やっぱり三笘薫。流れを変えたのはドイツ代表がリスペクトしすぎた突破力

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©JFA】

日本に歓喜をもたらし、世界を驚かせたドイツ戦の勝利。試合の流れを変える同点ゴールの起点となったのは、途中投入された三笘薫の突破からだった。

前半の劣勢を受け、森保ジャパンは後半開始から3バックに移行。三笘は57分に左のウイングバックとして投入され、守備時は5バックの左サイドでチーム全体の安定を心掛けつつ、攻撃時はウイングに近いポジションで積極的に仕掛けていくことを意識した。

ドイツ戦では板倉滉、田中碧、久保建英とフロンターレアカデミー在籍経験のある3選手が先発した。 【©JFA】

見せ場が訪れたのは、0―1のスコアで迎えた75分のこと。左サイドのタッチライン際でタメを作ると、流れの中から再び左に張ってボールを受け、仕掛けるタイミングを図りながら伸び上がるようなステップで縦へ持ち上がっていく。

さすがのドイツ代表もスカウティングで三笘の突破力を警戒していたのだろう。前を向いて仕掛けようとした瞬間、寄せてくるのではなく二人の選手がスペースを消すように引いて構え、縦を切るポジショニングを取ってきた。いわゆる「リスペクトしすぎた」状態だ。だが、そこで無理に縦へ突っ込むのではなく、内側へ切り込んでチャンスメークできるのも三笘の強み。ペナルティエリアへ侵入する寸前で巧みにドリブルの方向を変え、中央へ持ち込みながらパス。ここへ走り込んだ南野拓実が左足で狙い、GKマヌエル・ノイアーが弾いたところに堂安律が詰めて日本に貴重な同点ゴールが生まれた。

「最初のズーレ選手の対応を見て、縦を警戒しているのは分かっていた。次も縦を切ってきて、中に食いついてくる瞬間にギャップができて、そこで拓実くんが素晴らしい動きをしてくれた。そのあとは僕の力ではないですし、拓実くんのシュートの可能性を信じて律が入っていた。チームとして出せた結果だと思います」

遠藤航とのダブルボランチで先発した田中碧は、71分間の出場。 【©JFA】

この一撃で完全に流れが変わり、スタジアム中も日本の応援ムード一色に染まっていく。そして83分、浅野拓磨がノイアーの牙城を豪快にぶち破って日本が勝利。まさに世界を驚かす結果をもたらす形となった。

三笘は試合の最終盤に5バックの左サイドバックとして奮闘。ロングボールを跳ね返すヘディングやサイドで起点を作ろうとするところへの寄せなど、しっかりと守備タスクもこなし、試合のクロージングにも貢献した。

「ウイングバックに入ったときは、サンジロワーズのイメージを持ってやっていたところもあります。しっかり後ろに入り込んで、前向きの守備をして、スイッチを作るようにやっていました。最初の位置が後ろになる分、(守備に)出力も出せるので」

川崎フロンターレ時代は攻撃的な役割を求められていたが、ベルギーのユニオン・サンジロワーズで3―5―2の左サイドを任されていた経験がここで活きた。“川崎産”の選手が持ち前の特長を披露し、さらに海外で成長した姿を見せた形だ。

前半はセンターバック、後半は3バックの右ストッパーとしてフル出場した板倉滉。 【©JFA】

印象的だったのは試合後のミックスゾーンで見せた冷静な口ぶりだ。ジャイアントキリングを成し遂げたにもかかわらず、一喜一憂せずにしっかりと分析をしながら前を向いていた。フロンターレでJリーグを制した2020シーズン、記録的なペースで白星を積み重ねるチームは勝っても勝っても高みを目指し続けた。ここで得た経験が勝者のメンタリティを彼に植え付けたのは間違いない。

三笘にとっては初めてのワールドカップ。体調不良でチーム合流が遅れたこともあり、「個人としては正直、100%の状態に戻しきれてないところがある」という。ここからコンディションを上げていけば、さらなる活躍が期待できるはず。森保ジャパンが新しい景色を見るために、三笘薫が何度も世界を驚かす。

文=青山知雄
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著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

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