子どもの社会性も育つ「楽天イーグルスアカデミー」ってどんなところ?
【(C)PLM】
アカデミーには「ベースボールスクール」と「チアダンススクール」の2つがあり、ベースボールスクールでは私のような元プロ野球選手などがコーチを務めて、小学1年生から中学3年生までの子どもたちを指導しています。楽天生命パーク宮城の室内練習場を会場とする仙台本校の他にも、宮城県内外にサテライトがあります。
小学生は低、中、高学年に分かれていて、それぞれに年度のカリキュラムを定めています。1年間で全30回以上の講義があり、キャッチボール、捕球、スタンドティー、守備のフォーメーションなど、基本から実践まで毎回テーマを決めて指導にあたっています。通常のクラスに加えて、よりレベルの高い技術を学びたい子どもに向けたハイレベルクラスやスペシャルクラスも設けています。
【(C)PLM】
スクールの技術指導には、大きく2つの目的があります。1つは「子どもたちの可能性を広げること」、もう1つは「東北の野球技術の向上」。コーチ陣は今よりも野球が上手くなって、野球を好きになってほしい気持ちで子どもたちを教えています。投げ方であれば、より強く正確に、怪我をしにくいフォームを身に付けてもらいたいですし、打撃ではより強く遠くに打球を飛ばせるように知識や技術を伝えています。スクールをきっかけに少年野球チームに入ったり、中学生以降でも野球を続けてくれたりしたら、これ以上の喜びはありません。野球の楽しさを知るには、チームに入って仲間たちと頑張るのが理想です。そのための架け橋になれればと思っています。
【(C)PLM】
スクールではもちろん、子どもたちに野球が上手くなってもらうための指導をしていますが、技術の習得以上に大切にしていることがあります。人間力の育成です。スクールでは全てのクラスで「しっかり返事をする」、「きちんと挨拶をする」、「素早く行動する」、「話を聞く」の4つを約束事にしています。
なぜ、声を出すのか、返事をするのかについては子どもたちに話をします。返事は「はい」だけではありません。わからなかったら「いいえ」と答えて、意思表示することが大切と伝えています。理解していないのに練習するのは、子どもたちのためになりません。「はい」、「いいえ」で答える質問だけではなく、子どもたちが発言しやすい聞き方をするのも、アカデミーコーチに代々引き継がれている方法です。子どもたちの考えを把握するために、コーチから一方的に話さず、必ず会話のキャッチボールになるようにしています。
挨拶をしたり、声を出したりするのが苦手な子どもたちには、できるだけ大きな声を出す訓練、練習をしようと声をかけます。野球は声を出しながらやるスポーツなので、どんな場面でも大きな声を出せるようになると、上達する大きな一歩になります。
ただ、子どもたちに声を出すように強制はしません。声を出しやすい環境をコーチがつくります。例えば、ノックで「いくよ、いくよ」とノリよく声をかけると、子どもたちが「さあ、来い」と応えやすくなります。アウトカウントの確認といった出しやすい声から少しずつ口にできるよう促すなど、子どもに合った方法を探していきます。
【(C)PLM】
小学校3、4年生でスクールに入会して、最初は借りてきた子猫のように、うんともすんとも反応がなかったのに、気付いたら自発的に挨拶できるようになる子もいます。そうやって、野球の成長以上に、挨拶や礼儀に変化が表れると喜びを感じます。実際に保護者の方からも、挨拶ができる子どもになってほしいという要望は多いです。スクールの指導方針にしている「子どもの可能性を広げる」というのは、野球の技術にとどまらず、社会性や考える力といった野球を通じて得るものも含まれています。
【(C)PLM】
実は、今年の夏に東北勢で初めて甲子園の頂点に立った仙台育英学園高校の選手には、スクールやジュニア出身者が多いです。仙台育英の現在の2年生は、私が現役を引退した2016年にアカデミーコーチとしてともに過ごした選手たちなので、特に思い入れが強く、顔も名前もよく覚えています。東北勢の甲子園初優勝は、私たちアカデミーコーチにとっても励みになりました。スクール目標に掲げている「東北の野球技術の向上」が、これ以上ないかたちで実現しました。
スクールには、アカデミーコーチを補助するアシスタントがいます。主に地元の大学生がアルバイトで務めていますが、そのなかには、かつてのスクール生もいます。仙台や東北にイーグルスが根付いていると感じるのは、充実感に浸る瞬間です。コーチ陣は野球の指導を通じて子どもたちの将来を明るくしたり、地域の輪を広げたりしていければと思っています。
取材・間 淳
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