【ラグビー/NTTリーグワン】前の試合よりも良いプレーを。 自分自身と闘いながら末永健雄は前に進む<クボタスピアーズ船橋・東京ベイ>

【(C)JRLO クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 末永選手(中央)】

開幕節の東京サントリーサンゴリアス戦。殴り合ったわけでもないのに、末永健雄の左まぶたは大きく腫れていた。ときに守り、ときに走り、ときにスクラムを組み、ときにタックルを仕掛け……。とかく運動量の多いフランカーというポジション。そのタフな仕事ぶりを物語るかのように腫脹した左目は、12月のボクシング世界4団体統一戦で11ラウンドを戦った井上尚弥のほうが、きれいな顔をしていたほどだ。

しかし1週間後、彼は何事もなかったかのように第2節・横浜キヤノンイーグルス戦のグラウンドに立っていた。そして次の試合も、そのまた次の試合も。東京サントリーサンゴリアス戦後には、腫れをひかせるために皮膚を切開して血を抜いた。打撃系格闘技では1週間スパンで試合がマッチアップされることは、まずありえない。だが、末永は当たり前のような顔をして、いつも必ずそこにいる。

2017年にクボタスピアーズ船橋・東京ベイに入団。「そのころはめちゃくちゃ細かった」と末永は当時を振り返る。体重は学生時代よりも軽い86kg。このままでは通用しないと肉体改造に着手し、翌年は96kgでピッチに立った。試行錯誤を繰り返し、現在の体重は97kgとなったが、強靭で動ける体をクリエイトするのもフランカーの重要な任務である。

「(試合に出場して)体重が落ちたぶんは、食事や水分でしっかりと戻すようにしています。(試合後の)週明けの体重が、その前の週の週明けの体重と同じくらいになるように意識しています」

自分の代わりなんていくらでもいる。その危機感は、心のどこかに常にある。

大学3年時にはシーズンの開幕戦で膝を負傷。古傷にはいまもテーピングが巻かれている。膝関節にインナーマッスルはない。膝の安定性の維持と向上のために、アウターマッスルのトレーニングは絶対に怠らない。戦い続けるための原動力。根底にあるのは「負けたくない」というシンプルな感情だ。

「ライバルはたくさんいます。負けたくないという気持ちがないと、やられてしまうので。僕は根本的に、負けず嫌いなんです」

第4節・NECグリーンロケッツ東葛戦、「えどりく(江戸川区陸上競技場)」ホストゲームでは、ジャパンラグビー トップリーグ&NTTジャパンラグビー リーグワン出場通算50試合を達成した。誰にも負けたくない。だから、末永はその無垢な前進を止めようとはしない。

「51試合目も、今までどおり自分の仕事をやるだけです。毎試合毎試合、自分が良くなっていきたいという思いがあるんです。50試合目よりも、51試合目のほうが良かったと思われるようなプレーがしたいです」

続く第5節、コベルコ神戸スティーラーズ戦。負けたくない相手には、自分自身も含まれている。

(藤本かずまさ)
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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