決勝で勝てたことについては、1st-Legでゴールポストに当たったボールが興梠の前に転がってきたようにラッキーだった要素もあったかもしれません。ただ、この決勝で負けなかったことについては、今書いたゾーンディフェンスの積み上げや、保持でビルドアップ隊が相手から距離を取って前向きにボールを持つ、それに対する相手の配置やアクションに合わせて周りがポジションを取るというポジショナルプレーの積み上げの成果だったと思います。

そして、そうしたプレーをすることが出来る選手、そうしたプレーを表現させてあげられる監督、コーチ、スタッフのリクルートを行ったクラブの成果だったと思います。この3年で選手も変わりましたが、監督もコーチもスタッフも変わりました。この試合も含めて昨年以降の西川のパフォーマンスを見ればGKコーチにジョアンを連れてきたことの価値は大きいですし、選手や監督のコメントから、スカウティングで良い情報があったことが何度も話されていますが、そうした人たちを、縁故採用ではなく、クラブが自分たちの中で指標を整理し、評価してきたわけです。

2021年に天皇杯を勝ち取って出場権を獲得し、1年以上かかる稀有な日程になった今回のACLだったこともあって、色々な人たちのおもいを繋いだというような表現もされますが、おもいだけでなく、色々な人たちの取り組みを繋いだことで勝ち取ったこの3回目のアジアチャンピオンだったと思いますし、半年遅れでの三年計画の集大成と言えるのではないかと思います。

2019年の末にクラブが体制を変えて、三年計画を掲げて、それに対して「本当にやり切れんのかオイ」という気持ちで僕はnoteを使って文章を書き始めました。2022年の終わり、三年計画の終わりには #俺たちが見た三年計画(https://note.com/hashtag/%E4%BF%BA%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%8C%E8%A6%8B%E3%81%9F%E4%B8%89%E5%B9%B4%E8%A8%88%E7%94%BB)なんてタグをつけて大真面目にそこまでの取り組みの総括をしました。個人的にはそういう流れからしても、このタイミングでACL優勝という、僕たちが最も渇望しているタイトルを取れたことが本当に嬉しいですし、クラブの取り組みが少しでも報われた気がしてほっとしています。



ただ、ここで優勝したからフットボール本部体制で目指していることのゴールにたどり着いたわけでは無いですよね。アジアで3回優勝したことは素晴らしいし誇れることですが、そんなクラブが自国のリーグで1回しか優勝していないのは歪な状態だと思います。やはり、日本一、その上でアジアNo.1、そこから世界の舞台へ名乗りを上げていきたいところです。

今回の決勝は個のアルヒラルvs組織の浦和というで、尚且つなかなかボールを持って相手を圧倒することは出来ませんでした。試合を通して圧倒するためには個人のボールコントロールの技術やフィジカルも必要です。組織でも、個でもどっちでも勝てるチームになりたいです。

クラブが掲げたコンセプトも非保持はある程度表現できるようになりましたが、4局面全体での「攻守に切れ目のない、相手を休ませないプレーをすること」はなかなか表現できませんでした。保持での「攻撃はとにかくスピードです。運ぶ、味方のスピードを生かす、数的有利をつくる、ボールを奪ったら短時間でフィニッシュまで持っていくこと」もまだまだです。

マチェイさんは就任当初からこのACL決勝のためにメンバーを固定すること、チームのスタンスを大きくは変えないことを明言してきました。すぐにリーグ戦がやってきます。ここからどのように今までのチームスタンスへ色を付けていくのか、その中で選手がどのような成長をしていくのか期待していきたいですね。

まだまだチームは発展途上で、その中でACL優勝を勝ち取り、また次のACL出場の可能性も掴みました。勝つことで、より高いレベルで闘うことで、チームはさらに強くなっていけると期待しています。この優勝はまだまだ通過点のはずです。2週間お休みしている間にリーグ戦の順位は落ちています。頭を切り替えて、他のクラブより少ない試合数の分はキッチリ勝ち点を取って、今度はリーグ戦の順位でACL出場権を取りに行きましょう。



最後に。

バス待ちの後の大行進で行進している人はもちろん、その周りにいる人も手拍子していたり一緒にチャントを唄っていた時のあの一体感と高揚感。試合終了、We are REDSコール、その後涙が止まらなかった僕に「良かったね」と優しくハイタッチしてくれた隣の席のマダム。僕はバックアッパー席だったので右(北)と左(南)で半拍ズレになっていてリズムを合わせるのに戸惑いながらも、幸せに浸りながら唄った「We are Diamonds」。

本当に現地にいられて良かった、最高な時間でした。大事な場面は自分で写真を取っていないから手元に記録としては残っていないけど、これは一生ものの思い出としてしっかり記憶しておきたいです。

そして、勝ったからこそ、こう思いますよね。
また優勝してこの景色を見たいって。



今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。


【ゆうき(y2aa21)】

【ゆうき(y2aa21)】

【ゆうき(y2aa21)】

※リンク先は外部サイトの場合があります

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

メディアプラットフォーム「note」に投稿されたスポーツに関する記事を配信しています。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント