守田英正、強豪ベンフィカ相手に大奮闘。逆転優勝目指すポルトが勝ち点とともに失ったのは…【リーガNOS第29節レビュー】

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【©LigaPortugal】

リーガNOS(ポルトガル1部)の第29節が現地24日から27日にかけて開催された。日本人選手たちもプレーした今節の全9試合のレビューをお届けする。

マテウス・ヌネスがスポルティングCPを救った 【©LigaPortugal】

【スポルティング・ブラガ 0-1 スポルティングCP】

 リーグ戦28試合無敗だったスポルティングCPは、開幕以来最大の危機に直面することとなった。序盤の18分、DFゴンサロ・イナーシオが2枚目のイエローカードを提示されて退場に。70分以上を10人で戦うことになり、当然ながら劣勢に立たされる。それでもスポルティング・ブラガの猛攻を守護神アントニオ・アダンを中心とした守備陣の粘りで凌ぎきり、ゴールを許さず。そして81分、右サイドの浅い位置でフリーキックを得たスポルティングCPは、MFペドロ・ポロが意表を突くグラウンダーのパスを縦に送り、それに反応した途中出場のMFマテウス・ヌネスが角度のないところから右足一閃。ごくわずかなチャンスを確実に生かし、ゴールネットを揺らした。結局、数多くのチャンスを作ったブラガは得点を奪えず。チーム一丸で勝ち点3を手繰り寄せたスポルティングCPが、リーグ戦の無敗記録を29試合に伸ばした。

【ベンフィカ 2-1 サンタ・クララ(守田英正所属)】

 サンタ・クララに所属する日本代表MF守田英正は、国内屈指の強豪ベンフィカ相手に印象的なパフォーマンスを披露した。劣勢の状況でも厳しい相手選手からのプレッシャーを巧みにかいくぐり、長短のパスを的確に散らして攻撃にアクセントを加えた。しかし、奮闘及ばずチームは敗戦してしまう。26分、サンタ・クララはベンフィカのFWエヴェルトンにペナルティエリア内深くまで侵入されクロスを上げられると、クリアを試みたFWカルロス・ジュニオールが痛恨のオウンゴールで先制点を献上することに。しかし、62分にサンタ・クララが相手のミスを突いて同点に追いつく。左サイドでMFリンコンがベンフィカのDFニコラス・オタメンディのクリアをカットすると、こぼれ球に反応したFWクリザンがペナルティエリア内深くからマイナス方向に折り返し、最後は中盤から走り込んできたMFアンデルソン・カルバーリョが鋭いシュートをゴール右下角に突き刺した。逆転優勝に望みをつなぎたいベンフィカは、必死の攻めで底力を発揮した。73分、右サイドを突破したMFジオゴ・ゴンサウヴェスのグラウンダーのクロスに、途中出場のMFシキーニョが合わせて再び勝ち越し、2-1で2連勝を飾った。守田は5-4-1のダブルボランチの一角でプレーし、リーグ戦15試合連続の先発フル出場で抜群の存在感を放った。

【ボアヴィスタ 0-1 マリティモ】

 前節終了時点でボアヴィスタは勝ち点28の15位、マリティモは勝ち点27の16位につけており、残留争いの重要な直接対決となった。試合が始まると、両チームともゴール前まで迫りながら、なかなか得点を決められない展開が続く。そんな中、均衡を破ったのはアウェイのマリティモだった。63分、味方の浮き球パスをペナルティエリア内左で受けたFWジョエル・タグエウが、飛び出してきた相手GKの鼻先でボールに触って折り返し、ゴール前のFWアリ・アリプールが詰めて先制点を挙げた。ボアヴィスタは積極的な交代策で状況の打開を試みたものの、同点ゴールは奪えず。勝利したマリティモは勝ち点を30に伸ばして15位に浮上。敗れたボアヴィスタは2部との入れ替え戦プレーオフ圏の16位に転落した。

ジル・ヴィセンテの藤本寛也は3試合ぶりの先発出場 【©LigaPortugal】

【ベレネンセス 2-1 ジル・ヴィセンテ(藤本寛也所属)】

 序盤から多くのチャンスを作っていたジル・ヴィセンテは、43分にカウンターから先制点を挙げる。右サイドでボールを奪うと、素早く前線に展開。パスを受けたFWペドロ・マルケスはペナルティエリア外まで飛び出してきたGKを冷静にかわし、相手DFに背後からタックルを受けながらも無人のゴールにシュートを流し込んだ。3試合ぶりに先発起用されたMF藤本寛也も前半アディショナルタイムの46分に右サイドからのスルーパスで絶好機を演出したが、ペドロ・マルケスがシュートを決めきれず。前半はジル・ヴィセンテの1点リードで終了した。後半に入るとベレネンセスが反撃を開始し、51分に同点ゴールを奪う。コーナーキックのこぼれ球に反応したMFアフォンソ・ソウザが豪快なダイレクトボレーシュートをゴールに叩き込んだ。追いつかれたジル・ヴィセンテは後半も再三チャンスを作ったが、ベレネンセスのGKスタニスラフ・クリチュクの好セーブなどに遭って追加点を奪うことができず、ドロー決着かと思われた。しかし、後半アディショナルタイムの91分に自陣でボールを失うと、ショートカウンターからベレネンセスのMFフランシスコ・テイシェイラにゴールを許して終戦。ジル・ヴィセンテは2連敗となってしまった。藤本は61分までプレーし、交代でピッチを退いた。

【リオ・アヴェ(食野亮太郎所属) 1-1 パソス・デ・フェレイラ】

 リオ・アヴェは開始2分で先制かに思われたが、ゴールはオフサイドの判定で認められず。その後はボールを支配しながら、パソス・デ・フェレイラにより多くのチャンスを作られる難しい展開になってしまった。そして31分、パソス・デ・フェレイラは自陣からの速攻で一気にゴールを陥れた。ロングボールに飛び出したFWドウグラス・タンキからのスルーパスを受けたMFウイルトンが技ありのループシュートでゴールネットを揺らした。1点を追うリオ・アヴェは後半から選手交代も積極的に使って攻勢に出る。すると49分、MFファビオ・コエントランがクロスの折り返しを頭で押し込んで同点ゴール。しかし、その後のチャンスを生かしきれず、終盤にはDFイヴォ・ピントが判定への異議で退場を宣告されてしまい、逆転までは至らなかった。リオ・アヴェに所属するU-24日本代表FW食野亮太郎は79分から途中出場したものの、直後にチームが10人になってしまい、大きな見せ場を作ることはできなかった。

【ファマリカン 2-2 トンデラ】

 ホームのファマリカンは10分、MFイヴォ・ロドリゲスの壁の隙間を射抜く直接フリーキックで先制に成功する。さらに28分、今度はイヴォ・ロドリゲスが左サイドからあげたクロスにFWレアンドロ・カンパーナが合わせてリードを2点に広げた。ところがこのリードは前半のうちに失われることとなってしまった。前半アディショナルタイムの47分、トンデラは左サイドをスルーパス1本で攻略すると、DFフェリペ・フェレイラの折り返しにFWマリオ・ゴンザレスが詰めて1点を返す。直後の48分には敵陣内でボールを奪ってカウンターを繰り出し、MFロベルト・オラべのクロスにFWジョン・ムリージョがヘディングで合わせて同点ゴールを挙げた。後半はお互いにそれほどチャンスは多くなく、2-2のまま試合終了。残留争いから抜け出したかったファマリカンにとっては嫌な流れで失点を重ねてしまい、後味の悪いドローとなった。

ポルティモネンセの安西幸輝は先発フル出場 【©LigaPortugal】

【ファレンセ ポルティモネンセ(安西幸輝&中村航輔所属)】

 1部リーグ残留に向けて連勝を狙うファレンセは、23分に先制ゴールを奪う。右コーナーキックの流れでMFライアン・ゴールドがゴール前にクロスを送り、逆サイドの角度のないところからFWペドロ・エンリケがヘディングシュートをねじ込んだ。その後は一進一退の攻防が続くなか、ポルティモネンセは終盤に相手のミスを突いて同点に追いつくことに成功する。ファレンセのディフェンス陣がゴール前でロングボールの処理にもたつくと、一瞬の隙を見逃さず、MFアイルトン・ボア・モルチが押し込んだ。試合は1-1のまま終了し、勝ち点1を分け合った。ポルティモネンセに所属する日本代表DF安西幸輝は右サイドバックとしてフル出場し、同GK中村航輔はベンチ入りしなかった。

【ナシオナル 1-0 ヴィトーリアSC】

 リーグ戦10連敗中だったナシオナルは、約2ヶ月半ぶりとなる勝利を挙げた。序盤の7分、FWペドロ・メンデスが反転からの見事なミドルシュートでナシオナルに先制点をもたらす。失点したヴィトーリアSCはボールを握って試合を進めるが、相手のゴールを割ることはできず。一方のナシオナルはチャンスの数こそ作れなかったものの、序盤の1点を守って逃げ切りに成功した。ヴィトーリアSCはなんとか6位の座を守った。だが、2月上旬からのリーグ戦14試合でわずか2勝と不振を抜け出せていない。5戦勝利なし、1勝を挟んで5連敗、再び1勝を挟んで2連敗と苦しい戦いが続き、7位以下との勝ち点差も詰まってきた。次節以降の結果しだいでは、一気に中位以下へ転落の可能性も出てきている。

【モレイレンセ 1-1 ポルト】

 逆転優勝を目指すポルトは重要な勝ち点とともに、指揮官も失うこととなった。37分にコーナーキックから、昨季までポルトのBチームに在籍していたモレイレンセのDFナウエル・フェラエシに先制ゴールを許してしまう。76分には自陣でのパスミスを突かれ、モレイレンセのFWアンドレ・ルイスにGKもかわされてしまうが、シュートはギリギリのところでポルトのMFマテウス・ウリベが掻き出し追加点は許さない。1点ビハインドのまま試合は終盤に至り、86分にポルトはついに同点に追いついた。途中出場のFWトニ・マルティネスが敵陣ペナルティエリア内で倒されて得たPKを、FWメフディ・タレミが豪快に決めて1-1に。

 そして後半アディショナルタイムの93分、MFオターヴィオのクロスにトニ・マルティネスが頭で合わせてゴールネットを揺らし、ポルトが土壇場で逆転……かに思われたが、VARレビューの結果オフサイドと判定され認められず。痛恨のドローによりリーグ戦の連勝は「7」で止まり、首位スポルティングCPとの勝ち点差も再び6ポイントに開いてしまった。この試合の終了後、ピッチに入って主審に猛抗議したポルトのセルジオ・コンセイソン監督にレッドカードが提示され、退場処分後も侮辱的な暴言を吐いたとして後日、21日間の出場停止処分と約1万ユーロ(約130万円)の罰金が科されることとなった。これによりコンセイソン監督はリーグ戦最終節までベンチ入りできない。ポルトは逆転優勝がかかった重要な時期を監督不在で戦わねばならない。
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著者プロフィール

ポルトガル・リーグはポルトガルのプロサッカーリーグです。プリメイラ・リーガ(またはリーガ・NOS)とも呼ばれる1部リーグは1934年に開設され、現在18クラブで構成されています。

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