【ラグビー/NTTリーグワン】経験者が流れを作り、ルーキーが決める。 地力を示したホスト開幕戦での雨上がりの完勝劇<S東京ベイ vs GR東葛>
【(C)JRLO クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 谷口選手】
S東京ベイ 40–7 横浜E
最寄り駅の東京メトロ「西葛西」駅から徒歩で約15分。それなりの距離を歩くことにはなるのだけれど、ルートの要所に立つ運営スタッフの人たちが「まっすぐお進みください」、「こちらの角を曲がってください」と声をかけてくれるので、迷うことなく目的地にたどり着ける。クボタスピアーズ船橋・東京ベイのホストスタジアム、江戸川区陸上競技場。通称「えどりく」。弱い雨が足元を濡らし、14℃という気温がその数字より冷たく感じられる中、今季最初のホストゲームは開催された。
前半、クボタスピアーズ船橋・東京ベイはこの日の空のような、どんよりとした戦いを強いられた。開始早々に谷口和洋がトライを決めるも、その後はペナルティに流れを分断されて攻撃が得点に結びつかない。しかし、こうしたフラストレーションが溜まる状況に陥っても心を乱さないところに、いまのクボタスピアーズ船橋・東京ベイの強さがある。流れが変わったのは後半。立役者は語る。
「ペナルティが多くてなかなかペースに乗れなかったのですが、僕たちがアタックできた部分ではしっかりとフォワードが前に出て、何回かモメンタム(勢い)も作れて、いいチャンスができました。そこはプランどおりにできたところだと思います」(谷口)
「今回、僕は後半から出たのですが、僕の持ち味であるスピードを生かしたら、絶対にどこかにスペースができるだろうと思いながらやっていました。そのスペースにしっかりとアタックできたのが、後半の流れを作れた要因だと思います。何かのミスを犯しても、ちゃんと元に戻れるのが僕らの強みです」(藤原忍)
そして、曇り空に差し込んだ明るい陽の光のような見せ場を作ったのが木田晴斗。4試合連続トライを決め、今季6トライ目を奪取。その背景に存在するのは、ルーキーが躊躇を覚えずに活躍できる、肩の凝らない空気感である。
「目上の人たちの若い選手に対するコミュニケーションの作り方であったり、特にオフフィールドのところでコネクトが多かったりすると、僕としては(先輩選手と)いい関係が築けていると感じます。テレビで見ていた人たちばっかりだったので最初は怖さもあったのですが、気さくに話しかけてくれる選手が多いので、新人がのびのびできるというのはそういうところからきていると思います」
ホストゲーム開幕戦で完勝。そこで披露されたのは、時間をかけて築いてきたチームとしての地力。朝から続いていた冷たい雨は、いつの間にかあがっていた。
(藤本かずまさ)
【(C)JRLO】
フラン・ルディケ ヘッドコーチ
「まずはホームである“えどりく”に多くのファンが集まってくれてうれしいです。また選手たちも、ああいったパフォーマンスを発揮するために、これまでハードワークをしてくれました。試合が開始して良いスタートが切れたのですが、NECグリーンロケッツ東葛もチャンスをモノにして、非常にタフなコンテストになりました。それも私たちには必要なことで、良かったと思います。特に後半の20分に関しては、ハードワークがようやく実り、ハッピーです。ただ、まだ反省点は多いので、ここからまた成長して次の試合につなげていきたいと思います」
──連続トライを6試合に伸ばした木田晴斗選手の評価は?
「フィニッシュまで持っていけるウイングだと思っています。彼のラン能力、そして両足でもステップが切れるのは大きいと思います。また、ワークレート(仕事量)もいいので常にライン参加、エクストラマンになっているところがトライの量産につながっているのだと思います」
──前半30分にはラインアウトやスクラムなどでプレッシャーを掛けながらも、取り切れない場面が続きました。
「おっしゃったことについてはNECグリーンロケッツ東葛を賞賛したいと思います。彼らのディフェンスエフォートはすごかったので、私たちは、ポジション自体は良かったけれども、取れなかったところは確かにありました。ただ、そこからの我慢で、試合を通して修正して、外敵に邪魔されずに、結果としては良い形でボールをとらえてトライし、スクラムも良くなったところは良かったと思っています」
──押川敦治選手の評価については?
