東京2020大会の開催延期決定直後における大会開催に対する東京都民の認知
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無観客という体制が一定の割合で支持されたと考えられる
本調査では、東京2020大会の開催都市である東京都に住む一般市民を対象に、東京2020大会の延期が決定した直後における、東京2020大会の開催に対する認知について検討しました。
調査は、2,011名 (男性975名・女性1,026名・その他1名・無回答9名、平均年齢±SD=44.19±14.08歳、欠損1名) を対象に、2020年4月26日―6月2日の間に、インターネット経由で行われました。調査参加者には、東京2020大会について、以下の6つの選択肢のうちから1つを選んでもらいました。
(1)「予定通りの体制で、そのままの日程で実施すべき」(実施群)
(2)「無観客など感染を防ぐ体制を整えたうえで、そのままの日程で実施すべき」(無観客実施群)
(3)「予定通りの体制で、延期して実施すべき」(延期群)
(4)「無観客など感染を防ぐ体制を整えたうえで、延期して実施すべき」(無観客延期群)
(5)「中止すべき」(中止群)
(6)「その他」
その結果、以下の結果が得られました。
・中止すべきと回答した者は、42.4% (男性42.0%、女性42.8%) であった。
・中止すべきという考えは、女性、もしくは、50代・60代の者に多かった。
・無観客などの体制を整備した上での開催を支持する回答は、27.6% (男性24.9%、女性30.3%) であった。
感染リスクを低減するための手法として、無観客という体制が一定の割合で支持されたと考えられます。しかし、仮に無観客での開催を視野に入れるとしても、アスリート自身、コーチ、およびスタッフが海外から多数入国することを考えれば、無観客であったとしても感染リスクが高まったり、感染が拡大したりする可能性は十分に考えられました。無観客で実施する場合には、無観客であっても生じうる感染に関連するリスクの存在をどのように市民に伝えるか、検討する必要があったと思います。
私はかねてより、コロナ禍においては「無観客開催すべき」と主張しており、「体育の科学」誌の2021年1月号においても、そのことを表明しました。そして、大会がほぼ無観客で実施することが決定されたのは、大会の開催直前のことでした。
そもそも、日常の練習だけでなく練習試合や予選の開催がままならない状況で、無観客だとしても、オリンピック・パラリンピックの理念を体現し、世界各国から選手が集うスポーツの祭典としてふさわしい大会が実施できるのかは不明瞭であったと言えるでしょう。
実際は、大規模なクラスターが発生することなく、東京2020大会は幕を閉じました。しかし、大会の有り様がオリンピック・パラリンピックのあるべき姿を体現できていたのかについては、一般市民が参画した上での総括が必要でしょう。
荒井 弘和 法政大学文学部
樋口 匡貴 上智大学総合人間科学部
伊藤 拓 明治学院大学心理学部
中村 菜々子 中央大学文学部
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