【鳩スタ殿の13人】#023 加藤雅樹(鎌倉インターナショナルSC 選手)ー『鳩スタ』のおかげで、「サッカーをやってきたよかった」と思えた

鎌倉インターナショナルFC
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【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 神奈川県リーグに所属する鎌倉インテルが、民間の力だけでつくり上げた自前のホームグラウンド「みんなの鳩サブレースタジアム」(通称「鳩スタ」)。雑草の生い茂っていた古都・鎌倉の広大な空き地に誕生した「鳩スタ」は、その名の通りに「みんなの思い」が形になった場所だ。

 ここでは「鳩スタ殿の13人」と題して、「鳩スタ」に関わる人々のそれぞれの思いに迫る。今回は、「鳩スタ」のある湘南深沢地区で育ち、クラブ創設初年度からプレーする加藤雅樹。

(文・本多辰成/スポーツライター)

「鳩スタ」から徒歩5分の場所で育った

インターネットでの検索をきっかけに鎌倉インテルに加入 【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 今季はセカンドチームにあたる鎌倉インターナショナルSCでプレーする加藤雅樹にとって、「鳩スタ」のある湘南深沢地区は馴染み深い場所だ。

「正確に言うと生まれたのは相模原市なんですが、1歳くらいの時に今『鳩スタ』がある場所から徒歩5分くらいのところに引っ越してきて、小学校、中学校と深沢でサッカーをしていました。高校は鎌倉高校だったんですが、通学にも湘南モノレールを使っていて。今『鳩スタ』になった土地をモノレールの窓から見ていたんですが、その頃は本当に何もない空き地でした」

 進学した早稲田大学でもサッカーを続けるつもりだったが、サッカー部のセレクションで不合格となってしまう。その後、1カ月ほどはサッカーから距離を置いてみたものの、やはりサッカーをしたいという思いが沸き上がってきたという。そんな時に知ったのが鎌倉インテルの存在だった。

「大学も鎌倉から通っていたので近いところでサッカーができればと思い、『鎌倉 サッカー』とインターネットで調べてみたら一番上に出てきたのが『鎌倉インターナショナルFC』でした。鎌倉からJリーグを目指していて、地元の深沢にスタジアムをつくる夢のような話なんかも書かれていて、何だこれは?と。これは行ってみるしかないなと思ってホームページから連絡してみたら、ちょうど1週間後くらいにセレクションがあるということで。それが鎌倉インテルに入るきっかけでした」

セレクション参加後に急遽、シンガポール遠征参加

クラブ創設初年度のシンガポール遠征(加藤は後列の19番) 【鎌倉インターナショナルFC】

 加藤がチームに加入したのは2018年、クラブ創設初年度のことだ。チームはまだ選手を集めながら初参戦の神奈川県リーグを戦い始めたところで、加藤もセレクション参加をきっかけに初期メンバーのひとりとなった。

「セレクションに行ったら、人が足りないから次の練習試合に来てほしいと言われて。助っ人みたいな感じで練習試合に参加したら、今度はシンガポール遠征があるからそこにもぜひ来てほしいとGMの吉田(健次)さんから言われました。まだ正式に加入していたわけではなかったんですが、ちょうど大学の夏休みで日程的には可能だったので参加することになって。そんな感じで、気づいたらチームに加入していたという感じです(笑)」

 それまでは海外に行ったことすらなかったため、急遽パスポートをつくってシンガポール遠征に参加。創設されたばかりの県リーグのクラブとしては異例と言える海外遠征は、加藤にとっても貴重な経験となった。

「もともと海外には特に興味がなかったんですが、実際に行ってみて感じることは多かったです。現地の人に英語でインタビューするミッションなんかもあっていい経験になりましたし、実際に見てみないと分からないなと。シンガポール遠征をきっかけに、いろんな場所を自分の目で見てみたいと思うようになって、何をするにもフットワークが軽くなったような気がします」

「鳩スタ」の恩恵を一番受けているのは自分かもしれない

「タンピネス・ハブ」で得点を挙げ、引き分けに持ち込む 【鎌倉インターナショナルFC】

 シンガポール遠征では鎌倉インテルが創設当初から理想のスタジアム像として掲げる複合型スタジアム、「タンピネス・ハブ」でのトレーニングマッチを実施。相手は現地のプロクラブ「タンピネス・ローバース」のセカンドチーム。MFとして出場した加藤は、その試合でチーム唯一のゴールを決める活躍を見せ、引き分けに持ち込んだ。

