私のミッション・ビジョン・バリュー2022年第5回 後藤田亘輝選手「Gold or just a stone〜磨けば輝く〜」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが2020年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

今季も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2022年第5回は後藤田亘輝選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.今回のミッション・ビジョン・バリュー作成のための面談は、どのぐらい行いました。
「5回くらい。1回1時間ぐらい話をしました

Q.自分の原体験や思いについて、第三者に話をする機会は今までありましたか?
「大学の時に自己分析をしている時期がありました。でも、自分でやっていただけなのであまり整理されていない感じがあったので、今回人に聞いてもらうことで、より深堀できたかなと思いました」

Q.実際、面談を重ねてみていかがでしたか?
「いい思い出も悪い思い出も、自分の中で大きい体験をしてきたことを思い出せて楽しかったですね」

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Q.それでは、一つ一つ話をお聞かせください。まずミッションですけど、「挑戦する姿を見せることで勇気付け自信を与える」。この言葉の思いは?
「自分はテクニックに自信があるようなうまい選手ではないと思っています。だからこそ、見ている人に戦っている姿とか、走っている姿とか、そういうガムシャラさを見せて、勇気づけて、みんなが挑戦できるような思いにさせることができたらうれしいなと思って、この言葉をミッションにしました」

Q.学生時代からそういう思いがあったのでしょうか?
「昔からうまいタイプの選手でなかったので、戦うところが自分のよさだと思って、言い続けた結果、こうやってプロになることができました。やっぱりそういう部分は曲げないことが大事だなと思います」

Q.高校では日本一を経験しました。それもやっぱり挑戦し続けた結果だったのでは?
「高校2年の時に全国高校サッカー選手権大会の決勝で負けて、そこから来年は絶対選手権で優勝しないとダメだという雰囲気もあったし、そういう雰囲気で挑戦することをやめなかったから、結果を出すことができたと思いますし、今にもつながっていると思っています。そこがすごく大きなポイントでした」

Q.大学では大学3年の時に関東リーグから都リーグに落ちてしまい、1年で関東リーグに昇格するという使命を背負って戦いました。その結果、昇格という結果を成し遂げたことも大きな挑戦だったのでは?

「青山学院大学の歴史を壊してしまったので、逆に失うものがなかったという立場の中で挑戦することができました。本当に上を見るしかなかった。降格した時はすごい絶望しましたけど、本当にやるしかない状態だったので、それが原動力になったかなと思います」

Q.昇格する難しさを感じたのでは? 様々なプレッシャーとの戦いだったと思います。
「関東リーグよりも下のカテゴリーでの戦いでしたけど、やっぱり昇格という結果を出すのは難しかった。本当に少しも気が抜けない試合が続きました。都リーグであったけど、そういう戦いを経験できたことは自分にとって大きな財産だと思っています。今の水戸ホーリーホックの状況もそうですけど、内容どうこうより結果という部分に本当にこだわって戦っていました。内容が悪い試合でもセットプレーで点を取れるチームではあったので、そういう勝負強さの大切さを昨年1年であらためて学びました」

Q.都リーグからプロになれた経緯は多くの大学生に希望や勇気を与えたと思います。
「都リーグの選手でもプロになれるということを証明することができたと思います。都リーグの選手でもプロを目指している選手はたくさんいたので、そういう人たちが僕の背中を見て、プロを目指してくれるようになってくれたらうれしいと思いますね」

Q.後藤田選手自身は、都リーグでプレーしていてもプロになる目標をぶらさなかった?
「ちょっと諦めかけた時は正直ありました。やり続ければ、絶対に誰か見てくれていると思っていました。諦めないで本当によかったと思います」

Q.プロになっても挑戦し続けている思いを抱いているのですね。
「プロの世界は挑戦しなかったら試合に出られないし、選手として潰れるような場所だと思っています。失敗はあると思うけど、挑戦し続けて少しでも何かをつかみながら成長していきたいと思っています」

Q.後藤田選手にとって『挑戦』とは?
「何回ミスしても立ち上がるという姿勢。失敗し続けて、そこで挑戦をやめたら、その次に成功があるかもしれない。続ければ、絶対に成功はあると思うので、挑戦し続けることが大事だと思います」

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Q.次はビジョンについて聞かせてください「日常の幸せをみんなで」。この言葉の思いは?

