“真面目にふざける” それがフロンターレグッズの魂

川崎フロンターレ
チーム・協会

【© KAWASAKI FRONTALE】

スタイリッシュでカッコいい。思わず「クスッ」と笑ってしまうようなフロンターレらしさ──。そんなバラエティー豊かなラインナップでファン・サポーターを楽しませてくれるのが川崎フロンターレのグッズである。そんなグッズはどのような考えで企画され、スタッフはどのような思いをもって制作しているのか。川崎フロンターレ グッズ担当の田村通朗さんに話を聞いた。

フロンターレらしいグッズを

「2023シーズン優勝祈念 アクリルスタンド」願いを込めながら一つ、一つ組み立ててデスクや玄関に置いて願掛けをしましょう! 【© KAWASAKI FRONTALE】

──バラエティー豊かなフロンターレグッズですが、よくあれだけのアイディアが浮かんでくるなと毎度思っています。どんなことを重点に考えて商品企画をしているのでしょうか。

「各スタッフがそれぞれの考えを持って企画をしていますが、僕は基本的に『売上を作る商品』『広報的の意味合いがある商品』の2つを考えています。加えて、いわゆるフロンターレらしさがある商品。周りが面白がってくれるグッズに関しては売上を目標にしないと割り切った中で商品を展開していくのをやっていくべきだと考えてやってきました」

──そういったフロンターレらしいグッズを展開することで、どんな反応がありますか?

「サポーターとのコミュニケーションにもなっていると思います。フロンターレらしいグッズを展開することで、毎回反応してくれるサポーターが増えていったなと少しずつ感じていますね。正直、企画していても『誰が買ってくれるんだろう』と思ってしまうほど暴走しているのもあるのですが…(笑)。でも、試合会場やグッズショップで並んでまでも買ってくれる人たちがいるんですよ。そんなフロンターレグッズのファンを作ることができたのも、フロンターレらしいグッズを展開し続けたからこそだと思っています」

──去年の夏にも選手がインスタで投稿したワードを、すぐグッズに取り入れて商品化しました。ああいった選手個人が発したものをグッズにするのは、話題になりますよね。

「そうですね。よくSNSで『商魂たくましい』と言われることもありますけど、それが価値なのかなと思います。毎試合、新商品を発売してフロンターレらしさを出していくことで、実が結んでいくのかなと思ってやっています。一方で、もっと売上を重視したほうがいいんじゃないかという意見もあました。フロンターレらしいグッズは売上の貢献は低いこともあるので、売上目線で話すと非効率な仕事と捉えられると思います。ただ、“らしさ”が無くなると価値がなくなるし…。グッズのファンができたのに、辞めてしまえば一瞬で離れてしまう…。それを、また再構築していくのは大変だと思うので、やり続けたいなと思っています。色々と悩みながらやっています」

まだまだ伸び代があるユニフォーム

2022年の新ユニフォーム。特設ページはこちら(→https://www.frontale.co.jp/lp/uniform2023/)から 【© KAWASAKI FRONTALE】

──売上が1番高いものは、やはりユニフォームですか?

「肝はユニフォームです。やっぱり売上が1番ありますし、まだまだ伸び代があると感じています。もっと積極的に仕入れて、売り切るという強い気持ちをもってやっていかないといけないと思い、今年はユニフォームの仕入れ数もチャレンジもしました。あとは、プーマさんにも協力をしていただいて販促の選手を使った動画を作ってもらったりしたので、多くのファン・サポーターの皆さんの手元に届けたいです」

──今年のユニフォームは私服に組み合わせてもオシャレなデザインという印象です。普段の生活から着てくれる人が増えたら嬉しいですね。

「そうなったら嬉しいですね。それはユニフォームだけなく、何も違和感なくニューヨークヤンキースの帽子を被っている人がたくさんいる光景と同じような感覚になってくれたら、すごく素敵ですよね」

