サッカー選手として成長する可能性を自ら捨てていた実体験。 (2/3)|A-MAP2期生 下澤悠太

チーム・協会

【TEGEVAJARO MIYAZAKI】

初めまして。現在、J3テゲバジャーロ宮崎に所属している下澤悠太です。今年でキャリア3年目を迎え、日々「どうしたらもっとサッカー選手として成長し、活躍していけるか?」という問いと、真摯に向き合いながら生きています。
前回、「アスリートとしてスポーツ以外の分野に触れ、様々な視点や価値観を持てている状態が、選手としての成長や活躍を加速させるのではないか?」という仮説を提示しました。
今回は、その様々な視点や価値観を持つ際に気をつけるべき落とし穴について、自分の実体験を踏まえて書いてみました。

自分の実力不足を感じた実体験

【FREE】

私は先日まで、『A-MAP』というアスリート向けのプログラムを受講していました。
その中で『自競技の5年後に向けたグランドデザイン(戦略)を考える』というテーマでプレゼンをする機会がありました。
その際、元トップアスリートで現在会社を経営されている方が一緒に伴走してくださることになっていたのですが、その方との出会いが、とても衝撃的でした。

【A-MAP】

最初に提案されたことが、「発表日から逆算して必要なことを洗い出し、中間目標、見通しを立ててみて」という課題でした。
私自身、これまでサッカーする中で、人一倍「目標を達成するために、今なにをすればいいか?」という逆算してきた自負があったので、「なんとかうまく整理できるだろう!」と最初は思っていました。

しかし、いざ進めてみると、解像度の粗さを指摘され続けました。目標が定性的だったり、やるべきことが抜け落ちていたり...。
「このスケジュールを正確にこなせたら、本当に目標を達成できるの?」という指摘を受けながら、何度もスケジュールの再設計をしました。

しかし、それでもまだまだ具体性に欠け、なかなか思うようにスケジュール通りに進まない。結局、その状態のままプレゼン本番を迎え、中途半端な発表を披露することとなりました。これは自分の人生の中でも大きな失敗の1つととらえています。

もしかすると、サッカー選手の中だったら考えられていた方なのかもしれません。しかし、「これまで自分が逆算だと思っていたことは錯覚で、全く話にならないものだったんだ。」ということを心から痛感しました。自分がこれまで持っていた認識や基準が、(他分野で)活躍している人たちと大きくズレていたことに気づいたのです。

ポジティブに考えれば、このタイミングで高い基準を知ることができたのは、自分にとってかなりプラスだったように感じています。なぜなら、この精度をさらに高めれば、もっと効率良く成長していける可能性があるからです。

ただ、この実体験の中で一番に痛感させられたことは、実は自身の知識不足やスキル不足という問題ではなく、もっと他のところにあったのです。

認知的多様性を高めるだけでは不十分…?

【TEGEVAJARO MIYAZAKI】

サポートしてくださっていた方は、今の自分の現状を共有する度に、「まだまだ甘いかな!」という言葉と共に、いくつかヒントを与え続けてくれました。

そして、私は毎回それを"自分なりに"落とし込み、"自分一人で"「こんな感じでどうだろう?」と微調整を続けていました。

その結果、少しずつ変化はあったように思います。しかし、あくまでもそれはこれまでの自分に少しの変化が加わっただけで、結局数ヶ月経っても劇的な変化をすることはなかったのです。

ではなぜ、ヒントをもらっていたのに、劇的な変化を起こすことができなかったのでしょう?
その理由は至ってシンプルで、「自分一人で全て解決しようとしていたから」だと考えています。

知識やスキルをどれだけ頭の中にインプットしても、それを本当に活かすためには、学びを自分ごとに置き換え、まずは実行していくことが重要です。
ただ、実はそれだけでも不十分で、本当に大切なのは、質の高いフィードバックやアドバイスを受けながら実行することだとも考えています。

なぜなら、たとえ知識や経験が豊富な人であっても、一人で考えようとすればするほど、思考が凝り固まり、盲点に気づきづらくなるからです。

しかし、私は見事にそれを体現してしまっていたのです。

そしてこれは自分のこれまでのサッカー人生でも同様で、サッカー選手の成長に必要な情報を色々な分野から集めていたのに、全て自分の頭の中にとどめ、自分なりの解釈で自分なりに行動していたため、質の低いサイクルを回していたことをこの時に痛感しました。

この経験を通して、知識やスキルのインプットをして、認知的多様性が高まった状態に満足するのではなく、そのインプットしたものを実践の場でどう活かすか、もっと言うと実践した後に、どう周りを巻き込んで、質の高い振り返りまで行っていくかが重要だということに気づきました。


ではなぜ、全て一人でやろうとしてしまっていたのか?
大きな理由の1つとして、私の小さなプライド、自己防衛のようなものが邪魔していたのではないかと考えています。

昔から、周りの人と同じような存在になるのが嫌で、ドラえもんの出来杉くんのような完璧な人物像を目指し、「自分は一人でなんでもできるようになる。そして周りからすごいと言われたい!」というマインドで過ごしていました。いつしかそれが悪い方向に向かってしまい、人に頼るという手段を見えづらくし、結局自分の殻にこもっていたように感じています。

今回のA-MAPの失敗を通して、自分の現在地、すなわち自分一人では何もできない(限界がある)ことを心から痛感したことで、本気で変わろうとするキッカケになったと考えています。
もしあの失敗がなかったら、これからも自分一人で何とかしようと思っていたはずで、自ら成長できる可能性を捨てている状態に気づかないままだったと思います。

認知的多様性を高めることは大事です。ただ、たとえ知識や経験が豊富になっても、自分一人で何でもかんでも取り組もうとすれば、必ず盲点が生まれてしまいます。
だからこそ、周りの人からのアドバイスなどを積極的に受け入れ、本当の意味で多様な視点を持てている状態が大切だと感じています。

ぜひ、私をしくじり先生として一つの参考にしてほしいと思い、まとめてみました。


ということで、今回はアスリートとしての認知的多様性の落とし穴について整理してみました。
そして次回は、サッカー界と他業界(分野)を分断している3つの要因の考察と、この記事の結論をまとめています。第3回に続く。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

元プロサッカー選手の山内貴雄やラグビー元日本代表キャプテン廣瀬俊朗らが理事を務める一般社団法人アポロプロジェクトは、アスリートの価値を最大限に高め、その価値を社会へ還元するプラットフォーム「アスリートオープンイノベーション構想」の実現を目指し2020年に設立。様々な競技の現役・元アスリートが学ぶ実践的マインドセットプログラム「A-MAP(株式会社ビジネス・ブレークスルーと共同開発)」の企画・運営と、アスリート達による社会課題解決のアクションに対し伴走支援を行なっている。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント