【水戸】私の「ミッション・ビジョン・バリュー」 第16回森勇人選手「誰からも愛され心揺さぶる選手に」
【ⓒMITOHOLLYHOCK】
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。
多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。
その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。
ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針
原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。
17名の選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
第16回目は森勇人選手です。
(取材・構成 佐藤拓也)
【ⓒMITOHOLLYHOCK】
「作りました。昨年と多少内容は変わりました。アップデートしたという感じです。面談の中で西村卓朗GMから自分のことだけでなく、社会にいかに貢献できるかを考えてほしいという話をされたこともあって、そういった部分もより意識したMVVになっていると思います」
Q.MVVを作ってみていかがですか?
「MVVを見ることによって、自分の原点や目標を見つめる機会ができるので、作ってよかったと思っています」
【Mission】
「今年でプロ7年目ですが、いろんな経験を経て、サッカーは自分ひとりではできないと気づかされました。特に今シーズンは新型コロナウイルスという目に見えないものと戦いながらも、よりJリーグを盛り上げようとしてくれる様々な人のおかげでリーグ戦を開催することができている。そして、リーグ最終盤を迎えることができています。周りで支えてくれる人や応援してくれる人は本当に尊い存在なんだということを今まで以上に気づくことができました。そういった人たちに対して感謝の気持ちをプレーで表現したい。そういう思いから、その言葉を選びました」
Q.「ピッチ内外で必要な役割」とは? 特に「ピッチ外で必要な役割」とは何でしょうか?
「サッカー選手は憧れの存在になるべきだと思います。僕自身、サッカーがうまいだけではなく、人としてもプロフェッショナルでありたいと思っています。そういった中で昨年のMVVの中で『24時間サッカーのために使う』という言葉を使いました。ピッチ内外で自分のやるべきことをやるという思いだったのですが、それがより明確になったのが今年のMissionです。今年は新型コロナウイルスの影響でプレーができない時間が多かった。その中でサッカー選手として何ができるかを考えた結果、子どもたちとZoomを使ってコミュニケーションを図ったり、一緒に運動をしたり、サポーターのみなさんとミーティングをしたり、お話をする機会を作ることができました」
Q.今年、クラブが実施した「推しメン総選挙」で1位に輝きました。そういった活動がサポーターから評価されていることを証明する結果となりましたね。
「うれしい気持ちでいっぱいです。本当に励みになります。ホーリーホックのサポーターだけでなく、以前所属していたチーム時代から応援してくれる人もいる。移籍をしても僕のことを応援してくれる人がいるのは本当にうれしい。サッカーは人のつながりが大切なスポーツだと思います」
Q.今年の沖縄キャンプでは以前所属していたチーム時代からの森選手のファンの方が練習見学に来ていました。
「こういう職業でなければ、なかなかないことですよね。今、水戸ホーリーホックの選手として何ができるかと言ったら、そういう方に喜んでもらうことなんですよ。ピッチ外でのコミュニケーションも大事ですし、ピッチの中では形のない気持ちというものを見せることを意識しています」
【Vision】
「ちょっと難しい言葉になってしまいましたが、Missionとつながっていて、今自分が何をすべきなのかを考えて行動した結果、誰かに元気を与えることや勇気を与えることまで考えられるようになったらいいなという思いを込めて、この言葉にしました」
Q.今年は「社会に影響力を持つ」ことを考えるようにうながされたとのことですが、それが込められた言葉のような気がします。
「今の自分は日本を代表する選手ではありません。僕がどれだけ影響力があるか分かりません。でも、少なからず、僕のことを応援してくれる方やユニフォームを買ってくれる方、タオルマフラーを買ってくれる方がいる。その方々にパワーを与えることは僕にもできるんです。ならば、僕は何も恥ずかしがることなく、ピッチ内外のことに全力で取り組むことが今の自分にできることなんです。それが自分自身にできる最大の社会に対する貢献だと考えています」
【Value】
「毎日毎日自分の最高を作る。誰かと比べるのではなくて、今できる自分の最高の準備を続ける。食事や睡眠、体のケアやトレーニングに対する準備だったり、そういったすべてにこだわり続けることによって、チャンスを逃さないようにするという思いですね。いつチャンスが来てもいいように、常に最高の準備をしておく。そういう思いを込めた言葉です」
Q.いつチャンスが来るか分かりませんからね。
「昨年は『自分史上最高を作り続ける』というテーマを掲げていました。継続というより、日々進化していきたいという思いがあります」
Q.その次に「TR、TRMへの取り組み、結果(信頼を勝ち取る)」です。
「それも昨シーズンからの継続です。試合に出られない時こそトレーニングやトレーニングマッチで結果を残すことを意識していました。当たり前のことですけど、そこにこだわらないと試合に出ることはできません。そして、結果を出し続けることによって、監督やチームメイトから『コイツなら任せられる』と信頼される選手になりたいと思って、その言葉を選びました」
Q.次は「努力の量、質(期待感を持たせる)」とあります。
「自分自身の考えとして、努力は量が大切だと感じています。量があるから、質が高まっていく。そこは自分が大事にしていることです。サッカーに限らず、いい仕事をする人は量をこなしているんですよ。こなしていくからこそ、取捨選択ができるようになって、質が高まっていく。そこは意識しています」
Q.(期待感を持たせる)とはどうつながっているのですか?
