【鳩スタ殿の13人】#002 岡崎修也(鎌倉インターナショナルFC GK兼フロントスタッフ)ー『鳩スタ』をジブンゴトとして考える人を増やしたい
【Kazuki Okamoto(ONELIFE)】
ここでは「鳩スタ殿の13人」と題して、「鳩スタ」に関わる人々のそれぞれの思いに迫る。今回は、トップチームのGK兼営業担当のフロントスタッフとして鎌倉インテルを支える岡崎修也。
(文・本多辰成/スポーツライター)
創設間もないクラブがスタジアム建設? 遠い未来の話のようだった…
「その研修の資料の冒頭に、スタジアムの建設計画が書かれていたのを覚えています。Jリーグのクラブでも新しくスタジアムをつくるというのは、何年かに一回聞くくらいの話です。正直、できたばかりのチームがサッカー場をつくるなんて、どう考えても簡単な話じゃないよなと感じました」
岡山出身の岡崎は鎌倉という土地にも馴染みがなかった。いずれにしても鎌倉インテルが掲げるスタジアム建設計画には現実味を感じられず、「すごく遠い未来の話という感じがした」と振り返る。
だが、岡崎はそのビジネス研修をきっかけに鎌倉インテルに関わる運命となる。GKとして続けてきたサッカーは大学までで引退しようと考えていたのだが、突然、四方からの連絡が届いた。「チームのGKを探しているんだけど…」。
2020年6月、岡崎は選手として創設3年目の鎌倉インテルに加わることになった。
新卒で就職した会社を半年で退職、鎌倉インテルの営業担当に
2020年11月、営業担当として「鎌倉みんなのスタジアム」プロジェクトに参画 【鎌倉インターナショナルFC】
「大学卒業後は東京の会社に就職して営業職をしていたので、選手としてチームに加入した時は東京から練習や試合に通っている状況でした。チームの活動をしていく中で少しずつ、選手以外の形でもクラブに貢献したいという気持ちが出てきたんです」
その当時の鎌倉インテルは、まだ本格的なフロントスタッフがほとんどいない状況。プロジェクトを進める上でも人手が足りていなかった。そんな状況下、わずか半年とはいえ営業職の経験があった岡崎は、チームのGKを兼任する営業担当としてフロント入りする運びとなった。
その後、クラブは正式に「みんなのスタジアム」計画を発表し、資金調達のためのクラウドファンディングを開始。営業担当としての岡崎の最初の仕事は、ひたすら地元を回り、古都・鎌倉にスタジアムをつくることの意義やクラブのビジョンを伝えていくことだった。
「最初の頃は『そのグラウンドが鎌倉にとってどんなメリットがあるのか』といった厳しい反応もありましたが、丁寧に説明していくことで少しずつ話を聞いて協力してくださる方が増えていきました」
一つひとつにストーリーがあるのが「鳩スタ」の魅力
週末のリーグ戦、多くの観客でスタンドが賑わう 【㋚写真】
「スタンドに人がたくさんいる雰囲気には、今も不思議な感じが拭えません。営業という立場上、他の選手よりはチームに関わる方の顔を知っている方なんですが、それでもどなたか存じ上げない方も多く足を運んでくれている。冷静に考えたらすごいことですし、『鳩スタ』ができたことで多くの人たちとつながることができたことを実感しています」
今、岡崎は「鳩スタ」から100メートルほどのところに住んでいる。選手としてスタッフとして、「鳩スタ」は毎日のように訪れる生活空間の一部だ。みんなで一からつくり上げてきた「鳩スタ」だからこそ、通常であれば選手としては目を向けることのないスタジアムの細部まで意識が向くという。
「純粋に設備としては、まだまだ改善の余地がある部分もたくさんあります。でも、それが『鳩スタ』の魅力でもあると思う。一つひとつにストーリーがあって、どういった変遷で今に至っているかがわかっているから思い入れがあるんです。それは、請け負うような形で運営している場所にはない魅力だと感じています」
「鳩スタ」をジブンゴトとして考える人を増やしていきたい
【Kazuki Okamoto(ONELIFE)】
「実際、一度足を運んでくれた方の中には、『あの砂利のところは雨が降ったらどうするんだ?』とか意見を言ってくれる方も出てきています。それはもうジブンゴトになっているということなので、意見はプラスでもマイナスでもいいと思うんです。『鳩スタ』があることによって日々の生活に熱が帯びる、血の通った時間がある。そういう人が増えてくれたら、すごくうれしいことです」
大学時代にたまたま参加したビジネス研修を機に、鎌倉インテルに関わることになった岡崎。最初は非現実的で「遠い未来の話」のように感じたスタジアム建設計画に自らもコミットし、何もない空き地にサッカー場が生まれる物語の登場人物となった。そんな「当事者」をさらに増やしていくことが今の目標だ。
「いろんな方の意見を取り入れて実現させていくのは簡単ではないと思いますが、困難をすべて乗り越えてできたのが『鳩スタ』です。皆さんの意見を反映させながら、これからも乗り越えていきたい。みんなでつくっている感が、いろんなところに広がっていったらいいなと。周りから見た時に、『自分も仲間に入りたい』と思っていただける状況をつくっていきたいと思っています」
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