【Inside Story】 コベルコ神戸スティーラーズ ファンクラブ担当 坂下莉沙子
【コベルコ神戸スティーラーズ】
ラグビー歴は幼稚園年少から
1992年生まれ。9歳と4歳離れた兄がいる。次兄が芦屋ラグビースクールに通い始め、母に連れられてグラウンドへ。練習中、母親たちはカフェでおしゃべりタイム。
「その時間がつまらなくて(笑)。幼稚園年少からスクールに入ることができるので、3、4歳の頃からラグビーをはじめました」
オリンピックでの男女7人制ラグビーの正式採用決定をきっかけに、女子ラグビーの競技人口は増加傾向にあるが、当時はまだ女子がラグビーをするのは珍しかった。運動するのが好きだったという彼女は、男子に混じって、グラウンドを走り回った。小柄だったこともあり、小学生の頃のポジションはスクラムハーフ。普段のおっとりとした口調からは想像できないが、負けず嫌いという性格で、スタメン入りを目指しプレーしていた。ちなみに、徳田健太はラグビースクールの1学年、井上遼は4学年後輩にあたる。
「徳田選手も小学1年からスクールに通っていました。おとなしくて、黙々とプレーしている印象があります。井上選手はやんちゃな子だなと思って見ていましたね」
また、神戸スティーラーズのチームマネージャー藤高之氏は、同ラグビースクールでコーチを務める。直接指導を受けたことはなかったが、「藤コーチ」「藤さん」と慕っていたそうだ。
プレーする側から支える側へ
「スクールには女子選手が増えてきていました。彼女たちが練習しやすい雰囲気や環境を作ってあげたいという思いがあって…。女子ラグビーの普及もあり、後輩の女の子たちは中学でもラグビーを続けることができました。自分ができなかったことなので、彼女たちの活躍は素直に嬉しいですね」
プレーする側から支える側へ。後輩たちへのサポートを通じて、マネージャーをやりたいという思いが徐々に湧いてきた。高校では部活動をせずに勉強に専念し、近畿大学へ。ラグビー部に入り、マネージャーとなり選手を支えた。
「選手にとって、練習や試合に専念できる環境づくりを意識していました。120人ほど部員がいましたし、大変でしたが、充実した4年間を過ごすことができました」
大学卒業後は、生命保険会社の営業職として3年間勤務した後、船舶用資材の販売などを行う会社で社長秘書を務めた。ラグビーに関わりたいという思いはあったが、「まさか仕事にできるなんて思っていなかった」と話す。
大学4年の時の卒部式の写真。隣に映るのは当時、近畿大学でヘッドコーチを務めていたOBで、現在は神戸スティーラーズのリクルート・普及担当の松井祥寛氏。 【コベルコ神戸スティーラーズ】
コロナ禍の中、神戸スティーラーズへ
「久しぶり!」
「どうしているんや?」
何気ない会話を交わした。
それから半年後、その会話がきっかけとなり、2020年4月、神戸製鋼コベルコスティーラーズのスタッフに。まさに楕円球の神様の名采配。ラグビーを愛し、人をサポートするのが好きだという彼女はファンクラブ担当となった。しかし、本来ならばリーグ期間中のはずが、新型コロナの感染拡大により、「ジャパンラグビートップリーグ2020」はシーズン途中で中止に。試合会場で前任者からチームブースでの仕事などを引き継ぐことになっていたが、それができない。しかも、コロナ禍というこれまで誰も経験したことがない状況。当時、ファンクラブ担当を務めていた大橋由和氏の指示に従いながら、目の前の業務をこなしていくことに必死だったと話す。
「リーグが中止になり、残念がっているファンの方々に喜んでもらえるような企画を本当なら考えないといけなかったと思いますが、仕事内容を理解することや作業に追われてしまって…」
当時のことを振り返り、反省の弁。多忙な日々の中で感じたのは、ファンクラブ会員の多さ。「ラグビーワールドカップ2019日本大会」直後ということもあり、ラグビー人気の盛り上がりを肌で感じた。その反面、スタッフの数は少なく、発送作業をはじめ、すべてが手作業だった。
「もっと大勢スタッフがいて、発送作業も委託業者に依頼しているのかと思っていたのですが、そうじゃない。アナログなことも多くて驚きました」
ファンに寄り添いながら入会をサポート
「想定はしていたのですが、ピーク時には電話が1日20本、メールは50通ほどありました。電話で入会の画面を見ながら、ここに名前を入力してくださいとか、1つ1つ説明して。途中で『もういいわ』と言われる方もいたのですが、『あと少しなので頑張ってください!』と声をかけて入会が完了するまで説明しました。お問い合わせくださった全員が入会できるようにしようと頑張りました!」
