スポーツと他分野を切り分け、自ら可能性を狭めているサッカー人。 (3/3)|A-MAP2期生 下澤悠太

チーム・協会

【テゲバジャーロ宮崎】

初めまして。現在、J3テゲバジャーロ宮崎に所属している下澤悠太です。今年でキャリア3年目を迎え、日々「どうしたらもっとサッカー選手として成長し、活躍していけるか?」という問いと、真摯に向き合いながら生きています。

前回、アスリートとして成長するために、様々な視点や価値観を持つ際に気をつけるべき落とし穴について、自分の実体験を踏まえて書いてみました。
今回はサッカー界と他業界(分野)を分断している3つの要因の考察と、この記事の結論をまとめています。

サッカー界と他業界(分野)に壁を作っている3つの要因

【下澤悠太】

皆さんはサッカー(スポーツ)とそれ以外の分野の関係をどう捉えているでしょうか?

個人的にはこれまでの話も含め、決して関係がないものではなく、密接につながり合っているものだと考えています。

むしろなぜ全くの別物として分けてしまう風潮があるのかが、全く理解できませんでした。

なぜなら、分けて考えているということは、自らの可能性を狭めていることと同じ意味だと考えていたからです。


だからこそ、サッカー選手として成長し、もっと活躍していくために、他分野から学ぶことが大切だと考えていますし、そこでの学びをサッカーの現場で実践し、競技力の向上に繋げていきたいと考えています。

そして、これはできるだけ早い年代から、必要とされるべきことだとも考えています。

例えば、小さい頃からなんとなく過ごしているサッカー選手と、適切な目標設定を他業界から学び、具体的な行動計画を立て、日々練習の中で「今自分は何に取り組む必要があるのか?」というところまで、精度高く逆算している選手では、圧倒的に後者の方が成長スピードが早くなるのは当たり前だと思います。


しかし、現状として多くのサッカー人が、そこまでサッカー以外の分野に触れることが多くないように感じています。

では、そこに制限をかけている障壁があるとしたら、どんなことが考えられるでしょうか。

私は大きく分けて3つあると考えています。

1.スポーツと他分野の繋がりに気づけていない
→今回の記事の内容でもあるが、そもそもサッカー以外の分野から学ぶことが、選手としての成長や活躍に繋がることに気づけていない。

2.認知的多様性を阻害するマインドや行動
→「サッカー選手はサッカーだけしておけばよい」といった、認知的多様性を豊かにする取り組みを阻害しようとする風潮など。

3.『スポーツ→ビジネス』の発信が溢れていること
→「アスリート時代に培った能力が、ビジネスパーソンにも活きる」、「良いアスリートは良いビジネスパーソンになれる」といった発信など。


今回は特に3について整理してみたいと思います。


『スポーツ→ビジネス』内容が世に溢れるほど、『他の分野に触れること=引退を考えている選手が取り組むこと』というような印象を強めるように感じています。

ということもあってか、身の回りのアスリートの中でも、現役中に自競技以外の世界(分野)に触れること(活動すること)に対して、恥ずかしさを感じているアスリートは少なくありません。 

なぜなら、その行動が「私は本気で上を目指すことをやめた(やめかけている)選手である」という意味のように、本人も周りも(間違えて)解釈している場合が多いからです。


そもそも学生アスリートをはじめ、上を目指している現役選手が求めている情報というのは、“今”成長でき、“今”活躍するために必要な情報なはずです。

どれだけ「引退した時に困らないように、今のうちに準備をしておこう」と言われても、引退した先のことを考えるのは、本当に引退がチラついた時、というのは至極当然にように感じています。

こういった要因もあり、現役時代、特に若い世代の選手がサッカー以外の分野に触れる機会が少なくなっているように感じています。

そして、その積み重ねが「サッカーしかやってこなかった」という人材を輩出し続け、昨今のセカンドキャリア問題の根本的な課題になっているのではないでしょうか?

引退後のためでなく、あくまで「サッカー選手として成長し、活躍するために、他分野にアンテナを貼り、学んでいく。そして、その経験を現役時代に実践する。結果的に、引退した後にも活きていく。という流れが本質的だと考えています。



スポーツ以外の分野に触れることが、選手(組織)としての成長・活躍につながることを体現し続ける。

【テゲバジャーロ宮崎】

以上のことを踏まえ、現役アスリートが今すぐにでも取り組んだ方がいいこととして、【マインドの変化】【行動の変化】が挙げられると考えています。

まずは大前提として、自競技以外の世界(分野)が、競技力向上に繋がる可能性が多いにあるというマインドを持つこと。

その先で、色々な世界に触れ、自分ごとに置き換え、それを競技生活で実践する。
そして周りからの適切なアドバイスをもらい、さらに精度を高めていくというサイクルを回し続けることが大切だと思います。


ここで実際に私が行っていた、他分野(ビジネス)の学びを自競技に繋げていた事例を少しだけ共有してみます。

例えば私は大学時代、プロテイン代やトレーニング費用を少しでも捻出するために、そこまでのサッカー人生で得た知識や経験を、1つの教材にまとめて販売していたことがありました。

その取り組みをするにあたって、ターゲットのニーズを細かくリサーチしていたのですが、そこでリサーチ力が少しずつ鍛えられたことで、
「監督が何を求めているのか?どういう選手を使う傾向があるのか?」といった監督のニーズや、「味方がどんな特徴を持っていて、どんなパスが欲しいか?」といったら仲間のニーズを理解する精度も高まっていった経験があります。


他には、Googleが4年間の歳月をかけた社内調査で、「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」という結果が出ていたことを知った時の話。

今年から新しいチームに所属することになった私は、まずは積極的に周りの選手(監督)に話しかけ、関係性の質を高めることに努めました。
そのために、チームが始動する前には、既存・新規の選手の経歴や、顔と名前を一致させた状態で臨むことに。

その結果もあってか、比較的早い段階から、チームの中に溶け込めている感覚がありました。そして、そのまま開幕戦スタメンを勝ち取り、その試合でプロ初ゴールを決めることもできました。
これが全ての要因だとは思っていませんが、少なからず自分がプレーしやすい環境を意識的に作ったことは事実です。

これはほんの一例ではありますが、私はこのように日々生きている中でサッカー以外からの学び、それをサッカーに置き換え、実践しています。

「これってサッカーに置き換えると...?」という視点を持っていれば、どんなことからでも学べることを実感していますし、そうやって世界を見渡してみると面白くて仕方がないんです。

『スポーツ以外の分野に触れることが、選手(組織)としての成長を加速させ、活躍のキッカケを生む』というのが、私の結論です。


今、サッカー界と他業界(分野)の間には大きな隔たりがあると考えています。

その高くそびえ立つ壁を壊していくためには、「サッカー選手として認知的多様性を高め、その知識を実践していくことが選手としての成長や活躍につながる」という仮説を立証しているサッカー選手の存在が必要だと考えています。

だからこそ、まずは私がそれを実践し、選手としての成長・活躍を体現することで証明していきます。

A-MAP 2期生 下澤悠太
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著者プロフィール

元プロサッカー選手の山内貴雄やラグビー元日本代表キャプテン廣瀬俊朗らが理事を務める一般社団法人アポロプロジェクトは、アスリートの価値を最大限に高め、その価値を社会へ還元するプラットフォーム「アスリートオープンイノベーション構想」の実現を目指し2020年に設立。様々な競技の現役・元アスリートが学ぶ実践的マインドセットプログラム「A-MAP(株式会社ビジネス・ブレークスルーと共同開発)」の企画・運営と、アスリート達による社会課題解決のアクションに対し伴走支援を行なっている。

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