【ノルディック複合】北京五輪|渡部暁斗、日本悲願の個人金メダルを目指す

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【(C)Getty Images】

平昌五輪で2大会連続のノルディック複合個人ノーマルヒル銀メダルを獲得した後も、たゆまぬ努力を4年間続けてきた渡部暁斗。33歳で迎える人生5度目の大舞台で、まだ見ぬ、最高峰へと上り詰めたい。

キング・オブ・スキーも届かなかった個人のメダル

あの荻原健司でさえ、個人の名のもとには、オリンピックメダルを手にしていない。1990年代に世界選手権で個人2勝を持ち帰り、3度のワールドカップシーズン総合優勝も果たした「キング・オブ・スキー」も、2つの金メダルはいずれも団体戦によるものだった。渡部よりも前にオリンピックの個人メダルに届いたのは、1994年リレハンメル大会の銀メダリスト河野孝典ただひとり。だからこそ渡部の2大会連続表彰台はとてつもない偉業にほかならない。

4年前は、W杯8勝という凄まじい強さで、W杯総合優勝を飾った。しかし2年前、そこまで8年連続で上ってきたW杯総合の表彰台から、久しぶりに転がり落ちた。悲願の金メダル獲得に向けて、肉体改造を試みたせいだと言う。また、約1年前に荻原健司に並ぶ複合日本勢最多タイとなるW杯19勝を上げて以来、渡部は勝利からも遠ざかっている。

しかし、試行錯誤は無駄ではなかったはずだ。昨年3月の世界選手権では個人ラージヒルで銅メダルを射止めた。一時は低迷したW杯の成績も、今季は一桁台で高く安定している。あとは本番にぴたりとピークを合わせるだけ。誰よりも長い経験を誇る渡部だからこそ、この点に関しては、心配には及ばない。

ソチ五輪・平昌五輪の2大会連続で渡部を破り、金に輝いたエリック・フレンツェル(ドイツ)は、もちろん北京五輪でも金を取りに来る。ただ、フレンツェルもやはり渡部と同じ33歳。平昌五輪シーズン後には、若い世代に主役の座を奪われた。

中でも24歳のヤール=マグヌス・リーベル(ノルウェー)は、過去3季連続でW杯総合優勝と突っ走る。世界選手権は過去2大会連続で個人ノーマルヒルの金メダルを獲得し、今季もW杯参戦9戦で8勝と勢いはとどまるところを知らない。そのリーベルの連勝を1月末に止めたビンツェンツ・ガイガー(ドイツ)や、リーベル不在中にW杯初優勝を上げ、そのまま立て続けに3勝目を挙げてしまった20歳ヨハネス・ランパルター(オーストリア)も、金メダル争いに間違いなく絡んでくる。

スピードスケート女子の郷亜里砂とともに渡部暁斗は、北京五輪開会式で日本代表選手団旗手を務める。そして、16日後の閉会式では、笑顔と共に金色に輝くメダルを胸に下げた姿が見られるだろうか。

ベテランと若手が融合…団体戦で表彰台へ

渡部暁斗が個人の金メダルを狙うように、日本チームもまた、メダル獲得を欲している。1992年、1994年に2大会連続で団体金メダルに歓喜して以来、表彰台には乗っていない。

3度目のオリンピックへと向かう永井秀昭は、だからこそ、38歳でも現役にこだわってきたと言う。オフ中にはケガが重なり、個人としては決して思い通りの結果は出せていない。それでもソチ五輪団体5位・平昌五輪団体4位の一員だった永井は、今度こそ、の思いが強い。渡部暁斗の活躍に長年奮起させられてきた1人として、団体戦でも渡部にメダルを取らせたいという強い思いもあると言う。

弟の善斗もまた、チームメイトとして兄に寄り添ってきた。2017年の世界選手権では、2人で戦うチームスプリントで、兄弟タッグを組み銅メダル(チームスプリントはオリンピック不採用)。なにより昨年12月のW杯ノルウェー大会では、暁斗、山本涼太、谷地宙と共に団体戦に出場し、前半ジャンプで日本人ナンバーワンの成績を挙げ、3位表彰台に大いに貢献した。

山本涼太、谷地宙はいずれもオリンピック初体験。ジャンプの成績のみで争われるランキングで、昨季W杯総合2位に食い込んだ24歳山本は、今季個人として2度目のW杯表彰台を経験した。また、21歳大学生の谷地は、W杯デビューからちょうど1年目で、早くも大舞台への切符をつかみ取った。4年後、さらには8年後の世界の頂点に向かって、大きな一歩を踏み出す。

文=宮本あさか
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