最後まで戦い抜くカイルの決意 「勝った姿を見せるため、全力を尽くす」 #24カイル・ハント

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#24カイル・ハントは昨季に所属した日本の三遠ネオフェニックスを含め10ヶ国以上を渡り歩き、今季エヴェッサに加わった。開幕のシーホース三河との2連戦でいきなり19、20得点をあげ、11月の茨城ロボッツ戦ではシーズンハイの29得点をマークするなど期待された得点力を発揮。そんなカイルの決め技は、リングからやや離れた位置から打つフローターショットだ。ペイントエリアに侵入すると、相手との間合いを計って足を止める。その状態から放ったショットはマークマンの手が届かない高さにふわりと浮き上がり、やがて柔らかな弧を描いて優しくリングに吸い込まれる。

「実は子供のころは、ちょっと背が低い方だったんだ。自分よりも歳上だったり、背が高い相手に対してシュートを決めるために、自然にこのスタイルで放ち始めた。そうすると相手の選手はブロックできないので、子供のころからあのシュートが好きで気に入っていたよ。ある時期から背が高くなったんだけど、そのクセが抜けなくて今でもフローターを打ち続けている。あれはほとんどの選手がブロックできないし、本当に効果的なので身に着けて良かった。試合の映像を見直しても、自分でもすごく感動するキレイなシュートだなと思うんだ」

208cmと彼ほどのサイズがあれば、もっとゴールに接近してパワフルに叩き込むプレーも可能だろう。実際に、そのようなスタイルの選手も少なくない。だがカイルはスマート(=賢い)ゆえ、あえてそうはしない。

「あのフローターショットは、いろいろなシチュエーションで使える汎用性の高さがあるんだよ。相手のディフェンスマンがオフェンスチャージングをねらって構えている場合は、自分からぶつかりに行かず、止まってフローターを打つほうが賢いと思う。そこでしっかり止まってフローターを打つことができれば、自分のコントロール下にある。でもそこで走ってぶつかりに行ってしまうと、相手のコントロール下に入ってしまうからね。フローターはそのほかにも、多彩な場面で使える。だから、僕は好きなんだ」

エヴェッサの背番号24のユニフォームを着て戦った最初のシーズンが、間もなく幕を閉じようとしている。振り返ればチームは故障者の続発や収まらぬコロナ禍に見舞われ、彼自身もケガで中盤戦にいくつかの試合を欠場。チームにとっても、そしてカイルにとっても、まさしく困難が相次いだシーズンだった。

「本当に、そうだね。控えめに言っても、すごく障害の多いシーズンだった。そのなかでも全員が前に向かって練習をして、自分たちのできる最善を尽くす姿勢を持ち続けた。そのことに自分自身も、またチームに対しても誇りに思っている。残りの試合もわずかだけど、変わらずハードにプレーをし続けることを約束するよ」

チームの大黒柱であり、スコアリーダーでもあった#25ディージェイ・ニュービルが4月上旬にケガで離脱して以降、自らのプレーへの意識が変わった。まずは、得点に関して。今季の1試合平均得点は14.1だが、ディージェイ離脱後の10試合に限ると17.7と数字が向上している。

「ディージェイはリーグのなかで、ずっとスコアランキングの1〜2位であり続けた選手だからね。チームにとってディージェイがいないのは、スコアの部分で大きな影響がある。だから僕はチームのために得点することを、以前よりも高く意識している。だけどディージェイが抜けた穴を、だれかひとりで補うことは、はっきり言って不可能だ。バスケットボールはチームスポーツなので、残っている選手が一丸となって、より良い試合をするしかない。厳しい状況が続いているけど毎試合、次に向けてできる準備を全力でやっているよ」

もうひとつは、キャリアを重ねた選手としてチームをまとめること。

「ディージェイはチームのなかで、リーダー的な役割を担っているひとりだった。その代わりを全部できるとは言えないけど、個人的にはもっと声を出して、チームメイトと話をしていこうとしている。僕の性格から、これまでは静かになってしまうこともあった。だけどケガ人が多い今のように困難な状況では、自分が周りを鼓舞していかないといけないと考えている。ひとりひとりがステップアップする、自信を持つ。そのためにも、僕の声がかなり大きな役割になるだろう。だからこそ、僕は積極的にリーダーシップを発揮していこうと思ってやっている」

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コート上でヒートアップする姿を見せず、チームのなかで静かになってしまうこともあるという。目の前でインタビューに答える姿も、物静かな印象を受ける。普段のカイルは、どんなキャラクターなのだろうか。

「そのときに誰といるか、どういう状況かでも変わってくるけど、静かなときもあれば逆にうるさいような、集団のなかで目立つような人間のときもあるよ。オンコートではいろんなことが同時に起こっていて、その状況を見極めないといけない。だからつねに周囲に気を配っていようと思って、意識的に落ち着いて静かな状態でプレーしている。でもオフコートは、自分ではけっこう面白い人間かなと思っていて自分でも笑らうし、人を笑わせるジョークを言ったり、良い雰囲気を作るのが好き。誰といるとかにもよるけど、いろいろな面があると思うよ」

はにかんだような笑顔を交えて話す様子から、シャイな性格なのかとも思ったが、本人曰くはそうでもないそうだ。

「人間観察というか、まず周りの状況を見て判断するところがあるので、そう見られるかもしれないけど、自分ではあまり人見知りではないかなと思う。周りの人もけっこう自分に話しかけてくれるし、そうなると楽しく話しているよ。僕は海外でのプレー経験が長くて、周りがなにを言っているかわからない、言葉が通じないことに慣れている。そういう状況で周りを観察しないといけないような場面が多くあって、それが習慣になっているのかもしれないね」

残りは今節も含めて3試合。シーズンのフィニッシュに向けて彼は、コート上でファン・ブースターにどんな姿を見せるのか。

「いちばんは勝ったシーンを、ファンのみんなに見てもらいたい。そのために僕はチームの助けになることを、全力でやっていく。僕は個人でどうプレーするかより、チームのためにプレーする選手。自分にとってもファンのみんなにとっても、もっとも大事なのはチームが勝つこと。それに向かって全力を尽くし、40分間戦い抜いたあとに勝利を手にしている姿を見せたい」

先の質問を最後にインタビューを終えようとしたところで、彼が伝えてほしいことがあると切り出した。

「ファン・ブースターのみんなに、いつも感謝していると伝えたいんだ。みんなはホームゲームはもちろん、アウェーの試合にも来てくれていることに僕は気付いている。みんな本当に、素晴らしいファン・ブースターだ。またインスタにも温かいメッセージや、僕を勇気づけてくれるメッセージを送ってくれるのもうれしい。それに恩返しできるように、みんながこれからもサポートしたい選手だと思えるように、僕はこれからもハードにプレーしていくことを誓うよ」

黒いユニフォームに込めた誇りとともに、カイルは最後まで力強く戦い抜く。
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著者プロフィール

2005年にクラブ創立。七福神のお一人で商売繁盛の神様である「戎様」を大阪では親しみを込めて「えべっさん」とお呼びするところから、 人情・笑い・商売の街大阪を活気づける存在であることを願い「大阪エヴェッサ」と命名。 同年にスタートしたbjリーグで開幕から3連覇を成し遂げる。 2016年9月に開幕した男子バスケットボールの最高峰・Bリーグでは、ホームタウンを大阪市とする大阪唯一のクラブとしてB1に参戦。

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