「試合中にすごく成熟さのようなものを見せてくれたと思います。ほかの部分でも、ラインナップで変更はあったのですが、試合に出ている選手たちをすごく信頼していました。シーズンは長く、全員で戦っていかなければいけないので、試合に出た人たちがしっかりと良い形でそれぞれの仕事をしてくれました。押川選手も信頼を勝ち得ていると思います」
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
立川理道キャプテン
「ヘッドコーチが言ったように、前半、波に乗り切れない部分があったのですが、ハーフタイムでしっかりとその学びをゲーム中に修正しようと。後半はずっと敵陣にいたと思いますし、最後のほうは人数的にも少ない中で、守り切れたのも良かったです。ゲーム中に修正することはできたので、そこは良かったかなと思います。ただ、大味な試合というか、今後も成長できる部分もたくさんあったと思うので、また1週間、次に向けてしっかりと準備していきたいと思います」
──前半にゲームメークに関わるようなドライブのシーンが結構見られました。
「今日の試合は天候のこともあったので、手放すところとボールを持ってアタックするところのバランスを10番の押川(敦治)と話しながらできたと思っています。スペースがあればパスで運ぶのか、後ろのキックのスペースに運ぶのか、そこはうまくできたのかなと思います。後半は、敵陣にいた時間ではボールをキープすることができたので、そういったところはゲーム中に10番に入った選手とうまくできたと思います」
──押川選手の評価については?
「押川はリーダーシップもありますし、スキルも高いので、将来日本代表になれる逸材だと思います。もっともっと経験を積めば、そういうレベルになってくると思います。今日の試合に関しても、難しい時間帯もありましたが、その中でもすごくチームをリードできていたと思います。スマートにフォワードに声をかけ、判断とかも良かったと思います」
【(C)JRLO】
ロバート・テイラー ヘッドコーチ
「まずはクボタスピアーズ船橋・東京ベイの勝利、おめでとうございます。後半、特にクボタスピアーズ船橋・東京ベイの試合内容はとても良かったと思います。あのようなチームがトップ4に入るのだろうなと感じました。NECグリーンロケッツ東葛の努力に関しても、とても誇りに思っています。ですが、さまざまな局面においても足りないところがありました。こちらも上位に行けるように、そういったところを修正していく必要があると思います」
NECグリーンロケッツ東葛
レメキ ロマノ ラヴァ キャプテン
「クボタスピアーズ船橋・東京ベイは本当に強いです。セットピースもそうですし、体もみんなデカくて、9番、10番のゲームメークもすごく良かったです。60分まではいい勝負ができたのですが、ウチのチームとトップ4のチームの差が最後の20分で(出たと思います)。強いチームは、そこからもっとレベルが上がるけど、僕らはその最後の20分でスタミナがなくなりました。これからもっと80分間ファイトしないと、こういう強いチームには勝てない。もっと頑張らないと」
──クボタスピアーズ船橋・東京ベイの9番と10番が後半12分で入れ替わりました。そのあたりから前半の体の疲れが出てきた?
「そうです。体もデカいし、セットピースも単純に重いから、どんどん前に出てくる。フレッシュな状態で60分までは抑えているのですが、バーナード・フォーリーが入ってきて、そこから流れが変わってきました。本当に彼はうまい選手だと思います。(藤原)忍もめちゃめちゃいいです。日本代表に入ってもおかしくない、いいハートを持っています。そこで差が出ました」
──最後にハドルを組んでいましたが、そこでチームに共有したことは?
「もっと自分自身に自信をもって、どんな試合でもわれわれはチャレンジャーなので、少しでも前に行けばいつか勝利に近づける。あきらめずに準備をすれば、いつかまた試合に勝てるからと、伝えました」
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