データでもわかる牝馬の活躍が際立った2020年の重賞戦線
【2020/11/29 東京12R ジャパンカップ(G1) 1着 2番 アーモンドアイ】
G1の勝ち星数で言えばグランアレグリアは3勝(安田記念、スプリンターズS、マイルチャンピオンシップ)を挙げた。特に安田記念ではアーモンドアイを2着に退けて勝利しており、内容・インパクトの面でも高く評価できるものだ。また、クロノジェネシスは6月の宝塚記念に続き、年末の有馬記念も制覇。グランプリを1番人気に応えて勝利という素晴らしい結果だった。
全性が出走できる平地重賞で牝馬が勝利したレース数と主な勝ち馬
■表1 【全性が出走できる平地重賞で牝馬が勝利したレース数と主な勝ち馬】
19年はリスグラシューが宝塚記念と有馬記念を優勝。さらにアーモンドアイが天皇賞(秋)を制し、グランアレグリアは阪神Cを勝った。しかし、牝馬の勝ち星数は12にとどまった。18年はアーモンドアイがジャパンCとシンザン記念を勝つものの、牝馬の勝ち星数は11。17年はスマートレイアーが京都大賞典、ルージュバックがオールカマーを勝ったがG1を勝った馬はいなかった。合計勝ち星も6しかなく、これは過去10年で最も低い成績となっている。
16年はマリアライトが宝塚記念を優勝。ルージュバックは毎日王冠とエプソムCを制した。15年はショウナンパンドラがジャパンCとオールカマーを優勝。牝馬の勝ち星数は14で、一応過去10年では2番目に多かった。
12年から14年にかけてはジェンティルドンナが毎年G1を勝利したが、牝馬の勝ち星は14年10、13年9、12年10だった。11年はカレンチャンがスプリンターズS、ブエナビスタがジャパンCを勝ち、勝ち星数は13だった。
こうしてみると牝馬が牡馬を相手に古馬のG1を勝つことは当たり前になっている。特に中央競馬の花形ともいえる芝中距離の大レースで主役を張れる牝馬が続々と出てきている印象だ。ただ、そんな中でも昨年マークされた勝ち星数26は驚異的で、他の年の平均に比べてダブルスコア以上の差をつけている。アーモンドアイは20年のジャパンCをもってターフを去ったが、クロノジェネシスとグランアレグリアは今年も現役を続行する。無敗で牝馬3冠を達成してジャパンCは3着だったデアリングタクトの存在もあるので、今年の重賞も牝馬の活躍から目が離せないことになりそうだ。
ちなみに20年前の2001年についても同じようにデータを表1に記載した。対象レース数は89で今よりも若干少ないものの、牝馬は12勝を挙げていた。主な勝ち馬はビハインドザマスク(スワンS)やスティンガー(京王杯スプリングC)。他にはブロードアピールが阪神ダート1400mで行われたシリウスSとプロキオンSを優勝。そしてメジロダーリングが函館スプリントSとアイビスサマーダッシュを勝った。この年は1400m以下のレースで活躍が目立った。ただし、G1の勝利はなかった。
後に今から30年前にあたる1991年はどうだったか。対象レースは74(芝71、ダート3。アラブのレースは除く)と現在よりもかなり少ない時代だった。そんな中で牝馬は18勝も挙げていた。レース数に対する割合は約24.3%だった。2020年の同割合は約27.4%なので、1991年も牝馬がとても活躍したと言っていいだろう。具体的にはダイイチルビーが安田記念とスプリンターズSを優勝。そして3歳(現2歳)のニシノフラワーが札幌3歳S(札幌芝1200m)とデイリー杯3歳S(京都芝1400m)を勝利した。
牝馬が牡馬を負かして重賞を勝つことは30年前も意外と多かった。最近10年の間で特別増えたという感じではなかった。しかし、2020年だけは26勝と異例と言えるほどたくさん勝った。前述した3頭以外にもラッキーライラックが大阪杯、モズスーパーフレアが高松宮記念を勝っており、G1は9勝と中身も素晴らしいものだった。
文:小田原智大(おだわら ともひろ)
1975年6月、東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、業界紙記者を経て、(株)レイヤード入社。ライター&エディターとして活躍。JRA-VANデータの配信初期から、いち早くデータ競馬の有効性に着目する。05年5月より「競馬 最強の法則WEB」にて、障害戦を除く全重賞レースの傾向と対策、予想を展開。「オッズパーク ダートグレードデータ作戦」では、地方競馬の重賞の攻略にも取り組んでいる。仕事の関係でなかなか競馬場には行けなくなったが、年に1、2回行くローカル遠征が楽しみ。
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