──ユニフォームは高額ですが売上が1番あるのは凄いことだなと感じます。

「それは、すごく有り難いことだと思いますね。その中でチャレンジしたいなと思っているのはユニフォームを購入してくださっている心理を知りたいなと。『なんで買ってくれたのか』『なにをキッカケで買ってくれたのか』『毎年なのか、それとも2年おきに買ってくれているのか』『デザインがいいと思ったときに買ってくれているのか』。今まで感覚でやってきたことが多くて、ファン・サポーターのためにと思ってクラブの人間が色々と考えてやっていましたけど、果たしてそれが求められていることなのか確証がないままやってしまっているところがあります。それをしっかり汲み取るためにリアルな意見を聞いてみたいです。それがアンケートなのか、SNSなのか、リアルの対面の場を設けるのか。その辺のチャレンジをしたうえで本当にファン・サポーターが求めているサービスを提供できたらもっと幅が出てくるんだろうなと感じています」

──サポーターと一緒にユニフォームを作るという感覚ですね。

「そうなったら面白いですよね。私たちにはグッズショップがあるし、グッズスタッフが一番サポーターと触れ合っていると思っています。休み以外の日は必ずお客さんとの接点をもっているので、温度感や求めているものを実現できたらいいなと。それができるクラブでありたいなという気持ちが強いです」
──今年は新年グッズとして優勝祈念グッズが販売されます。どのような思いを込めて制作しましたか?

「優勝グッズって売上の貢献度が高いんです。でも、そこに頼ってはいけません。だから、たとえ優勝することができなくても売上を落とさずにできたら凄いことだなと思ったので、今回こういった優勝祈念グッズという形でフロンターレらしいチャレンジすることになりました」

──すごくデザインがカッコいいグッズが多いですよね。

「川崎大師のだるまとフロンターレ神社がうまく合わさったと思います。あとは、他のチームが絶対にできないことをやりたいというのがありました。やっぱり“真面目にふざけたい”んですよ(笑)」

次は僕らが新しい土を耕す

「2023シーズン優勝祈念 勝守」毎シーズンの定番グッズとなる勝守。優勝祈念ロゴを大きく配置し、背面には川崎フロンターレに関わるクラブ、サポーター、スポンサー、川崎市すべての方々のつながりによって、川崎フロンターレの“7つ目の宝(タイトル)”を獲得できるようにと願いを込めて、七宝柄がデザインされている 【© KAWASAKI FRONTALE】

──コラボグッズが多いというのもフロンターレの特徴だと思います。

「そこも、もっともっとやっていかないといけないことだと思っています。今回BRIEFING(ブリーフィング)さんとコラボグッズを販売したのですが、先方の担当者がまさかのフロンターレサポーターでした(笑)。それもあって色々調整してくれて、なかなか実現できないことも実現することができました。その他にも例えば以前に有名キャラクターとコラボをしましたが、先方にフロンターレの過去の活動やクラブの考えを説明をしたら『ぜひ、やりましょう』と言ってくれるんです。自分たちの活動に共感してもらっていることで普段できないようなこともさせていただけている恵まれた環境だなと。だからこそ、今までフロンターレらしさを作ってきた人たちが、色んな皆さんに共感を得られる良質な土を耕してくれているからこそ良い野菜が育てられているんだなと感じると同時に悔しさもあります。何をやっても先人の話になりますから(笑)。なので、僕はグッズの中で『0』のものを『1』にするというのをやりたいなと思っています。僕たちは今まで良質な土で農業をしてきたけど、次は僕らが耕した土で何かをやっていきたいです」

──新しい土を耕していくためにも、グッズ制作にはどんな思いをもって取り組んでいきたいですか?

「他のチームではやれないこと。フロンターレだからできるものをやりたいなと思っています。逆に言うとそこをメインでやりたいです(笑)。その1つが優勝祈念グッズでもありますし、今年もファン感謝デーがリアルで開催できるなら川崎フロンターレのアンオフィシャル オフィシャルグッズショップをやりたいんですよ。『等々力闇市』みたいな(笑)。のれんをくぐると、ここだけにしかないグッズがあるとか(笑)。そういうのも実現して土を耕していきたいですね」

──最後に、2023年の抱負をよろしくお願いします。

「フロンターレのサポーターでよかったと誇らしく思ってもらえるようなグッズ展開をしていきたい。他のサポーターに笑いながら『これがフロンターレのグッズだ! やばいだろ(笑)』と胸を張って言ってもらえるようなグッズ展開をしていきたいと思っています。今年もフロンターレグッズをよろしくお願いします!」

(取材:高澤真輝)
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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