開幕5連敗、防御率リーグワースト2位も、千葉ロッテが首位に上り詰めた3つの理由

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 シーズンも終盤に差し掛かり、試合数も残り約30試合となった。千葉ロッテは9月16日現在、2位のオリックスと3.5ゲーム差で首位に座っている。これまでを振り返ってみると、開幕5連敗を喫してスタートダッシュに失敗。幸先悪い開幕戦となったが、その後は巻き返しを見せて前半戦を3位で折り返し、首位にまで上り詰めた。しかしその背後には、投手陣の予想外の誤算が多く苦しい試合展開が多かったように見える。そんな千葉ロッテが首位まで這い上がった理由に迫っていこう。(成績は9月16日試合終了時点)

得点数は12球団1位。圧倒的な打力で勝利を呼び込む

 首位争いを繰り広げている千葉ロッテの強さの一番の理由として挙げられるのは、その圧倒的な打力だ。これまで496得点を挙げているが、これはセ・パ合わせた12球団の中でトップの数字。リーグ2位はオリックスの441得点であるため、約50得点の差をつけている。

 それには、不動のリードオフマン・荻野貴司選手の後にマーティン選手、中村奨吾選手、レアード選手が並ぶ打順がうまく機能している。荻野貴選手は今季一度の離脱もなく1番に座り、リーグトップの136安打を記録。中村奨選手も119安打(リーグ5位タイ)といかに上位打線が出塁しているかが分かる。そしてマーティン選手、レアード選手、中村奨吾、安田尚憲選手が50打点を記録しているだけでなく、得点数も荻野貴選手、マーティン選手、中村奨吾がリーグトップ5に入っていることから、上位打線が安打で出塁して主軸が本塁に返す、という理想の形がはまっている。

 レアード選手とマーティン選手を筆頭に長打力も大幅に上がり、昨季は120試合で90本塁打だったところが、今季は111試合で104本塁打(リーグ1位タイ)とシーズン途中ながら大きく上回っている。また、盗塁数もリーグダントツの93盗塁。代走出場の多い和田康士朗選手が22盗塁(リーグ2位)、岡大海選手が11盗塁を記録しており、試合終盤の得点力アップに貢献している。

シーズン序盤は投手陣が崩れるも、徐々に安定感を増していく

 千葉ロッテはこれまで54勝40敗17分と勝ち越しているが、防御率3.76はリーグワースト2位。今季も活躍が期待されていた主力投手が崩れる場面が多く見られたが、試合を重ねるにつれてブルペン陣が安定感を取り戻してきた。

 今季の千葉ロッテは佐々木千隼投手の復活なしでは語れない。2020年から本格的に中継ぎに転向するも5試合で4.1回4失点、防御率8.31と奮わなかったが、今季は44試合に登板し8勝0敗20ホールド1セーブ、防御率1.15。球宴にも初出場するなど、プロ5年目にしてようやく花が開いた。また、6月に横浜DeNAから移籍してきた国吉佑樹投手の存在も大きい。勝ちパターンの一角を担い、15試合2勝0敗10ホールド、防御率1.20と新天地での活躍が光る。

 佐々木千投手を初めとしたリリーフ陣が充実してきたことにより、勝利の方程式を担っていた唐川侑己投手、ハーマン投手の負担を減らした。唐川投手が故障離脱した後も大きな痛手を負わずにカバーできたことが、勝利を重ねた要因と言えるだろう。さらに絶対的守護神・益田直也投手の存在も大きい。開幕戦で2連敗と一時は不調もその後は安定感を取り戻し、リーグ最速の30セーブを記録すると9月8日には通算150セーブを達成。ここまで56試合1勝4敗33セーブ、防御率1.69と接戦でもリードを守る鉄腕の存在は大きい。

 前半戦は石川歩投手や二木康太投手、美馬学投手ら主力先発陣が本領発揮できずにいたが、岩下大輝投手や小島和哉投手など若手が踏ん張った。後半戦に入るとシーズン途中に加入したロメロ投手が、4試合1勝0敗、防御率1.54と抜群の安定力で先発陣を奮起させている。加藤匠馬選手のリードも功を奏しているのか、後半戦でスタメンマスクを被った21試合は13勝3敗5分で勝率.813。新戦力の活躍がチームの起爆剤となっている。

 徐々に安定さを取り戻してきている投手陣であるが、被本塁打の多さは克服するべき課題。チーム全体で見ると被本塁打の数は116本とダントツでリーグワーストの数字を記録。とくに首位オリックスの杉本裕太郎選手は27本塁打を放っているが、そのうち12本が千葉ロッテ戦と、とことん打ち込まれている。残り試合数、そしてクライマックスシリーズを見据えると早急の対応が必要だろう。

昨季のリーグ覇者・福岡ソフトバンクの不調も影響か

 さらに外的要因も考えられる。昨季のリーグ覇者・福岡ソフトバンクが故障者の多発もあってか、4位に位置している。昨季3位の埼玉西武も、源田壮亮選手や山川穂高選手など主力選手の離脱も影響したのか現在5位。チームの好調に加えて、他球団が本調子ではないことも上位進出の一因と言える。また千葉ロッテは開幕5連敗以来、3連敗以上の大型連敗をしておらず、悪い流れを引きずらないこともプラスに作用しているのだろう。

 失点をカバーする強力打線、リードを守る鉄壁のブルペン陣、そして他球団の不調という外的要因、主にこの3つの要素が絡み合い、マリーンズは47年ぶりとなる勝率1位での優勝に手が届きそうな位置までこぎつけた。2位・オリックスとは3.5ゲーム離れているも、まだまだ油断できない。投打ともに好調をキープし、栄光をつかむことはできるか。熱き戦いはまだまだこれからだ。

文・下村琴葉
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