【KMSKデインズ】 スタッフレポート 〜欧州クラブ人事における日本人経営者の苦悩〜

KMSKデインズ
チーム・協会

【(C) KMSK Deinze】

ベルギープロリーグ2部所属 KMSKデインズについて、欧州現地からのリアルタイムな雑観をスタッフよりお届けします。

8月のベルギープロリーグ2部開幕から早くも2ヶ月が過ぎ、リーグ戦もプレーオフを除けば折り返し地点直前まできています。今回のスタッフ日記ではリアルな、そして少しシビアな欧州フットボールクラブ経営の様子を書いてみます。KMSKデインズのオーナーが変わった2022年2月当初からワクワクすること、大変なこと様々でしたが、特にこの9月は大きな変化がありましたー。

日本向けとしてはとても残念なニュースとなってしまった白石尚久監督退任というクラブとしての決断。ベルギーリーグ初の日本人監督として就任発表時には多くのメディアにも取り上げていただき、もちろん現地スタッフもそのチーム作りに期待し、共に戦ってきました。怪我人続出という不運もありながらでしたが、好調だったプレシーズンの調子は保てず、9月はリーグ戦3連敗。チームとしてテコ入れが必要な時期に差し迫ってしまいました。

ピッチ上で戦う選手、その戦術は、監督を筆頭に強化部長や、それを支えるコーチ陣が毎日の様に議論を交わしながら作り上げていくものです。実際に白石監督の、試合が終わった直後から寝る間を惜しんで映像分析に取り組む姿もみてきました。しかしその方向性で結果が出なければ、経営サイド、またオーナーも巻き込んで共に頭を悩ませます。客観的なデータ分析と、様々な角度からの定性的分析を行う中、デインズのCSO(最高戦略責任者)である飯塚さんのこの時期の表情は葛藤に満ちていたと言っていいと思います。

KMSKデインズ CSO 飯塚晃央 【(C) KMSK Deinze】

結果が出ないことにサポーター・地元のステークホルダーは敏感です。特に外国人オーナーという立場は言わずもがな特殊で、言葉に出さなくても「同じ日本人だから監督をかばうのか」という憶測や、「ベルギーリーグの戦い方を知っているコーチが少なすぎる」など地元の声は重くのしかかります。ブレずに進めるもの、状況において判断を変えていくもの。飯塚さんの頭には100個ぐらいの思考・感情がうずめきあっていた様に見えました。監督交代のニュースは現地スタッフも驚きに包まれましたし、その中で不安や動揺を最小限に抑えるべく飯塚さんは各所への説明や、各スタッフとの個別ミーティングに奔走していました。

議論を重ねるスタッフ陣 【(C) KMSK Deinze】

10月8日に行われた監督交代から2試合目のホームでの試合、ロンメル戦は3-0と快勝。試合に勝つことは、経営陣にとっては、一瞬でも胸を撫で下ろすことができる瞬間です。試合後は経営陣、コーチ陣、スタッフみんな揃って飲んで踊っての楽しいひととき。それでも飯塚さんは「まだ一勝」と気を引き締めます。まだまだ、わたしたちのプロジェクトは始まったばかりです。

新たなスタートとなりそうな2022年10月。実は来週からベトナムのアカデミーからの選手受け入れも始まります。さらにグローバルに進化するデインズの動向をこれからもお届けします!
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著者プロフィール

1926年に設立されたベルギープロリーグ2部所属の歴史あるサッカークラブ。ホームタウンであるデインズ市は約4万5千人の人口を抱え、東フランダース地域にある富裕層が多く住む地域として知られています。2019-20シーズンにベルギープロリーグ2部への昇格を果たし、2021-22シーズンは4位(8クラブ中)でシーズン終了と健闘しました。新スタジアム建設計画を発表するなど、急成長を遂げているクラブです。2022年2月よりACA Football Partnersがオーナーとなり、グローバルレベルでの業務提携も積極的に進めながら、ビジネス及びスポーツ面でのさらなる発展を目指します。

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