6年連続Jリーガーを輩出する元なでしこジャパンコーチの望月聡メソッドに迫る(前編)

びわこ成蹊スポーツ大学
チーム・協会

【©びわこ成蹊スポーツ大学】

 1月6日、びわこ成蹊スポーツ大学DF森昂大選手の徳島ヴォルティス加入内定記者会見が行われた。森選手の徳島ヴォルティス加入は同大学にとって6年連続20人目のJリーガー誕生となる。2009年から監督としてチームを率いる元なでしこジャパンコーチの望月聡監督。選手・スタッフから『モチさん』の愛称で慕われる望月監督の指導方針や300名以上の部員を抱える同部の強みについて、前編では森選手へのインタビューからひも解く。後編では、望月聡監督へのインタビューから指導方針のルーツに迫る。

◆チームへの第一印象は―

森― 高校3年の時に初めて練習参加したんですけど、とてもいい雰囲気のチームだなと思いました。選手が本当に楽しそうにプレーしていたし、こんなチームがあるんだと驚きました。入学後もその印象は変わらず、メリハリがしっかりとしていて、ピリッとした緊張感の中にいつも笑いがあってとても馴染みやすかったです。

試合前にリラックスした表情を見せる森昂大選手(中央右) 【©Hirofumi AKITA】

◆TOPチームで活躍してきたが、望月監督の方針は―

森― モチさんはサッカーについて僕たちに多くを語りません。選手の『自主性』、『主体性』を大事にされていて、すべての物事を自分たちで考えて行動することを求められていました。僕自身いろんなことを言われるのは好きではないので、この指導方針は自分にぴったりで、伸び伸びプレー出来ました。
 入学して分かったんですけど、このチームの明るい雰囲気というのはモチさんが作り上げているものなんだな思いました。いつも冗談を言って笑わせてくれるんです。

◆試合に出続けるために意識して取り組んだことは―

森― 入学当初は周りの選手たちについていくことでいっぱいいっぱいでした。とにかくがむしゃらにプレーしていましたし、その姿勢は4年間変わらなかったと思います。1年の頃から試合に出させてもらってはいましたけど、自信はまったくありませんでした。だからこそ、毎日の練習で自信を掴むために必死でした。びわこにはいい選手たちが多いので、DFとしてその選手たちをどう止めるかを常に考えていました。それが自分の成長につながったんだと思います。

◆望月監督からかけられた言葉で最も印象的なことは―

森― 『ストロングポイントで勝負する』ということです。この言葉をかけられてからは自分のストロングポイントである空中戦と対人プレーでは絶対に負けないんだという気持ちを持つようになりましたし、負けてはいけないと思っていました。
 また、大事な試合の前に「いつも通りにね」と声をかけてくれたことです。何かがかかった試合というのはどうしても固くなって緊張したり、逆にいいプレーをしようとして空回ったりしがちですけど、『いつも通りにプレーすれば大丈夫だよ』と僕たちを勇気づけてくれたんだと思います。

チームを率いる望月聡監督 【©Hirofumi AKITA】

◆びわこ成蹊スポーツ大学サッカー部の最大の強みは―

森― 300人以上の部員がいますが、学年関係なくとても仲が良くて仲間意識が強いところだと思います。ここ2年間はコロナ禍で声を出す応援はできませんが、TOPで試合に出たいはずの仲間たちがわざわざ試合会場に駆けつけて全力で応援をしてくれました。あのスタンドの光景は目に焼き付いています。この4年間、仲間の存在は大きかったですし、立場は違えど仲間と一緒にプレーした時間は本当に楽しくて幸せな時間でした。

◆4年間で最も成長したと感じていることは―

森― モチさんが言い続けていた『自主性』、『主体性』の部分ですね。ある意味何も言ってくれないので(笑)自分で考えるしかなかったんです。でもそれが良かったんだと思います。サッカーだけでなく私生活でも自分で考えて行動できるようになりましたし、自分の意見を主張できるようにもなりました。

森選手(写真右)はチームのゲームキャプテンとしてチームを牽引 【©Hirofumi AKITA 】

◆プロの世界で戦う中で、4年間をどう活かすか―

森― 自分の生活がかかった厳しい世界に入ると思っていますし、周りの選手と同じでは生き残れないと思っています。4年間で養われた『自主性』、『主体性』を武器に試行錯誤して、自分なりのやり方でライバルと差をつけていきたいと思っています。
 
 森選手が「ある意味何も言ってくれない」と思わず話すのは、選手の『自主性』、『主体性』を重要視し、望月監督が選手たちを信じているからではないだろうか。2003年の創部以降、関西だけでなく全国でも勝てるチームとして力をつけてきた、びわこ成蹊スポーツ大学サッカー部の強さの根底には、選手やスタッフから『モチさん』と親しみを込めて呼ばれる望月監督の『人間性』があると言えるだろう。『人間性』溢れる望月監督が指導した教え子たちのこれからの成長にも期待したい。
 
 今回インタビューした森選手は、1月11日からチームに帯同しプロ選手としてのキャリアがスタート。同部もすでに2022年シーズンの活動をスタートさせており、今シーズンはJ1神戸への加入が内定しているMF泉を中心に創部初の「日本一」を目指す。

●望月聡監督のプロフィール●
望月 聡(もちづき・さとる)1964年5月18日生まれ。滋賀県出身。守山高校3年時に全国高校サッカー選手権大会でベスト4進出。大阪商業大学へ進学し、全日本大学サッカー選手権大会3連覇を達成。大学卒業後は、日本サッカーリーグで活躍し、日本代表として国際Aマッチにも出場。1992年から1996年の現役引退までJリーグで活躍。
現役引退後は、Jクラブで指導経験を積み、2009年びわこ成蹊スポーツ大学サッカー部監督に就任。2011年FIFA女子ワールドカップでコーチとして日本代表の初優勝に貢献。

試合後、スタンドへ勝利の報告をする望月聡監督(モチさん) 【©びわこ成蹊スポーツ大学】

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著者プロフィール

2003年に開学した我が国初で唯一の「スポーツ」を大学名に冠したパイオニアが、その役割を全うすべく、「スポーツに本気の大学」を目指し「新たな日本のスポーツ文化を創造する大学」として進化します。スポーツを「する」「みる」「ささえる」ことを、あらゆる方向から捉え、スポーツで人生を豊かに。そんなワクワクするようなスポーツの未来を創造していきます。

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