【DLファイナル開幕!】北京五輪銀メダリスト・朝原宣治さんに聞く!ダイヤモンドリーグで戦うということ
【フォート・キシモト】
海外転戦の難しさや北口選手・三浦選手への期待を語る
年間を通じてのハイレベルの記録と順位が求められるDLでの成績は、オリンピックや世界選手権と同様に、まさに「超一流アスリートの証」として高く評価されます。ここでは、トップアスリートとして活躍した現役時代に、拠点を海外に置いて競技に取り組み、当時最高峰とされていた競技会をはじめとして豊富な海外転戦を経験してきた朝原宣治さん(大阪ガス、日本陸連理事、北京オリンピック男子4×100mリレー銀メダリスト)に、自身の経験を振り返っていただきながら、DLファイナルに出場することの難しさや価値の高さ、両選手への期待を伺いました。
◎海外に移り住んでグランプリを転戦
海外に拠点を置くといっても、当時はあまり選択肢がない状況でしたが、「行くならヨーロッパがいい」ということで、大阪ガス入社後の1995年からドイツのシュツットガルトに移住して、当時、州のプロコーチで、ドイツNo.1走幅跳選手のコーチであったアルフレッド・ラップコーチの指導を受けるようになりました。ドイツを中心にヨーロッパの各大会を本格的に転戦するようになったのは、その年の冬を越えて、1996年のアトランタオリンピックが終わったあたり。そのころからヨーロッパの競技会シーズンに合わせた生活が根づいてきましたね。1997年には、室内競技会や日本での大会も含めて、年間に30を超える競技会に出場しました。当時はまだ走幅跳をメイン種目としていましたから100mと両方に出ていました。大きな大会、小さな大会といろいろありましたが、多い時期には週に2〜3試合なんてこともありました。
【フォート・キシモト】
◎世界の流れに身を置いて、戦っていくことの面白さ
ドイツを拠点にしていたころは、今のダイヤモンドリーグに相当する大会はグランプリと言われていました。僕は、ケガで休養したりする期間を経て、2001年からアメリカ(テキサス州オースティン)に拠点を移し、転戦は100mをメインに据えて取り組むようになりましたが、当時、最高峰に位置づけられていたのが1998年から始まったゴールデンリーグと呼ばれる大会で、これに並行する位置づけでスーパーグランプリ、グランプリ、グランプリII(ツー)などがありました。
グランプリとか、ゴールデンリーグに出場するというのは、本当に大変なことなんです。ドイツ時代は日本人のコーディネータに、アメリカ時代はオランダ人の代理人にエージェントを務めてもらって、出場できる大会を探していました。まずは小さな試合に出場することからスタートして、そこで勝てるようになると中くらいのレベルの試合に、そして、そこで目立つような活躍ができるようになってくると、グランプリやゴールデンリーグでレーンをもらえるチャンスが出てくるんですね。最近では、日本でもウェイティングリストが公表されるようになってきましたが、これと同じ。レーンの数が決まっている100mの場合は、予選がなければ8人しか走れません。だからA決勝は無理でも、B決勝のある試合に滑り込めないかとか、そういうアンテナをずっと張り巡らせて過ごしていましたね。ニース(フランス)でグランプリがあったころ(2001年)、試合当日の朝に代理人から電話がかかってきて、「走れるようになったけど来られる?」と言われて、「行きます!」とすぐに出発して、夜のレースに出たこともあります。そういうふうに、滅多に巡ってこないチャンスを逃さないように、いつでも行くという気持ちで過ごしていましたね。
◎ファイナル出場は、自分の「選手としての価値」を示すもの
そういう経験もあるだけに、北口選手や三浦選手がファイナルに出るということは、本当にすごいことだと感じています。オリンピックや世界選手権で勝つのも大変なことだけど、僕たちがやってきた、そういう「プロのアスリートとして転戦し、結果を残す」という観点でみると、ファイナルに進出して、そこで対等に戦えるということは、ものすごく価値があるし、難しいことなんですよね。ダイヤモンドリーグになってからは、ポイントはダイヤモンドリーグでのみ獲得できるシステムになりましたから、まずはダイヤモンドリーグの各大会に出場する必要があります。そこに出場すること自体が大変であるわけで、そう考えると、ファイナルに出ることのすごさがよくわかると思います。
◎若いうちに、ぜひ、世界に挑戦してほしい
北口選手や三浦選手だけでなく、中距離では田中希実選手(豊田自動織機)が活躍していますし、110mハードルでも泉谷駿介選手(住友電工)を筆頭に世界レベルの記録を出してきています。走幅跳では橋岡優輝選手(富士通、ダイヤモンドアスリート修了生)も十分に戦える水準の記録を持っていますし、もちろんサニブラウンアブデルハキーム選手(タンブルウィードTC、ダイヤモンドアスリート修了生)は、すでに海外に拠点を置いて、世界でもトップクラスとして知られるチームに入って活動していますし、ほかにも多くの選手が海外にベースを置いてトレーニングしたり、試合に臨んだりするようになってきています。
僕は、自分が海外に出たのは社会人になってからなので、「もっと早くから出ていれば」ということを反省しているんです。サニブラウン選手のように大学から海外に出ていくことができれば、経験の幅やチャンスもぐんと広がります。もちろん価値観は人それぞれですから、海外に出ていくことがすべてではないけれど、選択肢はたくさんあったほうがいいと思いますね。
◎北口選手と三浦選手の活躍に期待
北口選手は、ダイヤモンドアスリートだったころに、私が当時のプログラムマネジャーを務めていたので、よく知っています。これから先、どうするべきか。海外に行くべきかといったような話もしていたので、ちょうど彼女が将来の方向性などを悩んでいたころだと思うのですが、そのときに周りにいたのは、僕とか、リーダーシッププログラムを監修していた為末(大)くん(400mハードル日本記録保持者)とかの「海外推し」派(笑)。最終的に、彼女自身が自ら決断して、今の環境を整えていったわけですが、きっとダイヤモンドアスリートとして様々なプログラムを受けるなかで、いろいろな人から背中を押してもらえたのではないかと思います。
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【朝原宣治さん プロフィール】
【フォート・キシモト】
日本陸上競技連盟理事
2008年北京オリンピック男子4×100mリレー 銀メダリスト
男子100m元日本記録保持者
【ダイヤモンドアスリート】特設サイト
>>https://www.jaaf.or.jp/diamond/
■第8期認定アスリート
クレイアーロン竜波(テキサスA&M大学)
中村健太郎(日本大学3年)
出口晴翔(順天堂大学3年)
藤原孝輝(東洋大学2年)
柳田大輝(東洋大学1年)
アツオビンジェイソン(福岡大学2年)
佐藤圭汰(駒澤大学1年)
西徹朗(早稲田大学1年)
▼サポート企業へのインタビュー
〜豊かな人間性を持つ国際人への成長を支えるために〜
https://www.jaaf.or.jp/news/article/15260/
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