【障害者スポーツ環境の今】コロナ禍・東京パラリンピック後の変化

笹川スポーツ財団
チーム・協会

【東京パラリンピック ボッチャ 混合チームBC1/BC2 準決勝(写真:フォートキシモト)】

本日10月29日(土)から栃木県ではじまる、第22回全国障害者スポーツ大会(いちご一会とちぎ大会)。コロナ禍で2020年は延期、昨年は中止でしたが、今年は遂に開催されます!

昨年開催された東京パラリンピック大会では、パラリンピアンの活躍で興奮と感動に包まれました。「勇気をもらった!」という方も多いと思います。そして、さまざまな競技に興味を持たれたのはないでしょうか?

今大会でも、陸上競技や車いすバスケットボール、ボッチャなど個人7競技、団体7競技が実施されます。熱戦に期待ですね。

障害者スポーツ専用・優先施設の存在

昨年の東京パラリンピックで大きな注目を集めることとなった障害者スポーツ。

笹川スポーツ財団では、”障害児・者の運動・スポーツの日常化”に向けて、さまざまな調査・研究を行っています。その中の一つが、「国内に障害者専用・優先スポーツ施設はいくつあるのか」というもので、対象は、身体障害者福祉センターや自治体のリハビリテーションセンターなどです。この調査は2010年から開始しました。

最新の調査(2022年)で、国内に障害者専用・優先スポーツ施設が150あることが分かりました。施設数は、2010年:116、2012年:114、2015年:139、2018年:141、2021:150と増加傾向にあります。2018年調査時に把握した141施設から、5施設の新設と要件を満たす4施設、合計9施設が新たに加わりました。

※障害者専用・優先スポーツ施設の要件
要件1:体育館、またはプールのいずれかを所有している
要件2:利用を希望する個人、および団体に施設を貸し出している(障害者の個人利用と団体利用がある)

障害者スポーツの発展には、この「障害者専用・優先スポーツ施設」の存在がとても重要になってきます。

障害者専用・優先スポーツ施設数の推移 【笹川スポーツ財団「障害者専用・優先スポーツ施設に関する研究2021」】

施設利用者数の推移

障害者専用・優先スポーツ施設を利用する障害者の推移はどうなっているのでしょう?

2012年度から2019年度までの、障害者専用・優先スポーツ施設の利用状況をみると、250万人前後で推移していることがわかります。しかし、2020年度は98万人と大きく減少しました。

2020年は新型コロナウイする感染症が社会に大きな影響を与えた年です。緊急事態宣言が出され、多くの方々が不要・不急の外出を控え自宅で過ごす時間が増えました。さまざまな施設も休館となりましたので、それが反映された結果と言えます。

障害者専用・優先スポーツ施設の利用状況 【笹川スポーツ財団「障害者専用・優先スポーツ施設に関する研究2021」】

どんなスポーツ大会やイベントが行われたのか?

障害者専用・優先スポーツ施設での、種目別のスポーツ大会やイベント内容を調査しました。

上位3つは、「ボッチャ」が68.1%と最も多く、ついで、「卓球」(58.3%)、「水泳」(33.3%)という結果でした。2018年度調査と比較すると、「ボッチャ」を実施する施設が大きく増加しています。

東京パラリンピックで注目を集めた「ボッチャ」。日本人選手の活躍は目覚ましく、多くのメダルを獲得しました。その影響が出たと考えられますね。

障害者専用・優先スポーツ施設における種目別スポーツ大会やイベントの実施内容(上位5つ) 【笹川スポーツ財団「障害者専用・優先スポーツ施設に関する研究2021」】

ビックイベント目白押し!これからの障害者スポーツ環境

全国障害者スポーツ大会は来年以降も開催されます。

そして、2024年にはパリ・パラリンピック大会、同年にKOBE2024 世界パラ陸上競技選手権大会、また、先日、2025年に東京でデフリンピック(身体障害者のオリンピック「パラリンピック」に対し「デフリンピック」は、ろう者のオリンピック)が開催されることが決定しました!2026年には、第5回アジアパラ競技大会が愛知県で開催されます。

東京パラリンピックは、会場ではなくテレビやインターネットで観戦した方々がほとんどです。でも、会場で生の迫力を見ると興奮や印象も大きく変わるはずでです。それを見て、「やりたい!」「少し運動してみたい!」と感じる方は増えるはず。

京パラリンピックのレガシーは、長い目でみる必要があります。注目を浴びる国際大会などを契機に、障害児・者が気軽にスポーツを行える環境を整備し、理解をすることが”障害児・者の運動・スポーツの日常化”につながるはずです。


■笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 政策ディレクター 小淵 和也
新型コロナウイルス感染症と東京パラリンピック大会という社会的に大きな2つの出来事の影響を受けた結果となった。東京パラリンピックをきっかけにスポーツに興味を持った障害児・者が、いつでもどこでもスポーツできる環境を整えるために、障害者専用・優先スポーツ施設が拠点となり、情報交換、指導者派遣、スポーツ教室開催などの事業を通して、近隣の公共スポーツ施設とネットワーク化を進めていくことが、これまで以上に重要になるだろう。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

笹川スポーツ財団は、「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進するスポーツ専門のシンクタンクです。スポーツに関する研究調査、データの収集・分析・発信や、国・自治体のスポーツ政策に対する提言策定を行い、「誰でも・どこでも・いつまでも」スポーツに親しむことができる社会づくりを目指しています。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント