早大庭球部 「NGのないプロ」に プロテニスプレーヤー・白石光の挑戦

チーム・協会

【早稲田スポーツ新聞会】

12月29日 東京・LTC成城テニスクラブ
【早稲田スポーツ新聞会】記事・写真 佐藤豪、田島璃子

 穏やかな年末、テニスコートで子供たちに囲まれ、笑顔を見せるプロテニスプレーヤーがいた。現役早大生の、白石光(スポ4=秀明大秀明八千代)だ。白石は全日本学生対抗王座決定試合(王座)をもって庭球部の部員としての活動を終え、プロ選手としての活動を始めている。この日はテニススクールが主催するイベントにゲストとして参加。イベント終了後に行われた本紙のインタビューではプロ活動を始めた今の心境や今後の意気込みを語ってくれた。

オープンスタンスを説明する白石 【早稲田スポーツ新聞会】

 この日は元々教わっていたコーチのいるテニススクールのイベントにゲストとして参加した。30人ほどの小・中学生が参加しており、徐々に打ち解けて楽しそうに会話が弾んでいた。イベントは簡単な球出しからスタート。回り込みやチャンスボールを高い打点で打ち込むメニューなど、動きのあるストローク練習をこなした後、ボレー、サーブ練習へと移った。白石といえば、独特なサーブの持ち主だ。「(ボールをコートに)つかずにここまできた」という白石だったが、子供たちの勧めでボールをついてみることに。しかし特に効果は感じられなかったようで、コースに置かれたコーンは倒せなかった。何度も打ってコーンを倒そうと試みるが、なかなか倒れない。ついにスライスのアンダーサーブでコーンを押し出すも、子供たちは見ておらず、「インチキ!」と疑われ、白石も思わず笑顔を見せていた。

ボールをつく白石 【早稲田スポーツ新聞会】

 その後、ラリーやミニゲームを行い、最後は参加者全員が白石と1ポイント先取のゲームをすることに。1ポイントも取らせないと意気込む白石だったが、経験のある子供に意表をつかれ、ミスが出る。3ポイントを取られ、悔しそうな表情を見せると子供はますます笑顔に。プロテニスプレーヤー・白石は、技量を見せ、憧れられるだけでなく、雰囲気を作るエンターテイナーであった。

フォアハンドのお手本を見せる白石 【早稲田スポーツ新聞会】

 白石は10月の王座をもって庭球部としての活動を終え、プロ選手としての活動を始めた。多くの4年生部員が競技生活に一区切りをつけるタイミングだが、白石にとってはそこからがスタートだった。プロとして始動した直後の全日本選手権でベスト8、その後のSBCドリームテニスツアーでベスト4、島津全日本室内選手権で2位とここまで順調に結果を残している。好調の要因について白石は「自分が思っていた以上に、組織のトップ(プレーヤー)でやっているというプレッシャーがあったなと終わってみて感じます。やっている時は、そんなに感じなかったですけど。背負ってるものがなくなったので、すごく気持ち的に楽で」と話す。早大庭球部のエースとしての活動とプロ選手としての活動の違いがいい方向に作用しているようだ。

 プロ選手としてSNSの運用も怠らない。Instagramを筆頭にfacebookやTwitterで試合結果やプレーの様子を頻繁にアップしている。Instagramのフォロワーは今年1年間で3000〜4000人増えたといい、現在は9000人近いフォロワーを抱える。「元々(SNSなどが)結構好き」だったという白石はスポンサーを獲得しなければならないプロ選手に求められる「自分を売り込む力」をすでに持ち合わせている。

サイン色紙を手に写真撮影に応じる白石 【早稲田スポーツ新聞会】

 高校卒業のタイミングでプロになる選択肢もある中で、早大を経てプロになる道を選んだ白石。大学では全国中学校体育大会、高校総体優勝に続く、全日本学生選手権(インカレ)優勝、エースとして王座17連覇へ貢献など輝かしい成績を残した。名実ともに学生テニス界のトップを走り続けてきた白石が目指すプロ選手像は「誰からも応援される選手」、そして「NGのないプロ」だ。今回のようなイベントに参加するだけでなくYouTubeに出演するなどすでに活動の幅を広げ始めている。こうした地道な活動が白石を理想の選手像に近づけてくれるはずだ。インタビューの最後に語ったプロとしての目標は四大大会の予選に出場できるランキングの獲得。厳しいプロの世界ではあるが、庭球部での4年間で得たものを存分に生かした戦いを見せてくれることだろう。見据える先は世界だ。プロテニスプレーヤーとして、新たな一歩を踏み出した白石にぜひ注目してほしい。

