地方公共団体の競技スポーツ施策の政策革新 -Z県の国民体育大会に向けた施策の事例研究-
【イメージ写真】
このことは、教育としてのスポーツ政策以外の、健康や都市の活性化を目的としたスポーツ政策が打てるようになったことを示しています。
いっぽうで、これまで地方公共団体の競技スポーツ政策は、国のメダル獲得をめざす政策を参酌して政策決定され、実際には国民体育大会で成績を残すための施策が策定・実施されています。
本研究では、国民体育大会開催前後にスポーツ主管部局が首長部局に移管されたZ県の競技スポーツ政策の政策過程を、政策学で用いられる動的相互依存モデルと政策ネットワーク論を用いて、政策に立案・実施に関係する利害関係者(アクター)の関係性を分析しました。
結果としては、アクター間には互いの資源に依存しあうことで、アクター同士がWin-Winとなるポジティブ・サムの関係を構築するようにネットワークが調整されていることが明らかになりました。
特に、Z県では地域の財界関係者が体育協会幹部として、競技スポーツ政策の立案・実施に関わりを持っており、スポーツ産業の視点でみれば、国体強化ための競技スポーツ政策は、単に地方公共団体のなかだけで完結するものではないことが明らかにされています。さらに、スポーツ主管部局が首長部局に移管された後は、アクターが増加することもあり、アクター間の関係を再調整する必要性があることもわかりました。
今後、スポーツ産業の発展が望まれるなかで、地方公共団体のスポーツ政策が民間企業を巻き込んで立案・実施されることもあると考えられます。その際に、スポーツ産業の実践者は、地方公共団体のスポーツ政策の政策過程を理解しておくことは重要になると考えられます。
高橋 義雄
筑波大学体育系
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