「高校では寮生活しましたし、大学では一人暮らしをさせてもらいました。僕にとっての当たり前は、両親が支えてくれてくれていたからあるものだったんです。サッカーを好きにやらせてもらいました。でも、僕のようにしてもらえない子どもたちもいると思います。僕が当たり前のようにしてもらってきたことが、世の中の当たり前になればいいなと思って、この言葉を選びました。そういう願いを込めました。サッカーだけでなく、誰もが自分の好きなことに取り組めるような社会になってもらいたいと思います」

Q.今まで周りで経済的な問題など外的な要因で今夢を諦めてしまった人を見てきたのですね。
「そうですね。やっぱりそういう現実を目の当たりにすることはありました。その中で、僕は本当に好きにサッカーをさせてもらう生活ができてきたので、両親に感謝しています」

Q.「みんなで」ということを後藤田君は大切にしているのですね。
「青山学院大学で都リーグに降格した時もそうですし、そういうタイミングでサッカーを嫌いになりかけた時もありましたが、チームメイトがいたからこそ、サッカーを嫌いにならず、続けてくることができました。周りの環境は僕にとってすごく大事だったと思います」

Q.チームや組織にはいろんな考えを持った人がいます。、それでも、みんなが同じ方向に向いたチームが強いんでしょうね。
「本当にそうだと思います。それぞれいろんな境遇がある中で目指すものは一緒。高校の時もいろんなところから人が集まってきたチームでしたが、それでも日本一という結果を出せたので、そこに向かう気持ちが一緒ならば目標も成し遂げられると思っています」

Q.誰もが目標を目指せるような社会になるにはどういったことが必要になると思いますか?
「そこはまだ分からないです。あくまで希望ですし、僕一人でなんかできるものでもないと思っています。その中で僕はそういう願いを持ち続けたいと思っていますし、そういう風に社会が進んでいったらうれしいと思っています。そのためにもそういう思いを持ち続けることが大事だと思いますし、発信していくことも大切だと思っています」

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Q.次はバリューについて聞かせてください。4つありますね。1つ目が「挑戦し続ける」。先ほども話をされましたが、もう一度バリューとしてのこの言葉の説明をお願いします。
「自分が日本まで大切にしてきたことなので、これからもぶらさずにやっていきたい。自分が挑戦し続けることで、周りの人も影響を受けるだろうし、自分としても価値が高まると思うので、これからも大事にしていきたいと思っています」

Q.今までの経験があるからこそ、これからもどんな境遇になってもぶれない自負はあるのでは?
「それはあります。折れずにやり続けることによって必ず結果がついてくることは、今までの体験で分かっているので、これからも続けていきたいと思います」

Q.2つ目は「徳を積む」。こちらの言葉の思いは?
「ごみをを拾ったり、トイレのスリッパを揃えたりすることによって、自分としてもいい気分になれるし、それを見た人もいい気分になれると思う。そういうちょっとしたことを積み重ねれば、何かいいことが起こるんじゃないかなと」

Q.そういうことをしようと気づいたきっかけはあるのですか?
「やっぱり前橋育英高校の山田耕介監督から教わった部分ではあります。凡事徹底の大切さを常日頃から言われていて、小さいことを積み重ねることで自分にいいことが起きるということを山田監督から教わりました」

Q.その点について何かこだわっていることってありますか?
「選手寮のトイレのスリッパを並べることやゴミ箱が溜まってたら取り替えるといったことは気付いたら、なるべくやるようにしています」

Q.選手寮では当番制というわけではない?
「基本的にユース選手がやってくれることになっているんですけど、気づいたらやるようにしています」

Q.そういうことはプレーにも繋がりますよね。
「自己満足なところもあるんですよ。そういうことをやると気持ちいいですから。それで続けているところもあります」

Q.3つ目は「全力」とありますが。
「何においても全力でやる。ただそれだけです。すべてのことがサッカーに繋がっているとは僕は思っていて、リラックスしている時も全力でリラックスしようと思っています」

