【バレー/SunGAIA】コロナ禍中に新任始動した五十嵐監督インタビュー:シーズン終盤を迎えて〜変革への想い〜

つくばユナイテッドSun GAIA
チーム・協会

【2020-21シーズン水戸大会1勝目【つくばユナイテッドサンガイア】】

 2020-21 V. LEAGUEが開幕し、残りの試合も僅かとなりました。V2リーグ男子、つくばユナイテッドSun GAIA(サンガイア)で今シーズンから監督を務める五十嵐元監督にこれまでの話を聞きました。この記事をご覧の皆様にはチーム・V2リーグ(DIVISION2)・バレーボールについて、興味を持っていただけたら嬉しく思います。

※本インタビューは、1月上旬公開を予定しておりましたが、新型コロナウイルスの猛威による緊急事態宣言の発令、大会中止、つくば大会リモートマッチ変更、等の状況変化が著しい中、公開を延期しておりました。まだまだコロナ禍中で変動激しい時節ではありますが、現場の葛藤をお伝えすることで、少しでも「スポーツを止めず、スポーツの力で社会に貢献できるよう努める」という想いで、少し改変してお届けさせていただきます。

2020-21シーズンスタッフ 右側:五十嵐監督、中:都澤部長、左:西田Dr 【つくばユナイテッドサンガイア】

まず始めに、昨シーズン終了から監督就任までの経緯をお聞かせください

バレーボールやV2リーグに興味をお持ちの方はご存じかもしれませんが、昨シーズン(V2リーグ)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でリーグ戦やチャレンジマッチ(DIVISION1との入れ替え戦)が中止になってしまいました。V2リーグに関わっている多くの方にとって、大きな衝撃だったと思います。我々にとっても、他チームと試合数が異なる状況でシーズン終了となったことは、とても残念なことでした。
昨シーズンはコーチという立場でしたが、すぐに来シーズンのことを考えるわけでもなく、新型コロナウイルスの終息が見えない中でチームを始動しなければいけないことを、時間が経つにつれて徐々に受け止めていくような状況でした。そして、試合が開催できるかどうかもわからない次シーズンに向けて、行動自粛が求められる中でチームとして動き出すという難しい状況で、監督就任の要請を受けました。「試合は本当に開催されるのだろうか」「果たしてチームとして成立するのか」という不安が大きかったのですが、それでも「監督就任の要請は大変光栄なこと」「この状況で自分以外にできる人はいないだろう」と要請に応じることになりました。

新チームがスタートしたときに意識していたことは?

中断となった昨シーズンは、1試合を残して10勝11敗の第7位でした。チームとしても、私にとっても満足する結果ではありませんでした。
シーズン終了という区切りには、例年よりも多くの選手がチームを去ることになりました。多くの選手が日中フルタイムで働いているので、月曜から通常勤務をした後に週末の試合に臨むサイクルがシーズン終了まで続くこの状況が、決して恵まれた環境ではないことは理解しているつもりです。コーチ就任当初から、選手が充実してバレーボールをするための手助けになれればと思っていましたが、一方でモチベーションを削ぐことに加担していたのではないかと回顧して、力のなさも痛感していました。ただ、自分の無力さは監督就任を決めた時点で考えている場合ではなく、勝利はもちろんですが、選手が充実してバレーボールができるように、必要なことがなんなのかを考えながら新チームスタートのミーティングに臨みました。

ミーティングではどのようなことを選手に伝えたのですか?

今シーズンは、スタート時に改めてチームの『目的』を伝えました。チームと個人の価値観が共鳴すれば、大きな力が生まれると考えています。そして、共感してもらえなくても、選手個人の目的を達成するためにチームでプレーすることが必要であれば、チームの目的のために力を貸してほしいと選手に伝えました。
 昨シーズンは、年が明けて仕切り直しの試合で、V3から昇格したばかりのヴォレアス北海道、ヴィアティン三重と対戦をしましたが土曜日のヴォレアスには0:3、日曜日のヴィアティンには2:3で敗れて、チームが大きく揺らいでしまうことになってしまいました。この2試合は、徐々に近づいてくる敗北に直面したときに、選手それぞれがフラストレーションを抱え、コート内が怒り、呆れ、諦め、傍観、他責など、一言では言い表すことのできない負のエネルギーに支配されてしまいました。この負のエネルギーに打ち勝つことが、多くの退団者を出すことを防ぐだけではなく、チームが勝利に近づき、さらには応援してくださるファンの方を喜ばせるといったチームの目的を達成する可能性をもっていると考えました。

なぜ『目的』にフォーカスしたのですか?

指導者研修や学会、書籍など様々な場所でゴールデンサークルという理論が紹介され、触れることになりました。詳細は割愛しますが、『何(What)』よりも『なぜ(Why)』が重要だという理論のようです。昨シーズンは、チームが重苦しい雰囲気にのまれている最中、ゴールデンサークルの説明を思い出し、選手にチームが戦う『目的』を尋ねてみました。しかし、その問いに選手は何の迷いもなく答えることができました。この問いに選手が答えられたのは、当然答えを知っているからです。しかし、選手は『目的』を頭でわかってはいるが、腑に落ちておらず、『目的』を達成するための行動にいたらない状況だったと考えました。今シーズンは昨シーズンからいろいろ変化させてはいますが、私が最も意識している点は『目的』を伝える回数を増やすことと、頭で理解するだけではなく、納得してほしい、腑に落としてほしいと伝える、この2点です。
『目的』に関しては選手に日々伝えているつもりですが、選手が目的についてあやふやになるたびに説明しなおすと長くなってしまいます。そこで、昨シーズンから全てを『変える』という簡潔な思考になれるよう『変革』というスローガンを掲げました。そして、悩みや迷いが生まれたときは、チームが戦う『目的』に立ち返ってほしいと選手に伝えるようにしています。実際は私自身に言い聞かせているようなものですが、昨シーズンの結果、試合やそこに至るまでの取り組み、すべてにおいて変化する必要があるというスタッフとしての意思表示でもありますし、技術、戦術から昨シーズンを振り返っても変化は必須だと思っています。

2020-21シーズン中 五十嵐監督・#8曹選手 【つくばユナイテッドサンガイア】

具体的にはどのような取り組みが行われていますか?

これまでお話ししたことはコロナ禍でのことでしたので、新チームのスタートミーティングはzoomで行いました。私は何度かzoomを使用したことがあったのですが、選手にとっては初めてのことだったと思うので、戸惑いもあったと思います。そこから活動をスタートさせるにも、チームとして対面して活動することが困難だったので、選手を3グループに分けてzoomやLINEを活用したオンライントレーニングからスタートしました。専門的な知識が十分ではないことも考慮し、当時在籍していたトレーナーにも協力してもらいました。ただ、あまり介入しすぎると選手の成長の機会を奪ってしまうことにもつながると考え、あくまでも選手が主体でオンライントレーニングを実施するよう伝え、トレーナーがサポートするような形態をとることにしていました。
 昨シーズンは技術、戦術について多くの提案を選手にしました。私が練習に出られない日も多いので、ちょうどよい情報量になればと思っていましたが、結果的には失敗だったと思っています。その反省を踏まえて、今シーズンは選手にトレーニングや練習メニューを提案してもらうことも多くなりました。オンラインでのスタートから練習の提案まで、昨シーズンとは違うことが多く、選手は戸惑うこともあったと思いますが、ここまでよくやってくれていると思います。
 フロントの活動にも選手が参画してくれています。チケット販売促進やSNS広報、イベント推進に関して選手が各々担当しています。選手にさせることではないというご批判もあるとは思いますが、クラブチームの活動として、選手は慣れない作業にも協力してくれています。

2020-21シーズン中 五十嵐監督・新人の#10鎌田選手……今シーズンは、周囲スタッフはマスク、フェイスシールド着用で感染対策実施 【つくばユナイテッドサンガイア】

最後にこの記事をご覧の皆様にメッセージをお願いします!

チームの戦う『目的』に選手が共感してコート上で輝き、その姿を見たファンの方が共に勝利を喜び、敗北の悔しさを共感し、優勝をともに歓喜する。我々のチームのみならず、多くのチームが思い描く理想像だと思います。しかし、今のチームはそのような姿にはまだまだ至っていないのが現状ではあります。私は、チームの『目的』を果たす方法が勝利や優勝であり、勝利や優勝が叶わなくともほかの方法で『目的』を果たす必要があると思っています。しかし、ほかの方法があるといっても、競技スポーツの現場で戦っている以上、選択肢は『勝利』しかないと思っています。一見矛盾しているように聞こえるかと思いますが、結局『勝利』でしか『目的』は果たせないと思っています。
結果が伴わず優勝の可能性が消滅しても、あくまでも勝利を求め続けプレーをすることで、見ているファンの方が選手の日々の鍛錬や、バレーボールに対する情熱を感じて、勝利以外の方法でわずかながら何か発信する可能性が生まれると思います。ただ、勝利を目指すことで生まれる発信は、見ている人に依存した偶発的なもので、確実なものではありません。ただし、勝利が『目的』を達成する確実な手段ではないとも思いますし、敗北が偶然何かを発信することが、スポーツの魅力だとも思っています。昨シーズンの反省や、コロナ禍を考慮して準備したシーズンは、現在6勝7敗第4位(2月8日現在)で、なかなか勝利をもたらすことができていない状況ですが、選手は苦しみながらも前向きに勝利を目指しています。敗北の悔しさを共感してくださっているファンの方に、何とか勝利の喜びを届けられるようにしたいと思います。新型コロナウイルスが今後どうなるかわからない現状ではありますが、今シーズンだけではなく末永く応援していただけるチームを目指していきます。これからもよろしくお願いいたします。

2020-21シーズン土浦大会 五十嵐監督インタビュー 【つくばユナイテッドサンガイア】

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著者プロフィール

V.LEAGUE DIVISION2 MEN(V2リーグ)に所属し、ホームタウンを茨城県つくば市におくバレーボールチームです。 2005年に筑波大学バレーボール研究室の研究実践機関として発足し、「Sports for All, All for Sports」の理念のもと、地域密着の活動で地域を活性化しながら、皆さんと共に日本一になることを目指しています。

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