【新日本プロレス】プロレスを教えることとは? KUSHIDA選手にインタビュー!

チーム・協会

【新日本プロレスリング株式会社】

道場開きから5年を迎えるLA DOJOでは、この春からプロレススクール「NJPW ACADEMY」を創設が決定。

現在、LA在住のKUSHIDA選手もスクールの講師として参加することが決定。さまざまなプロレス遍歴を経てきたKUSHIDA選手が考える“プロレスを教えること”とは?

分かりやすく言うとプロレス学校ですよね。新日本プロレスの歴史とか文化とか技術とか、そういうものに触れられる機会ができた

【新日本プロレスリング株式会社】

ーーさて、最近のKUSHIDA選手はロサンゼルスにお住まいを構えて、先日もAEWに出場したりとか、アメリカで活動されていますよね。

KUSHIDA そうですね。12月の『SUPER Jr TAG LEAGUE』が終わってから、IMPACT! WRESTLING、AEWとかいろんな全米の団体のブッキングをもらって試合をしているっていう感じですね。今、アメリカで勢いのある団体GCWなんかもこれから出ますし、現地の空気を感じるのが楽しみです。

ーーそれらの試合にプラスして重要な要素として、LA道場での活動も増えてきたというか。

KUSHIDA そうですね。『SUPER Jr TAG LEAGUE』のタッグパートナーになったLA DOJOのケビン・ナイトも、言っちゃえば偶然の産物なんですよ。手足口病で欠場して、復帰するタイミングでパートナーにケビン・ナイトが選ばれたと。その前にLA道場に行ったのが去年の5月なんですけど、僕が教えたとかいうわけでもないし、横について一緒に同じ目標に向かって闘うということで組んだんです。

ーーそうでしたね。

KUSHIDA でも、LA DOJOには柴田(勝頼)さんが育てた活きのいい若手が他にもたくさんいて、道場に入った瞬間に「いい空気が流れているな」っていうのを感じたんですね。いろんなことができる可能性が広がる空間だし、その時一番最初に「LA DOJOを盛り上げたいな」って正直に思ったんですよ。

ーー学び舎としてのLA DOJOに可能性を感じ、そこを土台にして出てきたケビン・ナイトと一緒に闘ったことで改めて感じた部分があったと。

【新日本プロレスリング株式会社】

KUSHIDA ハイ。LA DOJOには可能性を凄く感じています。日本に行くチャンスもあるし、アメリカで活躍するチャンスもあるし、いろいろ可能性は広がっていますよ。上を目指す人は“有効活用”をするべきだなと思っていますね。

ーーそのLA DOJOで今年の3月から新しい試みが始まると聞きました。

KUSHIDA そうです。まあ『NJPW ACADEMY』ということで、分かりやすく言うとプロレス学校ですよね。新日本プロレスの歴史とか文化とか技術とか、そういうものに触れられる機会ができたということです。それに加えて、MMAやルチャリブレやアメリカのTVマッチのテクニックだったり、考え方だったり、様々な形のプロレスに触れられるんじゃないかな、と。単純に”汗をかく“という以外にもプロレスの学び方ってあるので。

――なるほど。

KUSHIDA その中で僕はコーチという大それたものではないんですけど、日本のプロレスに触れてもらう、あるいは研究する、そして技術とか知識をシェアするというスタンスでいますね。これは凄く意義があり意味のある試みだと思っていて、KUSHIDAの任せられた役割をリングで闘う情熱と同じぐらいアカデミーに注ぎたいなって、今は思っていますね。

この数年、プロレスで得てきた技術や知識、たくさんのものを誰かとシェアする、誰かに分け与える“ギブ”する役割もやっていきたいと感じていたんです

【新日本プロレスリング株式会社】

ーーKUSHIDA選手はアカデミーの講師の一人という捉え方でいいんですか? フレッド・ロッサー選手らも講師として予定されているようですが。

KUSHIDA そうですね。すでにデビューしている選手のクラスを主に担当する形になると思います。もし自分が試合で見られない場合は、その都度代わりに誰かが入るみたいな形で回していくと思うんです。でも、このアカデミーのゴールとしては、決して新日本に入ってヤングライオンになるだけではなく、単純に新日本の歴史や知識、技術、伝統といった文化に、精神的なものも加えて、少しでも多くのアメリカのプロレスラーたちに知ってもらう、触れてもらう。そして習得してもらうということですね。アメリカでの新日本の認知度そのものを高めるいい機会になるとも思っています。