コメント

白石光(スポ4=秀明大秀明八千代)

――今回のイベントへ参加した経緯を聞かせてください。

元々自分のスクールのコーチだったということもあり、テニススクールの方から直接お誘いをいただいて、参加することになりました。

――大学在学中から参加したことに意図は

僕自身はもうプロとして活動してるので。こういったイベントは、交流を深めたり、大人の人と触れ合ったり、自分のテニスを少しでも参考にしてもらったり、そういう意味があるかなと思います。この在学中にやる意図というのはあまりないですが、もう自由なので、ちょっとこういうのもやってみようかなっていう興味からです。

――イベントに参加してみて、感想を教えてください

自分が普段「普通」としてやってることが、こういう子供たちだったり、大人からしたら普通じゃなくて、それを全部説明するってのが結構難しかったです。人に教えるっていうことがあんまりなかったので、意外と大変だなって。でも、子供たち見て、すごくかわいいなと思います(笑)。

――全日本学生王座決定試合(王座)で早大庭球部としての活動が終わり、プロとして、ここまで大会にも出場していると思います。心境の変化はありますか

王座で同期は僕以外(テニスをすることが)終わりだったんですが、僕はそこからが逆にスタートでした。「王座で終わって」というよりは、「王座で始まった」という感覚で。すぐに全日本選手権、SBC、シマズと大きな大会が続いたので。ですが、引退してから調子が良くて 。自分が思っていた以上に、組織のトップ(プレーヤー)でやっているというプレッシャーがあったなと終わってみて感じます。やっている時は、そんなに感じなかったですけど。背負ってるものがなくなったので、すごく気持ち的に楽で、テニスにおいても、それが良い方向につながっています。全日本選手権がベスト8で、全日本の室内が準優勝で。湘南美容のドリームテニス(SBCドリームテニスツアー)も4位で。今、結果もいい方にきているので、いい感じかなという印象です。

――部に所属してる時からSNSに力を入れていたと思います。プロとして活動を始めて、その運用に変化はありますか

SNSの投稿が大事、というのは今は主流になっています。どのスポンサーさんにあいさつに行くにも、フォロワーの数を聞かれる時代なので。僕だけじゃなくて、結構投稿してる選手もすごく多いです。そして、僕は結構元々(SNSなどが)結構好きで、携帯がマメだったので、「なんかやらないと」っていう感覚はないです。自分の結果やテニスの動画を見てもらって、僕のテニスに興味を持ってくれたらなと。新しいフォロワーが増える、イコール出会いが増えることだと思っているので。いろいろつながっていければいいなと思って頑張っています。

――フォロワー数の変化はありましたか

今年1年間で、3000〜4000人増えてるんじゃないですかね。もうすぐ9000人近いです。

――1万人目前ですね

1万人はいきたいですよね。でも、もう1万人の次って「1.1」とかしか表示されないじゃないですか。細かいのは出ないので、もう1万人いったら、もう9999にならないように、コントロールし続けようかな(笑)。フォローしてください。

――目指すプロテニスプレイヤー像はありますか

プレーでいうと、なんでもできる、クレバーな。攻撃もできて、ディフェンスもできて、トリッキーなプレーもできるっていうところを目指していきたいです。人柄でいえば、「誰からも応援される選手」。それはコート外の対応だったり、サインとか、あいさつとか。そういうところは今まで以上に積極的にちゃんとやろうかなと。人と話すのは結構好きなので。僕は「NGのないプロ」になりたいと思っていて。こういうイベントも、youtubeも最近結構出ているし、今までは全部オッケーしているので。プライドとかそういうのじゃなく、「誰かのために」っていう意味で、こういう活動も全部やろうかなと思っています。(テニスの)結果でいえば、来年は、全日本選手権で優勝したいです。あとは、もっとITFツアーでも優勝したいです。

――プロテニス選手としての目標は

プロとしては、四大大会の予選に出場できるランキングを獲得したいです。ジュニアの頃、 ジュニアのグランドスラム、全豪とかに出ていて。やっぱり大人の世界で、もう一回そこに行きたいって思いはあります。それもあって、プロになりたいっていう気持ちにもなっているのめ、とりあえずそこを目指すっていうのは変わらずに。国内の全日本選手権優勝っていうのもすごく名誉があるものなので、もちろん目指し続けます。それ以上に、大学生では結構国内で活動していて、全日本選手権が全ての目標でやっていたんですが、今後はもっと世界を見据えてやっていきたいです。
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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