Q.趣味にも全力で取り組むんですか?
「遊ぶ時も全力で遊びます。そのメリハリが大事だと思っています。オフの日はサウナに行ったり、キャンプに行ったりしています。オフの日も楽しめれば、サッカーにも全力で取り組める。リフレッシュすることも大切だと思っています。オフの日にずっと家にいるタイプではないですね」

Q.最後は「一所懸命」。
「『一生懸命』ではなく、『一所懸命』にした意味がありまして、一つひとつの場所で全力を出し切ることにこだわっています。ピッチ上でも、ピッチ外でも、オフの時に行った場所でも、全力を出し切るようにしています」

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Q.最後にスローガンについて聞かせてください。「Gold or just a stone〜磨けば輝く〜」。この言葉に込めた思いは?
「以前、洋服屋さんでたまたま見つけた言葉なんですよ。ただ、その言葉がすごく気に入ったんです。ただの石になるか、磨いてゴールドになるか。僕はゴールドになりたいので、自分を磨き続けようと思って、この言葉を選びました」

Q.この言葉と出会ったのはいつですか?
「大学1年生の時ですね。たまたま入った洋服屋さんで見た雑誌に書いてあったんです。その時にこの言葉を好きだなと思って、それ以降ずっと自分の中で大切にしています」

Q.今回の面談で作った言葉ではなく、元々大切にしていた言葉なんですね。
「そうです。面談の時に好きな言葉は?と聞かれた時に、この言葉を選びました」

Q.今までどのように磨いてきましたか。
「サッカーの部分だと、僕の持ち味であるクロスやサイドでの上下動。そこを誰よりも特筆した部分にするために一生懸命努力してきました。そういう自分の武器を磨けば変われるという意味を込めて、この言葉を選びました」

Q.この言葉と出会って、変わりましたか?
「その辺に落ちている石ころにはなりたくないなという気持ちを持つようになりました。やるからには自分を磨いてゴールドになろうという気持ちで取り組んできました」

Q.たとえば、高校時代のチームメイトは高卒後にプロになったり、大学リーグでも活躍したりしていました。刺激を受けていましたか?
「それは間違いないです。大学の時も高校卒業後にプロになった選手の活躍はずっと気にして追っていましたし、大学時代も1年早くプロ入りが決まった角田涼太郎(横浜FM)からも刺激を受けました。いろんな方面の活躍を見ながら、俺もまだやれるぞっていう気持ちでやってきました」

Q.努力を怠ればただの石ころになってしまう。自分を律する際に大きな言葉になっていたのでは?
「そうですね。僕は『自分のために』というより、『誰かのために』という思いを大切にしています。今まで僕を支えてくれたのは家族ですし、地元の友達もずっと応援してくれていました。苦しいことがあったら、『自分のために』というより、そういう人のために頑張ろうと思ってやってきたところがありますね」

Q.中学卒業後に地元を離れましたが、それ以降も友達が応援してくれていたのですね。
「しょっちゅう連絡してくれたりしていましたし、選手権の時も着ぐるみを着て応援に来て来てくれました。会場でちょっと話題になっていましたね(笑)。そういう人がいるから、絶対にプロになりたいと思っていました。自分の思いよりそういう人たちの思いに乗せて頑張ってきました」

Q.そういう思いが後藤田選手を奮い立たせてきたのですね。ここからリーグ最終盤に突入します。これからの意気込みを聞かせてください。
「リーグ戦も残り8試合。本当に一つも落とせないような状況なので、絶対J1参入プレーオフへ行くために気を抜かないで、さらに高みを目指して頑張っていきたいです」

Q.第34節仙台戦では大卒ルーキーがはじめて一緒に先発出場を果たしました。
「チームが強くなるためには、僕たちみたいな若手がしっかり底上げしていかないと上には行けないと思うので、そういった部分で僕らがもっとチームに貢献できるようになったらチームも強くなるんじゃないかと思っています。まだプレーオフ進出の可能性が残っています。まだクラブとして見たことのない景色を見るために戦っていきたいと思います」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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