「1人もがっかりさせたくない!」という思いがあったという。その甲斐あって、多くの方々が無事入会することができた。
「ホストゲームのチームブースで、あの人が、あの時の電話の人かなと思いながら見ていますね」
リーダーとして陣頭指揮をとった「ファン感謝祭」
「『Steel Mates』という名称は大橋さんのアイデアから生まれたものです。リーグワンを一緒に戦っていく『鋼の仲間』という思いが込められています。Steel Matesのロゴは、コベルコ神戸スティーラーズのワードロゴがゴシック体で固い雰囲気だったので、逆に柔らかいイメージにしたかったこともあり、神戸製鋼コベルコスティーラーズのロゴを継承したものにしました」
リーグワン1年目のファンクラブでは、ベースボールシャツなどが付いた「ゴールド会員」を新設。500名限定だったが、あっという間に定員に達した。改めて「ファンの皆様のチームに対する熱量の高さを感じた」と言う。と同時に、その期待に応えないといけないと身が引き締まった。ゴールド会員に向けてクラブハウス見学ツアーやホストゲームで選手バスの出迎えなどを行ったが、コロナ禍ということもあり、思うように選手との交流の場を作ることができなかったと悔やむ。
「Steel Matesの皆様が選手と交流できるようにしたい!」
シーズン終了後に、ようやくその機会がやって来た。ゴールド会員、レギュラー会員、ジュニア会員を招待し、灘浜グラウンドで3年ぶりにファンクラブ限定「ファン感謝祭」を実施。感染症対策のため、サインや写真に応じるなど、選手が直接ファンサービスを行うことはできなかったが、久しぶりに灘浜グラウンドにSteel Matesの笑顔が咲き誇り、イベントは大盛況のうちの幕を閉じた。
リーダーとして陣頭指揮をとった坂下氏は「初めて経験する大規模なイベントだったので、本当に大変で…。しかも、業者に頼らずにスタッフ中心で開催しましたので、感染症対策のこと、イベントの内容、台本など、これでいいのかと、頭を悩ませながら準備を進めていきました。当日も、あれがないとか、ここどうするのなど、連絡が入って常にグラウンドを走り回っていたように思います。最終的に約500名のSteel Matesの皆様に参加いただいたのですが、全員が帰られるまで、ずっと気持ちが張り詰めていました」と振り返る。ファン感の裏側を紹介したYouTubeの動画「STAFF another story」
https://www.youtube.com/watch?v=Xuq4HGi2qXQ
をご覧いただいた方はご存じかと思われるが、イベントを終えた後、彼女は安堵の涙を流した。
Steel Matesの皆様を笑顔にしたい
「観戦チケットを特典に付けてほしいというご要望が多かったこともありますし、満員の会場で選手にプレーしてもらいたいという思いから、今シーズンは、Steel Matesになると、お得に試合観戦ができる内容にしました。今後もSteel Matesになってよかったと思ってもらえるような企画を考えていきます」
今シーズンは、コロナの状況にもよるが、Steel Matesの皆様と選手が直接交流できるイベントをこれまで以上に増やしていきたいとも。
「試合会場などで、Steel Matesの皆様の笑顔を見ることがやりがいになっています。チームの勝利がSteel Matesの皆様にとって喜びであり、笑顔の源だと思いますが、それ以外の部分で皆様に笑顔になってもらえるようにしたいですね」
Steel Matesの皆様との関わりの中で一番嬉かったことを聞くと、問い合わせを受けた後、電話口の男性が「すごく丁寧な人やった。今シーズンも無事にファンクラブの更新ができたわ」と受話器の向こうから弾んだ声が聞こえた時だったという。
「電話を切ったと勘違いされていたと思うんですが、私に聞かそうと思って発せられた言葉ではなく、自然に出た感じがして、それはすごく嬉しかったですね」
ファンの皆様方にとって一番身近な存在として、Steel Matesのチームへの熱い思いに寄り添いながら、笑顔にできるように。それが楕円球の神様が彼女に与えた使命なのだ。
文/山本 暁子(チームライター)
今シーズン、新設されたプレミアムJr.会員の特典であるファミリアとコラボしたラグビーボール型ポーチを持って。「ファミちゃんの可愛い刺繍入りです!ぜひご入会ください!」 【コベルコ神戸スティーラーズ】
ホストゲームでは、試合会場に設置されているSteel Matesブースでポイントサービスやファンクラブの入会サポートなどを行う。 【コベルコ神戸スティーラーズ】
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