日本からUFC王者が生まれたことはまだないものの、日出ずる国からは桜庭和志、岡見勇信、宇野薫、近藤有己、五味隆典、山本“KID”徳郁、須藤元気、桜井“マッハ”速人といった並み居る一流ファイターたちがこれまでにオクタゴンを飾っている。

これらの国際的スターたちのUFCでの記録はさまざまだが、彼らの存在は常に総合格闘技を受け入れてきた国内に息づく才能を思い出させるものだった。近年になると、その発現は良くて散発的という程度になっていたが、そこへ、22歳の平良達郎のようなファイターがビッグショーにやってきたことで、日本人ファイターのニューウエーブが起こるのではという期待が高まっている。

「国際的ステージで戦って勝てる日本のファイターはたくさんいます」と通訳を通じて平良は話す。「これからもどんどん日本のファイターがチャンスをつかみ、国の代表としてUFCのオクタゴンにやってくるといいですね」

5月に平良はカルロス・カンデラリオを相手にUFC初勝利を飾り、母国を喜ばせている。沖縄出身の彼は忍耐強く技術を有効に使った戦いを見せ、30-26、30-27、30-27のスコアで勝利。それはとても22歳のルーキーとは思えない成熟度だった。

「自分がベテランみたいな戦いをしていると思ったことはありません。これが僕なんです」と戦績を11勝0敗に伸ばした平良は言う。「僕は多くの経験を持っていますし、支えてくれる両親と素晴らしいチームがついています。これからも最高レベルで戦い続けたいですし、本物のUFCベテランになりたいと思っています」

この落ち着きぶりが平良のDNAの一部なのかもしれない。UFCのプロフィル用の質問でヒーローについて聞かれた平良は、前述したような有名ファイターたちには触れることなく、自身の祖父を挙げている。彼の祖父は夢を追う孫の活躍を楽しんでいるという。

「すごく喜んでくれています」と平良。「祖父は他の人の成功、特に家族の成功を自分の喜びにするような、すごく優しい人なんです。だから、僕にとっても同じように彼の幸せが大事ですね」

つまり、修斗のフライ級王者に輝いたことを含め、日本のMMAで10勝0敗を記録した若き平良が、何ら動揺することなく、カンデラリオ戦のファイトウイークを切り抜けたことも驚きには値しないということだ。

「僕にとって初めてのUFCファイトウイークで、すごく新鮮でした」と彼は話す。「みんなとても礼儀正しくてプロフェッショナルでしたし、全てがスムーズでした。もちろん、UFCデビュー戦で勝ててうれしかったです。また戻ってくるのがさらに楽しみになりました」

プレッシャーはなかったのだろうか？

「懸かっているものがすごく大きくて、対戦相手がかなり危険な選手だから、少しプレッシャーがありました。でも、とにかくものすごく楽しい経験でした」

そう応じた平良は、C.J.ベルガラと対戦するためにラスベガスのUFC APEXに戻ってくる。今度も厳しい試練だ。とはいえ、UFCロースターで7番目に若いファイターの一人である平良には、もう準備ができている。

平良はベルガラを「彼はタフな対戦相手です」と評し、「彼はとても能力が高くて、危険です。でも、準備はできています」と話した。

UFCにおける日本のMMAの絶対的な基準になるかもしれない平良には、それに伴うすべてに対して構えがある。20代前半の若者が背負うには、かなりの重荷だ。しかし、平良が15歳からジムでトレーニングを積んできたことを思えば、彼が自分はそれに対処できると考えていることに何の驚きもない。

ここに至るまでに人生で何を犠牲にしてきたか尋ねられた平良は「正直なところ、時間とエネルギー以外は、それほど犠牲にしてきた感じがしないんです」と答えた。

「でも、これが僕の道だと思っていて、自分がしなければならなかったことのどれについても、犠牲だとは思っていません。目標はワールドチャンピオンで、そこに至るために必要なことなら何だって喜んでやります」

日本に初めてのUFCタイトルをもたらすのは彼なのかもしれない。平良はこう話している。

「僕にとって、日本のMMAの状況は重要です。だから、僕がベルトをとって、日本のMMA界にもっと多くの希望と興奮をもたらしたい。僕の夢が叶うのは、その時です。その時、どんな感覚なのか知りたいですね。燃え尽きているかな。それとも、燃え上がっているでしょうか」

平良が登場するUFCファイトナイト・ラスベガス62は日本時間10月16日（日）実施。プレリムはアメリカ東部時間15日16時（日本時間16日5時）にスタートし、メインカードは東部時間同19時（日本時間同8時）に開始する予定だ。