鈴木優磨の決意と覚悟。「一番プレッシャーのかかる番号って、いくつだろう」【FREAKS vol.317】

鹿島アントラーズ
チーム・協会

【©KASHIMA ANTLERS】

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「一番プレッシャーのかかる背番号って、いくつだろう」

 アントラーズへの復帰が決まったとき、まず考えたことだ。その答えはすぐに頭に浮かんできた。

「それはこのクラブにもっとも多くのタイトルをもたらした人の番号ではないかと。だから、“40”。小さな頃からアントラーズを見てきて、満男さん(小笠原満男テクニカルアドバイザー)を見てきて、満男さんの次に40番をつけるのは自分であるべきなんじゃないか。自分のなかで、勝手ながら、そう思いました。責任と覚悟を持って、その数字を背負うことにしました」

 自ら希望した背番号は、それまでのアントラーズの歴史でたった一人しか背負ったことのない特別な数字だった。

アントラーズの歴史で背番号40を背負い、”勝てる選手”を体現してきた小笠原満男 【©KASHIMA ANTLERS】

 鈴木がアントラーズへの復帰を考え出したのは、今から半年ほど遡った2021年の夏のことだった。心のなかで一つの節目を迎えていた。

「夏の移籍のタイミングで五大リーグに行きたかったけれど、なかなか自分が希望しているようなオファーは届かなかった。あのタイミングで、自分はシント=トロイデンVVではこれ以上……、またもう1年頑張るという気持ちにはなれなかったんです」

 ベルギーのシント=トロイデンVVに加入してから2年が経ち、キャリアの転換期が訪れていた。強豪クラブがそろうイングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランスへのステップアップを模索したがかなわず、自分自身の本音と向き合った。すると、あふれてきたのは古巣への思いだった。

「俺はもう一度、日本で。アントラーズでプレーしたい」

 ヨーロッパに渡ってからも、アントラーズの状況を見守ってきた。アントラーズは幼少期から過ごしてきたクラブであり、自身をプロフットボーラーへと成長させてくれたクラブでもある。移籍したあとも、鈴木の人生の一部であることに変わりはなかった。だが、そんな古巣は、自身が移籍した2019年からはタイトルに手が届かず、苦しんでいる。

「“俺が”というわけではなく、優勝を経験している選手がどんどん抜けました。それでも常に求められているのは優勝であり、優勝を知っているメンバーもまだアントラーズにいます。聖真くん(土居)、健斗(三竿)、安西(幸輝)……みんな、チームをいい方向に導いて優勝したいという気持ちを持っているはずなんです。健斗なんかは一人で大きなものを背負い込んで、チームをまとめようとしている。そのことは、画面越しにアントラーズの試合を見ている俺にもわかっていました。タイミング的にももう、アントラーズが“欲しい”と言ってくれるのならば、またそこでプレーしたい。そんな気持ちになっていました」

 くすぶっていた感情が燃え上がり、自らの思いを伝えた。
「満さん(鈴木満元フットボールダイレクター)に、俺の気持ちを伝えました。そしたら、満さんも俺のことを欲しがってくれた」
 『優勝するために獲る』。鈴木にとって、何よりうれしい返事だった。こうして、アントラーズへの復帰が決まった。

 アントラーズ同様、鈴木自身もまたタイトルに飢えている。

「昔、ミーティングでジーコ(クラブアドバイザー)がよく言っていたんです。『選手としてのキャリアを振り返ったとき、その選手の価値というのは獲ったタイトルの数で決まる』と。今でも俺は鮮明に覚えていて、自分のキャリアを良くしたいと考えるのならば、やっぱりタイトルを獲ることは間違いなく重要。そして、それぞれの選手がチームのために頑張る動機にも直結する。だから、俺はその言葉がすべてかなと思っています。ましてや自分がアントラーズに在籍していたときは常に優勝争いをしていて、タイトルを獲っていた。やっぱり、タイトルを争えるのは素晴らしいことで、それを欲していたということが(アントラーズ復帰を望んだ)一番大きな理由だったのかもしれません」

新加入会見で背番号40のユニフォームを身にまとう鈴木優磨 【©KASHIMA ANTLERS】

 1月22日、鹿島アントラーズの新体制発表会見に出席した鈴木は明言した。

「全タイトルを獲るために帰ってきました」

 その目線は、もはや優勝にしか向いていない。タイトルを勝ち取るために、自身の果たすべき役割を自覚する。

「点を取るのは、確実に重要なことです。でも、点を取ることにプラスして、チームを勇気づけるプレーや、チームを奮い立たせるようなプレーがあると思うので、俺は俺らしく、そういったところも示していきたい。少なからず、俺が見てきたアントラーズには、満男さん、ソガさん(曽ケ端準GKアシスタントコーチ)、ヤッさん(遠藤康)、夢生くん(金崎夢生)と、そういうことを背中で見せる人たちがいました。そこはアントラーズとして変えてはいけない部分。このクラブにいる以上、俺もそういう選手でありたい」

 2015年のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)、翌2016年のJリーグと天皇杯を制し、2018年にはアジアの頂点に立った。主要タイトル「20冠」を成し遂げたそのときから止まっている時計の針を動かし、再び栄光の瞬間を刻ませるために。鈴木はまたJリーグの舞台にいどむ。

「頑張る理由は、どんなものでもいいんです。人それぞれ、それは違っていいと思うんです。ただ“優勝する”というところにさえ、全員が同じ方向を向いていれば。みんなでタイトルに挑んでいきたいと思っています」

 アントラーズと鈴木優磨の2022シーズンが幕を開けた。リーグ開幕戦となったガンバ大阪戦ではいきなりの復帰初戦でゴールと結果を残した。2月26日(土)には、カシマスタジアムで前年王者川崎フロンターレと対峙する。どんな背中をプレーで見せてくれるのか。背番号40に注目だ。

リーグ開幕戦でゴールの結果を残した鈴木優磨 【©KASHIMA ANTLERS】

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著者プロフィール

1991年10月、地元5自治体43企業の出資を経て、茨城県鹿島町(現鹿嶋市)に鹿島アントラーズFCが誕生。鹿角を意味する「アントラーズ」というクラブ名は、地域を代表する鹿島神宮の神鹿にちなみ、茨城県の“いばら”をイメージしている。本拠地は茨城県立カシマサッカースタジアム。2000年に国内主要タイトル3冠、2007~2009年にJ1リーグ史上初の3連覇、2018年にAFCアジアチャンピオンズリーグ初優勝を果たすなど、これまでにJリーグクラブ最多となる主要タイトル20冠を獲得している。

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