コロナ禍を克服する欧米スポーツ界。対照的な日本 (前編)
【© alphaspirit】
1. 検証
図1 注釈: *入場者数減少には米国の第一次世界大戦の参戦および激化の影響もあるとみられる 【© 2022 Deloitte Tohmatsu Group.】
● 感染症の歴史を分析すると、パンデミックは既存の変化を加速することはあれ、マクロトレンドを根底から覆すような変化までは起こしづらい傾向が見えた
● コロナ禍で加速した変化にはリモートワークの普及が挙げられ、通勤時間削減に伴い人々の可処分時間が増えるため、スポーツには追い風となり得る。また、揺るぎないマクロトレンドとしては、モノからコトへの消費のシフトが挙げられ、究極のコト消費であるスポーツへの支持は強固である
● 上記2点を踏まえると、興行スポーツはコロナ禍で一時的にはダメージを受けつつも、中長期的には再び人々の支持を得て勢いを盛り返す可能性が高い
● なお、100年前のスペイン風邪禍における野球の米MLB (メジャーリーグ) の入場者数データを見ると、一時的に落ち込んだもののすぐにリバウンドして “超回復” を遂げた (図1) 。その後も、大恐慌・第二次世界大戦・9.11米国同時多発テロ等、大きな厄災で入場者数が減少した後には同様の傾向が見られた
コロナ禍も3年目となり、諸外国では社会の正常化が進みつつある。記事の “答え合わせ” をするためのデータも揃いつつあることから、このタイミングで検証を行いたい。
2. MLB
【© 2022 Deloitte Tohmatsu Group.】
まずは、米MLB (メジャーリーグ) だ。コロナ禍を受け、MLBでは2020年シーズンは開幕延期の末、試合数の大幅削減の上で全試合無観客にて開催された。2021年シーズンも各州のルールに沿った入場者数制限が設けられた上でスタートしたものの、コロナワクチンの普及に伴い、段階的に制限が緩和され、7月5日からは全球団完全無制限となった。2022年シーズンは前シーズンからの流れをそのままに、開幕から完全無制限で実施されている。図2にはMLBの平均入場者数の推移を記載している。2021年シーズンは平均入場者数が18,651人とコロナ禍前の2019年シーズンの28,203人と比較して低水準に終わったが、2022年シーズンは5/8時点の途中経過ながらも25,136人となっており、概ねコロナ禍前の水準に戻りつつあることがわかる。なお、2022年シーズンは労使交渉の難航により約100日もの間ロックアウトが起き、春季キャンプや開幕が遅れる等の結果に繋がった。ファン不在で進んだ労使交渉がファン心理に悪影響を及ぼし入場者数を押し下げた可能性も指摘されており、ご留意いただきたい。
3. 欧州サッカー
Note: 2021の欧州各国リーグ入場者数は2022/3時点の途中経過 【© 2022 Deloitte Tohmatsu Group.】
【© 2022 Deloitte Tohmatsu Group.】
なお、Dortmundの本拠地Signal Iduna Parkの収容人数は81,365人であり、既に満員を達成している状況のため、 “超回復” は構造上起こり得ない。
【© 2022 Deloitte Tohmatsu Group.】
4. 歴史は繰り返す
ここまで欧米の興行スポーツの状況を見てきたが、一方、日本はどうだろうか。後編で探る。
著者:デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
スポーツビジネスグループ ヴァイスプレジデント 太田和彦
◆本文中の意見や見解に関わる部分は私見であることをお断りする。
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