「チームに入って間もなかったので、タンピネス・ハブで決めたゴールは鮮明に覚えています。でも、そのゴール以上にタンピネス・ハブ自体が衝撃的でした。ショッピングモールとか図書館とかいろんな施設があって、芝生のピッチが併設されている。そこに多くの人たちが集まって楽しそうにしているのが印象的でしたし、こんなものが本当にあるんだなと。クラブは将来的にそれを深沢につくることを考えていると聞いて、すごいなと感じたのを覚えています」

複合型スタジアム「タンピネス・ハブ」を見学 【鎌倉インターナショナルFC】

 だが、深沢で育った加藤だからこそ、モノレールの窓から眺めていた空き地にそんなものができるとはリアルには全く想像できなかったという。しかし、その第一歩として昨年、ついに「鳩スタ」がオープン。馴染み深い場所に誕生した手作りのホームグラウンドは、加藤の生活にも大きな影響を与えた。

「『鳩スタ』ができて、自分が一番恩恵を受けているんじゃないかと勝手に思っているんです。自分は鎌倉インテルのスクールにも関わらせてもらっているんですが、たとえばスクール生に街でばったり会って話をする機会があったり。クラブを応援してくれている方が経営する飲食店に食べに行ったりと、『鳩スタ』ができたことで地元に新たなつながりが生まれました。今までだったら絶対に素通りしていたところに目が向いたり、新しい出会いがあったりと、今まで気づかなかった地元の一面を再発見できています」

「鳩スタ」のおかげで、「サッカーをやってきたよかった」と思えた

「鳩スタ」ではクラブのスクールコーチを務める 【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 クラブのスクールコーチを務めるなかで、うれしい出来事があったという。卒業のシーズンとなり、迎えた最後のスクール。あるスクール生の保護者からうれしい言葉をもらった。

「スクール生が試合を見に来てくれることがあるんですが、『雅樹コーチのプレーを見て、うちの子がサッカー選手になりたいと言うようになった』と。夢を与えてくれてありがとう、という言葉をいただきました。プロでもないただの大学生の自分が誰かに夢を与えることができたという経験は、自分の中で本当に大きくて。サッカーをやってきてよかったと初めて思えた瞬間でしたし、それは『鳩スタ』があったからこそ起きたことだと思います」

「鳩スタ」の誕生によって鎌倉インテルは大きな一歩を刻んだ。だが、鎌倉全体から応援されるようなクラブになるためには、さらなる努力が必要だとも感じているという。

「『鳩スタ』ができたことで、鎌倉インテルの存在を認識した人は大幅に増えたと思います。ただ、チームがカテゴリーを上げていくだけでは鎌倉の人たちみんなが応援してくれるようにはならないような気がしています。『鳩スタ』がハブとなって、さらに地域との結びつきを強くしていく。人と人をつないだり、勇気や感動を与えて人生に何かしらの影響を与えていくことが大事だと思いますし、自分も少しでもその力になれればと。個人的には今季はセカンドチームでプレーをしますが、地域の人たちに応援したいと思ってもらえるようなクラブにしていきたいと思っています」

 幼い頃から知る愛着ある湘南深沢の地に、シンガポールで見たタンピネス・ハブのような複合型スタジアムがあればどんなに豊かな場になるんだろう。最初は想像すらできなかったクラブの夢が、少しだけ現実味をもって感じられるようになってきた。

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【鎌倉インターナショナルFC】

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著者プロフィール

鎌倉インターナショナルFC(通称:鎌倉インテル)は、世界で最もグローバルなスポーツであるサッカーを通じて未来の日本を国際化していくため、2018年に設立された新しいサッカークラブです。現在は神奈川県社会人リーグに所属していますが、プロサッカークラブ(Jリーグ参入)、そして世界を目指して活動をしています。『CLUB WITHOUT BORDERS』をビジョンに掲げ、日本と世界を隔てる国境をはじめ、性別、年齢、分野、そして限界、あらゆる“BORDER”(境界線)をもたないサッカークラブを目指しています。

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