【フィギュアスケート】世界選手権男子シングル:宇野昌磨が悲願の世界チャンピオン、鍵山優真も銀メダル

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【(C)時事通信】

3月21日から27日の日程でISU(国際スキー)世界フィギュアスケート選手権がフランス・モンペリエで行われ、日本からは男子シングルに宇野昌磨(トヨタ自動車)、鍵山優真(オリエンタルバイオ/星槎)、友野一希(セントラルスポーツ)が出場した。

■宇野昌磨:合計 312.48点(1位)

・SP:109.63点(1位)
・FS:202.85点(1位)

北京2022銅メダリストとして、6度目の世界選手権に出場した宇野昌磨。ショートプログラム(SP)は圧巻の演技だった。ジャンプを完璧に決め、ステップ、スピンでもオールレベル4を獲得した。指先にも神経が行き届き、観ているこちらが息をするのを忘れてしまうほど、宇野の演技は研ぎ澄まされ、魅入ってしまった。演技後は飛び跳ねながらガッツポーズして喜びを表すと、得点は109.63点。自己ベストを大きく更新し、SPを1位で終えた。

世界選手権直前は、スイスでステファン・ランビエール コーチと調整を行ってきた。直接指導してもらうことで細部の確認もでき、良い調整ができたのではないだろうか。宇野本人も「思い残すことのない練習をすることができた」と、演技後のインタビューで語っている。また「フリーはステファンに振り付けいただいているので、ステファンが満足する演技ができるようにがんはりたいと思います」と語ったのが印象的だった。

最終滑走で迎えたフリースケーティング(FS)は、今季挑み続けた4回転ジャンプ5本の高難度プログラム。そのジャンプを次々と決め、後半には北京2022では前半に入れていた4回転フリップもしっかりと着氷した。続く4回転トウループで回転不足、コンビネーションジャンプのフリップが1回転になったが、間違いなく今季を締めくくるにふさわしい『ボレロ』だった。

FSも自己ベストを更新し、6度目の挑戦でついに世界の頂点に立った。優勝インタビューで「2019年のグランプリ(GP)シリーズ フランス大会が分岐点だった」と語ったように、宇野にとってフランスは特別な地。2019年、宇野はコーチ不在のままシーズンを迎え、GPシリーズ フランス大会に出場した。結果はシニアに転向してから最低順位となる8位。そして、今大会の舞台もフランス。3年前のキス&クライでは1人だったが、今回はステファンコーチと出水慎一トレーナーと喜びを分かち合った。

試合後の会見では、「今後、どのプログラムをやるにしても、このプログラムよりは楽だなと思える」と話す宇野に対し、司会者から呼ばれたステファンコーチは「昌磨、さらにステップアップするから楽になることはないよ」と厳しくも愛のある言葉を送った。宇野のこれからの挑戦に世界が注目することだろう。

■鍵山優真:合計 297.60点(2位)

・SP:105.69点(2位)
・FS:191.91点(2位)

北京2022銀メダリストとして臨んだ鍵山優真。SPの演技が始まる時のたたずまいからは、貫禄すら感じられた。3回転アクセルの着氷が少し乱れたが、それ以外のジャンプはいつもの流れるような完璧なジャンプだった。何より着氷後のスピード、姿勢、フリーレッグはため息の出るような美しさ。そして、1つ1つ伸びのあるスケーティングは健在で、シーズンの締めくくりである世界選手権での演技が、最も身体も動いているように見えた。

キス&クライでは、映像を見ながら父の正和コーチとアクセルを振り返っていた。得点は自己ベストには届かなかったものの、北京2022でレベル3だったステップは、しっかりとレベル4を獲得。また、北京2022に続き、演技構成点の5項目全てで9点台を出せたことからも鍵山の成長が感じられた。

演技後のインタビューでは「今大会、100点台が(友野)一希君だったり、同世代の(イリア)マリニン選手(アメリカ合衆国)だったり、すごく自分も燃えてこの試合に臨むことができたので、刺激をもらいました」と話した。FSでは今季から挑戦している4回転ループはダウングレード、最後のアクセルジャンプは1回転半になったが、それ以外のジャンプはきれいに着氷。またSPに引き続きステップ、スピンで全てレベル4をそろえた。

正和コーチは長いシーズンを戦い抜いた息子に「この悔しさを来シーズンに生かそうよ。よく頑張った」と労いの言葉を送った。FSの得点は191.91点。十分に高い点数なのだが、鍵山は悔しさを滲ませたままだった。そして、最終滑走の宇野にエールを送り、キス&クライを後にした。宇野が滑って最終順位は2位となり、鍵山は2大会連続で銀メダルを手にした。

演技後には「ループを完全に降りれなかったことはすごく悔しいですが、トウループとかサルコウとか、ほかの部分の質が上がってきたのは良かった。ステップ、スピンでもレベルが取れるようになってきたので、そこがジャンプ以外の成長した部分だと思います」と自身の成長を語った。来年の世界選手権はさいたまスーパーアリーナ(埼玉県さいたま市)での開催。来季はこの悔しさを糧に、さらにパワーアップした鍵山に期待したい。

■友野一希:合計 269.37点(6位)

・SP:101.12点(3位)
・FS:168.25点(8位)

羽生結弦、さらに三浦佳生の欠場で、世界選手権出場のチャンスが舞い込んだ。友野の世界選手権出場は2度目。前回は平昌2018後の世界選手権で、この時も羽生が故障で欠場、補欠1番手の無良崇人が辞退したため出場。5位入賞という成績を収めた。友野は3月18日から20日まで行われた大会「クープドプランタン2022」(ルクセンブルク)に出場していたため、ハードスケジュールとなったが、クープドプランタン2022で優勝を飾り、その勢いでフランスに乗り込んだ。

SPはジャンプを全て着氷し、完璧な演技で会場を沸かせた。しっとりと、切なさも感じられるような音楽を身体全体で表現し、その中にも友野らしい、はつらつとしたものが感じられた。昨年11月のGPシリーズ ロシア大会で、SP1位となった時の出来栄え点(GOE)が9.01点だったが、今回は12.18点と出来栄えでも評価され、演技構成点のスケート技術では9点台を獲得した。

SP後の会見で、「今季1番の目標であった100点超えを世界選手権で達成できて、すごくうれしい。四大陸選手権が終わって、かなりスケーティングにも力を入れて練習して、それがスケーティングスキルにも表れていたので、自分の中でもうれしかった」と話した。

最終グループで迎えたFSでは、ジャンプの細かいミスが続いたが、終盤のスピンからのコレオグラフィックシークエンスは会場を最高潮に盛り上げた。楽しさを爆発させた友野のスケーティングに、心を鷲掴みにされたスケートファンも多かったはずだ。FSの順位は8位だったが、演技構成点は全体の4位と、連戦の中でも着実に成長している姿を見せた。最終順位は6位入賞でシーズンを締めくくった。

演技後のインタビューでも「一段一段駆け上がってきて、今季もまた一段上ったと思う。悔しい思いをしてよかったといつか言えるように、この経験をただの失敗で終わらせないような練習を今後積んで、次のシーズンから見せていければと思います」と語った。来季の“氷上のエンターテイナー”のさらなる進化が楽しみだ。

また、銅メダルはヴィンセント・ジョウ(米国)で、2019年世界選手権以来の表彰台となった。そして宇野が1位、鍵山が2位で上位2人の順位合計が「13」以内だったため、日本は来年の世界選手権の出場枠を3つを獲得したが、6位の友野を足してもわずか「9」という、日本男子の層の厚さを見せた大会となった。

文=石川千早弥
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