ーーだからクローズドではなくかなりオープンな形になると。

KUSHIDA そうです。プロレス道場というとどうしても少しクローズドなものと考えがちになるんですが、もともと僕の出発点も高田道場だったり、CMLLのルチャ教室だったりと、自分でお金を払って、自分で頭を下げてプロレスの技術を学ぶというところからキャリアをスタートさせてますからね。そこからスタートして、プロレスでたくさんのいい経験をさせてもらってきて、世界中を旅してたくさんのものを得てきたわけですよ。

――なるほど。

KUSHIDA 英語には“ギバー”(GIVER)と“テイカー”(TAKER)っていう言い方がありますけど、これまで僕はたくさんのものを“テイク”してきたわけですよね。ただ、この数年、そうやって得てきた技術だったり知識だったり、たくさんのものを誰かとシェアするというか誰かに分け与える“ギブ”する役割もやっていきたいなって感じていたんです。それを発揮するいいチャンスを会社からもらったなって捉えていますね。

ーーKUSHIDA選手は以前から「プロレスを教える」ということに興味をお持ちだったし、それが今回学校という形で結実したというか。

KUSHIDA そもそも「僕が教えてほしいわ」っていうぐらいプロレスって難しいんですよね(苦笑)。「プロレスを教える」こと自体もとても難しいし、「プロレスって何?」って聞かれた時、まず答えがない。とくに僕なんかは「テメーで考えろ」っていう時代に生きてきましたから。だけど、僕はいろいろなたくさんの人、先生やコーチに出会って、プロレスを言葉で説明してもらったり、身体で説明してもらったり、そういう場面を他のレスラーよりも多く経験してきたのかなとも思うんですよ。

――そこは豊富な経験値を持ってますよね。

KUSHIDA 何よりも自分は根っからのプロレス好きですから。プロレスの構造というか、「このプロレスはどうなっているんだろう?」っていう探究心から、こういうキャリアを踏んできたっていうところがあるんですよね。

ーーそれが世界中のいろんなところで闘ってきたキャリアに繋がるわけですし。

KUSHIDA 「そのキャリアをこういう形でプロレス界に還元できるんじゃないかな」って思っていますね。ヤングライオンとか新日本のリングに上がるっていうことを最終目的にするならば、ぜひ新日本の入門テストを、。
そういう人がいてもいいし、いなくともいい。

キーワードは考えること、そして好奇心を持つこと。プロレスラーって1人の人に教わっただけじゃ絶対完成しない部分もあるし。だから、育てたいとか教えたいっていう、そんなカッコいいものじゃなくて、いい人材、どこかにいないかな?そんなとこですね。

――なるほど。

KUSHIDA でも、ロッキーとか新日本っていう組織自体が世界各国に太いパイプを持っていますからね。日本に行きたいなら日本に行けばいいし、アメリカでもメキシコのCMLLでもヨーロッパでも、希望する場所があるならそこはヘルプできますよと。いいプロレスラーになるっていうことはその人が持っている雰囲気だったり、「行間を読んで、行間を嗅ぎ取るセンス」とか、そういうのも重要になってきますからね。

――どこで活躍できるかは、その人の嗅覚も関わっているというか。

KUSHIDA  そうです。だから、新日本が新たにLA道場でアカデミーを始めるっていうのは 凄くポジティブだし、とても可能性を秘めたプロジェクトになるんじゃないかなと僕自身 は思っているし、そういう若者が世界に何人もいたらいいなって思っていますね。このNJPWアカデミーの先にヤングライオンを目指したいという志が高い人は柴田さんに指導してもらうっていうチャンスもあるだろうし。

かつての僕のような10代の人たちに出会うのもの楽しみですよ。何よりも僕が面白い外国人やアメリカ人に会いたいし、発掘したい

【新日本プロレスリング株式会社】

ーーそのプレ的な展開なのか、今年の1月19日にもLA DOJOでセミナーをやられたようですね。

KUSHIDA あれはセミナーという1回限りの3時間という決められた時間で、アメリカの選手を集めてやったんですよ。本当に生徒は全米から集まってくれましたね。アメリカではプロレスラーがプロレスラー向けにセミナーを開催するっていうのは一般的というかポピュラーだし、ちゃんと人が集まりますから。

