フィギュアスケート初級者を対象にしたオンライン指導のためのオフアイストレーニングプログラムの設計と評価
【イメージ画像】
そこでオフアイストレーニングの指導に オンラインを活用することで, 上述した課題を解決することができ, どこにいても質の高い指導を受けることが可能になると考えました.
本研究の目的は,成人フィギュアスケート初級者を対象に,フィギュアスケートの基本動作への導入やモチベーションの維持・向上を目的とした同時双方向型のオンラインオフアイストレーニングプログラム(OOTP)を設計し,その効果を検証することでした.さらに,OOTP に画像を用いた外在的フィードバックの効果についても検討しました.
22 名の成人フィギュアスケート初級者をフィードバック無し群とフィードバック有り群の2 群に分け,1 群は OOTP のみに参加し,もう 1 群は OOTP 参加に加え外在的フィードバックも受けました.OOTP は主にスキルトレーニングから構成されており,基礎的模倣動作(スクワット模倣動作,スパイラル模倣動作,スケーティング模倣動作)が,週 1 回,4 週間にわたりフィギュアスケート熟練者によって指導されました.
基礎的模倣動作の動画データは,OOTP の前後で取得されました.スクワット模倣動作では角度α(大腿部と水平線のな す角度),スパイラル模倣動作では角度β(大腿部と水平線のなす角度),角度γ(大腿部と 下腿部のなす角度の補角),スケーティングでは角度δ(下腿部と垂線のなす角度)を計測しました.また,OOTP 後に両群についてアンケート調査を実施しました.
その結果,OOTP後の角度αは,OOTP前のそれと比べて改善傾向がみられました.OOTP後の角度βおよびγは,OOTP 前におけるそれに比較して,各々,有意に改善が確認されました. 角度δは OOTP によって改善する傾向がみられました.しかし,基礎的模倣動作の各角度について,二元配置分散分析を行ったところ,時間と被験者群の交互作用は認められませんでした.
また,角度α,角度β,角度γについて,初期スキルレベルが低い人ほど高いトレーニング効果が得られることもわかりました.
これらの結果により,OOTP が基礎的模倣動作 のスキルの改善に有効であること,また本研究で用いた外在的フィードバックでは付加的 効果が認められなかったことが示唆されました.一方,アンケート調査の結果は,外在的フィードバックがスキル改善やモチベーションの維持・向上という観点において高い評価を示していました.
以上のことから,OOTP はフィギュアスケート初級者のスキル向上に有用な指導手段のひと つとなる可能性が示されました.このようなスキル学習方法の多様化は,フィギュアスケー トに触れる機会の増加をもたらし,その結果としてフィギュアスケート普及の一助となると考えます.
本研究の成果は新たなスポーツ市場の創出につながる有益な知見となる可能性があると考えます.
伊藤 瑳良 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科
山口 翔大 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科
神武 直彦 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科
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