運動に対する基本的心理欲求と運動経験との関連

日本スポーツ産業学会
チーム・協会

【イメージ写真】

ライフステージに応じた健康づくりでは,栄養・食生活や休養・睡眠などの分野とともに運動や生活活動を含む身体活動が重要な役割を担っています.WHOでも各世代別に頻度・時間・強度などを示して運動の実施を推奨していますし,地域や職場における環境・社会支援の改善なども行われています.しかし運動の重要性は理解しているが行動に移せない人々も多く,同じような状況下でも行動の生起には個人差があることも事実です.
この個人差の要因のひとつとして心理的な側面が考えられますが,その中でもとくに動機づけは身体活動と高い相関関係があり,動機づけの高低が身体活動の潜在的な決定因子とみなされています.

本研究では,動機づけに関する自己決定理論に基づき,運動に対する三つの基本的心理欲求(有能感,関係性,自律性)を測定する尺度を作成し,各基本的心理欲求がどのような運動経験と関連をもつのかを明らかにしました.

結果として,これまでのように対象者を限定することなく,運動行動に関連する心理的要因を測定する一定の信頼性と妥当性を有する尺度を作成することができ,より的確なアセスメントが可能になることから,健康と密接に関連した運動行動の生起・継続を目指すプログラムの提供に繋がると考えています.

また性差と年齢差の検討から,運動行動に関連する心理的要因としての有能感・関係性・自律性は,女性よりも男性の方が高く,総じて30歳代〜60歳代の人よりも18〜29歳の人の方が高いことが認められました.

さらに運動経験との関連や他者との関りについての検討から,父母やきょうだいからの影響は限定的であり,相対的に友人や部活動の影響の方が大きい傾向がみられました.つまり,運動に対する心理的欲求は,友人との交遊等でポジティブな経験をすることや,学校やスポーツクラブでの自律的な支援を受けたことで充足感が高まることが示唆されました.
したがって,このような他者や活動領域の重要性を特定できたことによって,支援方略や介入行動の提言にも寄与することが期待できると考えています.

堀井 大輔 大阪電気通信大学
杉山 佳生 九州大学
金田 啓稔 大阪電気通信大学
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著者プロフィール

日本スポーツ産業学会は「スポーツ産業の健全な発展に寄与できる学会」「産官学の共同による開かれた学会」「国際性豊かな学会」等を中心テーマとし、平成2年に設立されました。 当学会が運営している「SPORTS BUSINESS ONLINE」は、論文誌「スポーツ産業学研究」、情報誌「Sports Business & Management Review」に続く第3の情報媒体として2021年に開設したWebジャーナルです。 コンセプトは「スポーツビジネスのあらゆる情報が集結するオンラインジャーナル」。 本学会が主催するセミナーや学会大会などの情報(案内・プログラム・講演録)や、論文記事情報などを中心に様々な情報を発信しています。

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