島田譲「僕がサッカーをする理由 〈後編〉」

チーム・協会

【ⓒALBIREX NIIGATA】

ゴールのない僕の学び

【島田譲】

僕は幼い頃から、母に「サッカー馬鹿には絶対なるな」と言われて育ったことや、元々安定志向でビビりな性格もあり、チーム活動以外の空いた時間を使って、引退後のキャリアの為に自己投資をしてきた方だと思います。

読書は昔から好きですし、オンラインで英会話の授業を受けたり、動画サービスでビジネスについて学んだり、正直何の為になるのか分からなかったけど、自分のキャリアの為にやっておいた方が良さそうなことに時間とお金を使ってきました。

しかし、試合に勝つという目標が無ければ練習に身が入らないように、何の目標も無い僕の学びは極めて効率が悪く、何をやってもモチベーションが長く続きませんでした。

また、これまで就活やバイトの経験すらない世間知らずの僕には、ビジネスや英語を学んだ先にどんな未来があるのか、全く想像もつきませんでした。学びをどうやって社会に還元していくのか、そのイメージが湧きませんでした。

僕の学びはインプット重視で、読んで満足、見て満足。
いつも練習のための練習をしているような状態でした。

A-MAPとの出会いと、”目的”に至るプロセス

【島田譲】

そんな事に課題感を持ちはじめた時に僕は『A-MAP』に出会いました。

『A-MAP』は2020年に設立されたアスリート・元アス リート向けの実践的マインドセットプログラムです。

これまで僕がしてきたようなインプット重視の学びではなく、徹底的に自分自身と向き合い、社会とつながるマ インドを身につけ、実際に社会に向けてアクションを起こすチャレンジが出来るアウトプット重視の学び舎です。

結論から言うと、僕にはこの環境がぴったりで、ここに飛び込んで本当に良かったと思っています。 ただ、安くはない受講料を払うために妻を説得する事と、夜のオンラインミーティングに参加するために娘を早く寝かしつける事には大変苦労しましたが(笑)

僕にとって『A-MAP』での1番の大きな収穫は、「サッカーが楽しくなったこと」です。職業サッカー選手というと、「好きなことを仕事に出来ていいね」と言われることが多いです。それを否定はしませんし、サッカー選手は本当に幸せな職業だと思います。でも大好きなサッカーが仕事になり、毎週のように目に見える結果を突き付けられ、周りからの評価に晒され続けていると、多くの選手にとっては、子供の頃のように純粋に楽しいだけのサッカーではなくなります。 稀に、人の目線や他人の評価が全く気にならず、とにかく上手くなることしか考えてないようなサッカー小僧も存在します。僕も何人かそんな選手とプレーしたことがありますが、僕はそんな選手が本当に羨ましく、彼らには一生敵わないと感じていました。

ですが、この記事の前編で先述したように、僕は目標の先にある”目的”が明確になり、何のためにプレーするかという”軸”が出来たことで、結果や評価に囚われすぎることなく、これまで以上にサッカーを主体的に楽しめるようになりました。

僕はA-MAPのおかげで、この"目的"が明確になりまし た。

A-MAPではサーベイによる自己調査、同期やメンターとの対話によって、自分の強みや課題、自分は何者で、キャリアにおける軸やありたい姿はどんなものなのかを内省し、言語化していく「自己認識」のプログラムがあります。

最初は僕自身も自分の事を自分自身がこんなにも知らなかったのか。という絶望的な状態からスタートしました。

そこから過去の自分の原体験を深堀りしたり、同期やメンターとの対話を繰り返しながら、未だに完全とは言えませんが、少しずつ自分に対する理解が深まったと感じています。自己認識を深めるためには、他者の客観的な視点や痛みを伴うフィードバックが不可欠であることも、僕にとっては新しく貴重な気付きとなりました。

さらに自己認識と並行して、A-MAPではピッチ大会やグループでのオンラインイベントを企画・実行し、プレー以外で自分の価値を社会に届けるチャレンジをしたり、昨年からは個人的にSNSでの発信によって、自分の想いを言語化してアウトプットする機会を意識的に増やしました。

すると、どうやら僕は自分の経験や思いを誰かに話して伝えたり、行動で見せたり、書いて届ける事で、誰かの明日が少しでも良くなったり、笑顔になったり、頑張る活力になったり、何かしらの良い影響を与えられる事に、大きなやりがいを感じるのではないか、という気付きを得ました。

そんな中で前編に書かせてもらった決定的な原体験が起こりました。(気になる人は是非読んでください。笑)

僕の中のプレーする"目的"であり、人生の"軸"が確かなものになった瞬間でした。

現役の競技人生に活きる学びを

【ⓒALBIREX NIIGATA】

この"目的"を見つけるまでの一連のプロセスは、僕がサッカー界という閉鎖的なコミュニティから『A-MAP』という未知の世界に飛び込み、多様なジャンルの方々と対話し、その価値観に触れ、愛のある厳しい指摘やフィードバックを頂きながら、徹底的に自分と向き合った結果です。

僕はA-MAPで学ぶ事で、現在の選手としてのキャリアに 本当に良い影響を受けました。

だから僕は是非多くのアスリート・元アスリートに『A-MAP』の存在を知ってもらいたい。
自分と徹底的に向き合い、キャリアにおける目的や軸を見つけ、社会と繋がるアクションを起こしてほしいと思います。
その学びは必ず今の競技人生にもプラスに働くはずです。

※書かされている訳ではありませんよ!(笑)。

競技から離れて学ぶ事には、様々な不安や葛藤があると思います。でも離れてみないと分からない事も、山ほどあります。確かに同じ競技をする似た価値観を持つ仲間といる方が気楽です。僕もずっとそうでした。違うジャンルの全く違う価値観を持つ人達と話をするのは、緊張するし、横文字多いし、最初は大きな痛みを伴います。でも僕達アスリートは、これまでに何度も敗北や挫折を経験し、大きな痛みを伴いながらも、それを乗り越えて成長し、今のキャリアを築いてきたはずです。

だから勇気を持って、そこから飛び出してみて欲しいと強く思います。

そして最後に誤解がないように。

当たり前ですが、僕はプロの選手としてチームの目標と結果に、何よりも誰よりも拘り続けます。
でも、何のために勝ちたいのか。ここに自分なりの答えがあることで、目標や結果を追求するだけでは到底生み出せないような大きなエネルギーを生み出せるのだと思います。

この”目的”から生まれるエネルギーを僕の最大の武器として、今後の選手としてのキャリアを、そこから続く長い長い人生を、自分の意志で歩んでいきたいと思います。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

茨城県水戸市出身。 早稲田大学を卒業後、ファジアーノ岡山でプロキャリアをスタート。4年目の契約満了を経て、V・ファーレン長崎に移籍。長崎ではJ1昇格とJ2降格を経験する。 2020年からはアルビレックス新潟に所属。今年でプロ10年目の節目を迎える。 2021年にはアスリート向けのマインドセットプログラム『A-MAP』に参加する。その集大成として、クラブパートナー企業、地域の子供達を巻き込んだ「アルビジョブスク」を発足。新潟の子供達にクラブパートナー企業の職業体験やキャリア教育を行なっている。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント