私のミッション・ビジョン・バリュー2021年第1回 タビナス・ジェファーソン選手「人生は自分次第」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【©MITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

今季も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2021年第1回はタビナス・ジェファーソン選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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面談によって言葉が引き出される

Q.MVV作成のための個人面談は何回ぐらい行いましたか?
「僕は担当のカズさん(中川賀之)と接する機会が多く、面談以外でもいろいろ話すことがあったんです。沖縄キャンプが終わってから1週間に1回ぐらい話をすることによって、元々自分の課題であったメンタル面を見つめ直すことができました。会話のすべてがMVVだったわけではなく、試合を振り返りながら、特に感情面のところで『あの時、どう思った』と聞かれて、『こう思ってしまったことを治したい』といったやり取りを続けていました。それを積み重ねながら、MVV作成のための話もして、最終的にMVVを作成しました」

Q.感情面を振り返ることが多かったのですね。
「2人で試合を見ながら、カズさんが質問を投げかけてくるというやり取りをしていました。試合中、熱くなっていることを自分で気づけなかったところを掘り出してもらっていました。その延長でMVVの面談を行うことが多かったですね」

Q.今まで在籍したチームでこれだけ面談を行うチームはありましたか?
「ここまで時間を取って面談をするチームはありませんでした」

Q.自分の内面と向き合うことによって変化はありましたか?
「僕は自分と向き合うタイプなのですが、第三者から質問されることによって、どんどん言葉が引き出されるんですよ。面談が終わった時に気づくことがすごく多かった。それは面談することによってでしか得られないことだと思います」

Q.自分で考えるのと第三者に掘り下げられるのとでは違いますよね。さらに項目を分けて考えていくことは一人では難しいですよね。
「そうですね。頭の中で整理できるようになりました」

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Q.まず、MISSIONについて説明してください。「自分が望む未来は自分の言葉や行動によって手に入ることを証明する」とあります。
「僕がいろんなことを行ったり、成功したりすることによって、子どもたちの憧れの存在になれると思うんですよ。自分が夢や成功をどんどんかなえていくことによって、子どもたちに『僕にもできそう』と思ってもらいたいですし、子どもたちがチャレンジする環境を作ることが大事だと思っています。実は、フィリピンの子どもたちに向けたメッセージでもあります。環境を言い訳にしてほしくないんです。生まれた場所は選べないけど、今の自分からその先は自分次第でどうにでもなる。そういうメッセージを発したいですし、それは自分自身にも言い聞かせていることなんです。自分は夢であった日本代表にはなれませんでした。でも、それは自分では変えることはできません。ならば、これから先、フィリピン代表としてワールドカップに出場したり、選手として成長してチャンピオンズリーグで優勝したり、そういったことは今の自分にできることだと思うんですよ。それを証明したいと考えています」

Q.どんな状況でも自分次第で未来を切り開くことができるということを伝えたいのですね。
「『自分もああなりたい』と思ってもらうことによって、その子がチャレンジするきっかけになると思うんですよ。もし夢がかなわなくても、チャレンジすることに意味があると思いますし、そういう子どもたちが増えてもらいたい。そういう子どもを増やすことが自分のMISSIONだと考えています」

Q.タビナス選手にとって、そういう存在はいましたか?
「自分にそういう存在がいないからこそ、自分がなりたいと思っています」

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Q.次はVISIONについて聞かせてください。「世界中の人たちが笑って暮らせる世界。自分の身近な人たちが幸せと思える世界」とあります。
「まず、自分に関わってくれた人たち、家族や友人や恋人にずっと笑顔でいてもらいたいと思ったんです。そこから、みんなが幸せな世界になるといいなと思うようになりました。そこに書いてあるように、自分の身近な人や関わってくれた人にずっと幸せでいてもらいたいと思いますし、笑顔でいてもらいたい。そのきっかけが自分だったらさらにいいなと思って、この言葉を選びました」

Q.サッカーは世界で最もポピュラーなスポーツですし、活躍することによって、そういったメッセージを発信することができるようになりますね。
「それは間違いないです。フィリピン代表に選ばれた時、本当にたくさんの人が喜んでくれました。多くの人が自分の報道によって、連絡をくれるなどアクションをしてくれたことがうれしかった。サッカーというスポーツにはこれだけの影響力があって、大きな可能性があるとあらためて感じることができました」

Q.ルーツのところに関して言うと、日本で育ったタビナス選手ですが、父親はガーナ人で、母親はフィリピン人という家庭です。そういった様々な大陸の価値観を理解できているタビナス選手の発信することに大きな意義があると思います。
「自分の中にはアフリカと東南アジアの血が流れています。世界に出たら、また違う価値観があります。自分が普通だと思っていることが他の国では普通ではないということを知る事ってすごく大切なことだと思うんですよ。簡単に言うと、日本ではどこの蛇口からも飲める水が出ますが、フィリピンではそうではありません。先日、ドバイに行きましたが、白米の味の違いに驚きました。今の幸せを感じることがすごく大切だと思うんですよ。今の幸せに気づけない人が多い気がします。自分が小さな幸せに気づくことの大切さを周りに広げていきたい。プロサッカー選手として、自分は影響力のある立場にいると思うので、そういう力を活かしていきたいと思っています」

Q.どうしても現状に不満を感じがちになってしまいます。そうではなく、現状の幸せに気づくことによって、人生は豊かになるということですね。そして、そういう人を増やしたいと考えているんですね。
「フィリピンの母親の実家がある地域は決して裕福ではないんです。でも、ストレスに負われることなく、日々を楽しく生きているんですよね。結局は価値観なんですよ。そういう光景を見ると、自分の悩みは小さく見えてしまう。捉え方にとって、自分は幸せと思うことができるんです」

Q.影響を受けた存在はいますか?
「母親の実家の地域の人たちは小さな幸せを感じられる人たちなんです。だから、日々幸せに生きることができているんだと思います。僕の母親もそうなのですが、僕が失敗しても『大丈夫だよ』といつも元気づけてくれる。僕にとっての最高のモチベーターなんです。影響を受けた人物は母親ですね」

Q.タビナス選手自身がそういう思考でサッカーに取り組み、その上で成功することによって、現状の幸せを感じる大切さを発信したいということですね。
「そうです」

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Q.VALUEについて聞かせてください。「目標を具体的に持つこと。未来の自分に誇れる決断をし続け、それを習慣化する」ということですが。
「まず、かなえたいものがなければ、何もかなえることはできない。目標を決めて、どう取り組むかについて、いろんな考え方があると思います。自分が決断する時に大切にしていることは、1年後の自分が、1年前の自分に感謝できるかどうかということ。毎日決断があるんですよ。練習中もここで少し力を抜くかとか、一歩頑張るかとか。そういうことの積み重ねで、未来は作られていく。自分が決めたことでしか、未来の自分は作られない。振り返った時に『あの時、力を抜かなくてよかった』とか、『条件面よりも成長できるかどうかを重視してチームを決めてよかった』とか、未来の自分が納得できる決断したいと思っています」

Q.流れに身を委ねるのではなく、目的地を明確に決めて、それまでの道を自分で選んでいくということですね。
「そうです。『自分次第』という言葉を大切にしているのですが、本当に自分次第でどこまででも行けると思いますし、自分次第でどこまでも落ちることができる。すべて自分が決めることなんです。いつも、自分の中にすべてがある。周りの環境によっていろいろありますけど、結局大切なのは自分の決断なんです。それによって周りも変わってくる」

Q.自分で決めると、責任もすべて自分にかかってきます。苦しい思いをする決断もあったと思いますが。
「決断をする一瞬一瞬にすごくパワーを使うんです。『どれだけ決断しても、結果は同じだろう』と思ってしまう時もあります。それでも、自分と向き合って考えて決めることをぶらしてはいけない。未来の自分に怒られるのは嫌なので(笑)。進むべき道は自分で決めたいと思っています」

Q.過程における一つひとつの決断にタビナス選手のVALUEはあるのですね。
「一つひとつの決断を自分が誇れるかどうかで決めていきたいと思っています。今季の水戸移籍もそう考えて決めました」

Q.着実に前進していますか?
「間違いないです」

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Q.最後にスローガンについて聞かせてください。「人生は自分次第」。先ほど、話された「自分次第」という言葉を選ばれました。
「自分自身で決めて、自分自身がその道を歩んでいく。その過程で自分に関わってくれたみんなを幸せにしていきたいと思っています」

Q.決断によって、いい道を歩めている自負がある?
「そうですね。自分で決めたことだから、やらないといけないと思いますし、覚悟を持てますよね。これからもこの姿勢を大切にしていきたいと思います」

Q.あらためてスローガンを見て感じることは?
「『人生は自分が主役』と迷ったんですよ。でも、『自分が主役』だと少し傲慢な気がしたんです。自分のことしか考えていないような感じがしました。人生は自分次第だし、自分の決断によって周りの人も幸せにしていきたいと考えているので、自分へのメッセージを込めて、『人生は自分次第』にしました」

Q.自分ではなく、周りの人や世界の人たちを幸せにすることがタビナス選手のビジョンですからね。
「スケールが大きい感じがしますが(笑)」

Q.いや、スケールが大きい方がタビナス選手らしいと思いますよ。
「よかった(笑)! ありがとうございます!」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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