おもしろいゴルフを体現 渋野日向子ー劇的V

チーム・協会

【<Photo:Atsushi Tomura/Getty Images>】

 JLPGA ツアー2020-21シーズン第48戦『樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント』(賞金総額8000万円、優勝賞金1440万円)大会最終日が10月31日、埼玉県飯能市・武蔵丘ゴルフコース(6,650ヤード/パー72)で行われ、渋野日向子が大接戦を制した。首位タイスタートのペソンウと、一進一退の攻防。通算9アンダーで並び、勝負はサドンデスのプレーオフへ持ち込まれた。PO1ホール目、渋野がイーグル奪取。JLPGA通算6勝目をあげた。通算6アンダーの3位タイは、3週連続Vを狙った古江彩佳、菅沼菜々。
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《グリーン=スティンプ:12 1/2フィート コンパクション:23mm》

 記憶に残るワンショットが飛び出す。渋野日向子、プレーオフの第2打。220ヤードを3Wでピン3メートルにつけた。

 「紙一重の結果。打球が少し左ならバンカーだったし、ピン左のあのポジションへオンさせるショットは、一生打てないかもしれない」。アドレナリン全開の正念場になると、スーパープレーを披露する。しかも、イーグルで決めたー圧巻の内容が自身の目指すーおもしろいゴルフ。

 「ギャラリーの皆さんが、ハラハラドキドキする。そういう状況で優勝。おもしろい勝ち方ができて、本当にうれしい。きょうは、足を運んでくだった皆さま、テレビの前で応援してくださった皆さまの前で、今年の2勝目をあげることができました。ありがとうございます」と話した。

 首位タイでスタートした、ペソンウと一進一退。しかし、パー3の15番で2メートルのパーセーブに失敗する。2打差を追って、残り3ホールを迎えた。16番でバウンスバックに成功。ただし、17番でペがバーディーを決め、再び2打差になった。

 最終18番、表情がより引き締まる。それどころか、怖いぐらいの気迫を放っていた。「もう、イーグルしかない。スイッチを入れたというか、ギアを外したというか…。あっ(ギアは)入れる、だ。外してどうする」とひと呼吸おいて、「1Wでマン振り。予想以上にボールが飛んでいた。第2打も7Wのフルショットです」と解説した。

 2オンに成功するものの、イーグルは成らず。とはいえ、バーディーフィニッシュする。ただし、ぺが、1.5メートルのパーセーブに失敗。3パットのボギーを叩いて、プレーオフへ持ち込んだ。

 プレーオフは2戦2勝。しかも、ぺと優勝争いの過去、2戦ともに勝利している。おもしろいゴルフが、さらにおもしろくなった。「ガンガン行けるホール。一球入魂でした。楽しんでプレーができたと思います」。この日、2度目の18番で値千金ともいえる、イーグルパットを沈めた。やはり、もっている人なのだ。

 振り返ってみると、前年の今大会は米ツアー遠征後の帰国初戦。ただし、結果は予選落ちだった。最終日もコースへ足を運ぶ。試合を行っている会場で、ボールを打ち込み、パッティング練習する姿は、1年後のリベンジを誓ってのものだ。おもしろいゴルフは屈辱を乗り越えた先にある。

 「たくさんのギャラリーの方が、私たちの最終組へついてくださった。パッティングを外せば、あーぁというため息が漏れてくる。バーティーを決めれば、ナイスの声が聞こえます。なんて幸せだろう。そういう気分で1日をプレーしました。見えない力ってあるんですね」と、しみじみと語った。

 おもしろいゴルフを演出したのは、ギャラリーの熱視線、声援のおかげであることを示唆。遠回しの表現に終始したのは、「スポーツマンシップを大事にしている」から。つまり、敗れたペに対しての気配り、思いやりだろう。「ソンウさんのプレーを拝見していると、私の足りないところが見える」。

 勝利で学び、予選落ちでも学ぶ。ひたむきな探究心は当代第一かもしれない。
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