【学生スポーツ最前線】リンクに立ちたい・・・。秋田大学アイスホッケー部のコロナとの闘い

チーム・協会

【写真提供:秋田大学アイスホッケー部】

リンクを縦横に動き回り、激しいコンタクトを繰り返す。心身の強靱さ、敏捷性、判断力。アスリートとしての総合力が求められる「氷上の格闘技」。それがアイスホッケーだ。
秋田県秋田市には県内唯一の大学チームがある。1988年創部の秋田大学アイスホッケー部だ。

キャプテンは4年生の諸星潤也(もろほし・じゅんや)。競技歴は「2歳から」という筋金入りのホッケーマンが、3年時から2季連続でチームを率いている。
コロナ禍2年目の2021年は、諸星キャプテンにとって苦悩の季節だった。

4月になって新入部員を迎えたが、県内のリンクがオープンする10月までの約7ヶ月間、氷上練習が一度もできなかったのだ。

コロナ禍以前は春夏もリンクに立つことができていた。月に2、3回は氷上練習ができる岩手県盛岡市、宮城県仙台市に赴き、目標である11月のインカレ予選へ向けてスティックを使った練習ができた。しかしコロナ下では――
「県外移動の練習が制限されました。届け出を出せば県外に行けるのですが、秋田県に戻ってきたら14日間自宅待機をしなければいけません。そうなると授業を休まなければいけないんです」
 
届け出を出して認められれば、県外練習はできる。しかし秋田県に戻ってきたら14日間の自宅待機をしなければならない。つまり14日間は対面授業に出られなくなる。

また、他者との接触があるアルバイトも自粛しなければならない。学費を捻出している学生にとってはこれも大問題だ。

リンクに立ちたい。そんなアイスホッケー部として当たり前の願いが半年以上、叶わなかった。
それでも秋へ向けて週2回の練習は行った。ただし活動場所は体育館だ。1回は筋力トレーニングやランメニューをこなし、1回は体育館内でのスティック練習に充てた。

これじゃアイスホッケー部じゃなくて陸上トレーニング部だね――。部員がそう愚痴るのも仕方なかった。

秋田県は感染者が少ないのに、なぜ自分たちだけが――。どうしても入ってくる他大学の活動情報に気持ちは塞いだ。
自身もリンクに立てないストレスを抱えながら、諸星キャプテンは苦しんでいた。

長野県軽井沢町に育ち、1998年の長野五輪でアイスホッケーに魅せられた両親の下、なんと2歳からスケート靴を履いた。アイスホッケーなしの学生生活は考えられない。大学卒業後も働きながらクラブチームで活動するつもりでいる。

アイスホッケーが大好きだからこそ、競技を始めた1年生に魅力を伝えきれない、仲間に成長の機会を与えられないことがもどかしかった。

「せっかく大学から『新しいスポーツをやりたい』と言って来てくれた子たち、部員に対して、申し訳ないという気持ちがありました。コロナだから仕方ないと思いつつ・・・。そこの葛藤が一番苦しかったです」
そんな辛い時期に諸星キャプテンが注力したことがある。チームを「居場所にすること」だ。

「アイスホッケーが好きというだけでは厳しいと思ったこともあって、チームを“居場所”にしてもらおうと、何でも話せる雰囲気作りをしました。まず僕から全員に話しかけたり、僕から何でも話したり。キャプテンとして自転車のハブ(車輪の中心部にある回転体)をイメージしています」
競技に費やす時間が減った分、競技以外の時間を充実させ、部員の気持ちを繋ぎとめた。リーダーの細やかな配慮もあって、秋田大学アイスホッケー部の部員同士は仲が良いという。日常的に夕食を食べたり、あるときは田沢湖に出掛けたり、プライベートでも多くの時間を過ごす。

気持ちを繋ぎとめながら、ようやく辿り着いた県内リンクのオープンは10月中旬だった。

しかし最大の目標であるインカレ予選まで、あと1か月もなかった。シーズンの集大成は目前に迫っていたが、チームには氷上での積み上げがなかった。

「正直、練習不足は感じました。コロナじゃなかったらリンクでパスやシュート練習ができていましたが、10月までにリンクで練習が一度もできなかったので、チームとしてのステップがなくなった感じでした。10月時点で『初めてリンクに乗りました』という1年生もいました」

迎えたインカレ予選は2敗に終わった。国立大学を相手に2勝する『国立2勝』の目標は達成できなかった。

試合の様子 【写真提供:秋田大学アイスホッケー部】

 2022年も秋田大学アイスホッケー部は闘っている。

 今年は大学至近の千秋公園で、恒例の桜まつりが3年ぶりに開催された。明るい兆しは見え始めたが、春先から課外活動の禁止などが続く。しかし学生ラストシーズンとなった諸星キャプテン率いるチームのシーズンは始まっている。

「秋田大学アイスホッケー部には自然体でいられる環境があると思っています。部員は何でも相談し合っています。少なくとも僕は全部ぶっちゃけてます(笑)。新しいことにチャレンジしたい人も是非」

 今年も新入生勧誘はオンライン(SNSやZOOM)が主体だ。プロモーションビデオを製作するなどし、雰囲気の良さをオンラインでアピールする。2022年の結末はどうなるか分からない。しかし悔いのない行動はするつもりだ。

アイスホッケー部のみなさん 【写真提供:秋田大学アイスホッケー部】

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著者プロフィール

コロナを機に、競技を止めてしまう学生アスリートを一人でも食い止め、スポーツを通じて“未来”を創りたいと考えております。 デジタルを手段にして彼らが競技継続できるように進路支援やモチベーション向上支援を行い、また、その活動を通じて公平で透明な環境を整備致します。 「スポーツをやってきて良かった」という実感や「これからもスポーツを頑張っていきたい」という張り合いを創り、Nextステージで輝く自立した人財育成を目指します。

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