もっと言えばグレイシー柔術とかは1vs1のパーソナルトレーニングもやってます。1時間で300ドルぐらいのお金を取ってテクニックを教えるとか、そういうレッスンの仕方もあるんです。まあ、プロレスのトレーニングってどこか閉鎖的でオープンにしないところがありますけど、僕の考えでは僕が得てきた技術はどこに出しても恥ずかしくないものだし、それをオープンにしてシェアしてもらっても全然構わないよってスタンスなんです。だから、これはまたとない機会になると思います。

ーー1月のセミナーでは、いま話題のメルセデス・モネ選手も飛び入りされたとか。

【新日本プロレスリング株式会社】

KUSHIDA ああいうフットワークの軽さは見習うべきポイントですよね。女性のプロレスラー、エンターテイナーの中では世界でも上から数えた方が早い人にも関わらず、まだまだ技術を探求する、本当にプロレスが好きだっていう気持ちに溢れた魅力ある人だなと思いましたね。

ーーそういう探究心を持った若者たちに来てほしいと。

KUSHIDA そうですね。週末に試合をして平日はバイトをしている、プロレス一本で食えてないインディーレスラーが世界には無数にいるんですよ。その中でももっと向上して名前を売りたいとか、そういう意欲のある人は来てほしい。あと、やっぱり日本のプロレスに興味のある人ですよね。それってアメリカにいると結構ニッチというか、それだけでユニークなセンスだと思うんです。ケビン・ナイトとかにもよく言うんですけど、新日本を選ぶ時点で他とちょっと違いますよね。

ーーその時点で大きな個性になっていると。

KUSHIDA そういうことです。柴田さんの生徒になる時点で、すでに“いいセンス”を持っているんですよ。そういう向上心に溢れた選手がアメリカにはたくさんいますし、もちろん日本にもいると思いますけど、アメリカでプロレスを練習するっていう裾野を広げられたらなっていうふうに思いますね。僕は野毛の道場では育ってないし、まさにそういう環境でプロレスを学んできたから、その役割を担うべきだなと思っています。

ーーかつてのKUSHIDA少年だったら、大喜びするようなセミナーというか。

KUSHIDA そういう、かつての僕のような10代の人たちに出会うのもの楽しみですよ。何よりも僕が面白い外国人やアメリカ人に会いたいし、発掘したい。もしめちゃめちゃ良かったら、絶対に新日本プロレスにも推薦したいですし。でもね、べつに推薦しなくても自分でお金を払って学びたいとか意欲のある人は、必ず頭角を現すと思うんですよ。だから、そういう人のための“場”を新日本のLA道場が作るということは、とても有意義なことだと思いますね。セミナーに関していえば、最新の夢ができて…今後10年間でアメリカ50州、すべての州でセミナーを開催してみたいです。

“カリフォルニアロール”という下地があったから、アメリカで日本の“SUSHI”が認知されたんですよ

【新日本プロレスリング株式会社】

ーー対象はやはり現地のアメリカ人がメインになってくると思うんですけど、やる気があれば日本人の方もOKですか?

KUSHIDA もちろん、もちろん! 日本人もそうだし、オーストラリア、ヨーロッパからでもいいですし、現実的にビザもESTA(エスタ)で90日間はいられますからね(ESTAは、90日以内の一般的なアメリカ旅行や短期商用に限り利用可能な電子渡航認証制度のこと)。まあ、アメリカは物価は高いですけどいい機会だと思いますよ。何よりもまだまだ新日本プロレスという名前、ニュージャパンという名前はアメリカにまだまだ浸透してないんですよ。

――そこはアメリカにいて実感されるところというか。

KUSHIDA ええ。歴史があるから日本ではもちろん超有名企業ですけど、「それをどうやって浸透させるか」って考えています。例えばカリフォルニアロールってあるじゃないですか? 

――ありますね。

KUSHIDA 日本人からしたら、アレは寿司としては邪道なのかもしれないけど、ちゃんとしているカリフォルニアロールってめちゃめちゃ美味いんですよ。魚介類を使わずに海苔と酢飯とあとはカニカマとかが入るとか、いろいろなアイデアが入るんですよ。そういう下地があったから、アメリカで日本の“SUSHI”が認知されたんですよ。

ーーアメリカの“SUSHI”ブームの火付け役になったということですね。

KUSHIDA だからカリフォルニアロールって過小評価されているなって思うんです。ラーメンも然りです。さっき言いましたけど、このアカデミーを経て日本に行ってヤングライオンになるのも良し、アメリカの大きな団体に行って大金を稼ぐのも良し、ハリウッドスターを目指すのも良し、YouTuberになるのも良しと、プロレスって単純に練習だけでもいろんなことが学べますからね。自分自身も成長できる場として楽しみですし、3月の開校が待ちきれないですね。

ーーこのアカデミーも最初はカリフォルニアロールかもしれないけど、気づいたら“SUSHI”ブームを起こしているかもしれないと。

【新日本プロレスリング株式会社】

KUSHIDA それでいいと思うんですよね。で、こういう活動を1年、3年、5年、10年とやっていけば、だんだんと寿司、ラーメン、ニュージャパンプロレスリングじゃないですけど、アメリカでももっと浸透していくと思うんですよね。僕のセミナーでもいいですけど、ニュージャパンアカデミーで講義を2時間共有したよとか、3カ月通ったよとか、そういうアメリカのインディペンデントで頑張っているレスラーがちょっとずつ増えていけば、草の根ですけどニュージャパンの認知度も自然と広がっていくと思います。

――なるほど。よくわかりました。

KUSHIDA これこそ今、僕がアメリカでできる一番効率のいい役割だと思っていて、本当に情熱を全力で注ぎ込みたいなって思っていますね。
(了)

【新日本プロレスリング株式会社】

★3月から始動! LA DOJOにてプロレススクール「NJPW ACADEMY」が開校!

<ビギナーコース>
● 期間:3月27日から6月14日までの毎週月曜日、水曜日開催。合計24レッスン
● 授業料:1,200ドル x 2回の分割払い(3/24, 5/1期限)または2,200ドルの一括払い
(一括200ドル割引)
● 講師:ザ・DKC選手、ベイトマン選手
● 対象:プロレスの経験がほとんどない方(1年以下の経験)
● 目的:プロレスの基礎技術を学び、アドバンスコースを目指すこと
● 受講条件:18歳以上、身長、体重、性別不問

※75%以上の出席率でコースを修了した場合、修了証書、ACADEMY修了証明ロゴ使用権授与
※別開催予定のスペシャルセミナー、次回シリーズのアドバンスコースの費用の割引あり

<アドバンスコース>
● 期間:3月28日から6月20日までの毎週火曜日、木曜日開催。合計24レッスン
● 授業料:1,200ドル x 2回の分割払い(3/24, 5/1期限)または2,200ドルの一括払い
(一括200ドル割引)
● 講師:KUSHIDA選手、フレッド・ロッサー選手
● 対象:1年以上の継続的なプロレスのトレーニング、プロレスの試合経験がすでにある方
● 目的:第一線で活躍するプロレスラーから技術を学び、自身のキャリア形成に生かすこと
● 受講条件:18歳以上、身長、体重、性別不問

※75%以上の出席率でコースを修了した場合、修了証書、ACADEMY修了証明ロゴ使用権授与

※両コースとも受講期間、アメリカに合法的に滞在できる方であれば、日本人も受講可能です。その場合アメリカの医療機関で適用される健康保険、旅行保険が必要となります。

※申込みは関連リンクの「【無料公開!】「『NJPW ACADEMY』は凄く意義があり、意味のある試み。任せられた役割をリングで闘う情熱と同じぐらい注ぎたい」KUSHIDA選手にインタビュー!!」から参照して下さい。
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著者プロフィール

1972年3月6日に創業者のアントニオ猪木が旗揚げ。「キング・オブ・スポーツ」を旗頭にストロングスタイルを掲げ、1980年代-1990年代と一大ブームを巻き起こして、数多くの名選手を輩出した。2010年代以降は、棚橋弘至、中邑真輔、オカダ・カズチカらの台頭で再び隆盛を迎えて、現在は日本だけでなく海外からも多くのファンの支持を集めている。

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