#33アイラ・ブラウン 愛する我が街の人々に笑顔を その一心でコートに立つ
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「最初のきっかけはゴンザガ大でクラスメイトだった友達が、『日本に興味はないか』って電話してきたことだったんだ。当時はフィリピンでプレーを終えたところで、オフシーズンだったね。もちろん日本に興味があったし、日本でプレーした選手からは良いことしか聞いていなかった。日本でプレーできるチャンスがあるんだったら、金額がいくらでも、絶対に日本に行くべきだ。そういう周りのアドバイスもあったので、日本でプレーすることになったんだ」
当時暮したのは、富山県の小さな町。
「田んぼに囲まれた寮に住んでいて、近くにショッピングセンターがあって歩いて行ったんだけど、そこで最初のカルチャーショックを受けたんだ。なんと、ここではだれも英語を話さないんだよ!そんな環境は初めてだったから、とても驚いたね。だけど初めて来たときから日本の文化はすごく気に入ったし、言葉はそんなにわからなかったけど、いい友達もできた。日本の文化を学ぼうと、いつも努力していたことを覚えているよ」
今では好物を訊ねられると寿司と答えるアイラだが、来日当初は食事の面でも少々苦労したと言う。
「毎日お米を食べることに慣れていなかったので、最初はちょっと大変だったね。美味しくするのに味付けしてみようと、牛乳と砂糖を混ぜたりしたこともあったよ。だけど時間が経つごとに普通の白米に慣れてきて、美味しいと思うようになった。今から思うと、お米に牛乳と砂糖を混ぜるなんて、考えられないよね(笑)」
それからサンロッカーズ渋谷、琉球ゴールデンキングスを経て、2019年に大阪エヴェッサに入団。気がつけば初めて日本の地を踏んでから、11年の時が経った。
「最初に多少のカルチャーショックはあったけど(笑)、日本から離れたいとは今までに一度も思わなかった。日本が気に入ったかというと、もう明らかだよね。10年以上経っても、ここにいることが証明している。食べ物も人も本当に素晴らしいし、日本の文化に恋し続けているような気分だよ」
アイラは2016年8月に日本国籍を取得。その直後から日本代表に招集されて数々の国際大会に出場し、昨夏には3x3男子日本代表として東京オリンピックでプレーした。
「あれは自分にとって、すごく大きな意味のある経験だったね。世界でいちばん高いレベルでプレーできたこともそうだし、世界中から注目される大きなステージでバスケができたことは絶対に忘れられない。それに普段から生活している大好きな国、誇りに思っている国を代表してプレーできたことも、大きな意味があった。周りはあまり期待していなかったかもしれないけど、プレーオフは次のステージにも行けたしね。なにもかもが、本当に素晴らしい経験だったよ」
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40歳で迎えた新たなシーズン パフォーマンスに衰えはない
「(パフォーマンスを落とさないのは)すべては、メンタリティだと思っている。ハードに練習するのか、しないのかは自分自身の選択。僕は毎朝起きると、今日もハードにやっていくことを選ぶ。その連続だと思うよ。なぜそうするかと言えば、ファン・ブースターのみんなが試合に来てくれたときに、アイラ・ブラウンが力強くプレーしている姿を見て、ハッピーに思ってもらいたいからなんだ。みんなにはでき得る限り、レベルの高いものを届けたいからね。それに自分の恵まれた健康な体には、本当に感謝しているよ」
富山入団時は29歳。それから日本でキャリアを積み重ね、自身が確かな成長を遂げてきた実感を得ている。
「あのころを思い返すと、ただ身体能力が高いだけの選手だったよね。今では自分の代名詞になっているような、ワンドリブルからステップバックしてプルアップジャンパーでスコアするプレーも、当時はなかった。3Pも打てたけど、今ほど確率は高くなかったね。でも、つねにアグレッシブでいよう、スコアの機会があればスコアしようという意識があったから上手くなれたんだと思う。これからも、その意識を持ち続けていくつもりだよ」
開幕から9試合を消化して3勝6敗と黒星が先行しているが、経験豊富なエヴェッサの頼れる“アニキ”はチームの行く末に危惧はしていない。
「今季はヘッドコーチが変わって、プレーのシステムも新しくなった。まだそれを完璧に消化していなくて、学んでいる途中だと言える。今後も練習し続けてコーチがやろうとしているスタイルへの理解度を深めていけば、これから数試合先には、もっとまとまったチームプレーが見せられるはずだよ。今季の僕らをひと言で言うと、バランスが取れているチームだと思う。しっかりとチームをコントロールできるポイントガード、#35鈴木達也が加わったのは、新たな強みになっているね」
そして今季のチームへの期待と、そこで果たすべき自分の役割については、こう語る。
「チームに関してはシーズンの早い段階のころは、ケガ人が多かったので少し心配だったけど、彼らも戻りつつある。今季のチームには、本当に高い期待感を持っているんだ。すごくいい選手が揃っている。ベストな状態になるにはもう少しだけ時間が必要だけど、ひとつひとつの試合を真剣に取り組んでいけば、必ずそこに到達できる。そのために自分がコート上にいる時間は、チームにもっとエネルギーをもたらせるような振る舞いをしたい。チームの状況が悪いときにポジティブであり続けるのは、自分の役割だと思っているからね」
エヴェッサでは今季が4シーズン目。国内外を含め、彼にとってはもっとも長く在籍しているチームである。そんなアイラは、今や大阪を「僕のホームタウン」と言ってはばからない。コロナ禍で無観客試合を経験して、「ホームタウン」から応援に駆けつけてくれるファン・ブースターとの特別な関係を再認識した。
「今も声が出せなかったり、完全に以前と同じ状況ではないけど、アリーナにファン・ブースターのみんなが戻ってきてくれた。そこでプレーできるのは、あらためて特別な気持ちになるね。大きな声が出せなくても、みんながハリセンを叩いて応援してくれる。そこから自分たちはエネルギーをもらえるし、やはりファン・ブースターのみんながよろこんでくれている顔を見たい。それが僕、そして僕たちが、試合に勝ちたい大きな理由のひとつなんだよ」
愛する我が街の人々に、プレーで笑顔を届けたい。その一心で背番号33は、今日もコートに立つ。
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