「周りから『コイツはこれだけやっているから結果を出すのは当然』と思われるようになりたい。努力の量が必ずしも結果につながるとは思っていません。でも、結果を出す人は必ず相当な量の努力をしている。なので、努力することが期待感につながると思っています」
Q.そして、「自分らしさの確立(どのポジションでも結果を出す)」とあります。
「それも昨年から引き続きの項目です。昨年はサイドMFだけでなく、ボランチ、トップ下、サイドバックなどいろんなポジションでプレーしました。その中で大事なことは自分らしさを出すこと。自分らしさとは何かというと、運動量多く、ボールに関わりながらゴールに向かっていくプレー。どのポジションでプレーしても、大事なことはそれをどれだけ出せるかだと思っています」
Q.最後は「オフの過ごし方(運を勝ち取る行動)」です。
「繰り返しになりますが、24時間をいかにサッカーのために使えるかを考えて行動するかを大切にしています。オフだからこそ、体のメンテナンスをしたり、心のリフレッシュに時間を費やしたい。オフだからといって不摂生な生活はしないようにしています。ちゃんと生活のリズムを守って過ごす。寝てばかりいないで、ジムに行ったり、ヨガに行ったり、マッサージを受けに行ったりしています。水戸に来る前からそういう行動をしていましたが、水戸に来てより意識してそういう行動をするようになりました」
Q.「Value」には、まさに今まで森選手が取り組んできたことが書かれてありますね。これを継続することによって結果がついてくることを今季の森選手は実証していますね。
「あらためてすべてつながっていると感じています。名古屋時代もG大阪時代も意識して取り組んできましたが、ここまで明確ではありませんでした。水戸で言語化し、日々アップデートしてきた中で、そういった行動が当たり前にできるようになっている。ここまで精度を高めて取り組めれば、成長につながり、結果につながるんだなと実感しています」
Q.いい時は継続できますが、うまくいっていない時に継続することが難しいですね。昨年は出場機会に恵まれない中でもずっと続けました。それが今年に生きているように感じます。
「Valueに関しては昨年と変わっていません。今年はある程度、試合に出るサイクルを過ごせているので、メンタル的にはだいぶ整っています。うまくいっていない時に続けてきたからこそ、この状態につながっている。他の仕事でも同じだと思います。悪い時でも続けることが成長につながる。そういうことも今後発信していきたいと考えています」
【スローガン】
「サッカー選手としても、人としても愛されたいと思っています。そのためにも心を揺さぶるような、感動をするようなプレーをしていきたい。その思いからこの言葉にしました」
Q.「心を揺さぶる」プレーは簡単ではありません。本当に毎日努力して、最後の最後に出るものですよね。
「一番難しいことだと思います。でも、サッカーではそれができると思っています。心は見えません。だからこそ、感じさせることができたら、すごくうれしいんです。見えないものを感じ取ってもらえることをもっともっとできるようになりたい。(本間)幸司さんやホソさん(細川淳矢選手)から僕自身そういうものを感じ取っています。その2人は、そこにいるだけで空気を変えることができるんです。『心を揺さぶる』ことは水戸に来てから特に大切にしていることです」
Q.話を聞いていて、胸が熱くなりました。
「残り3試合ですからね。J1昇格の可能性はもうありません。自分だけの思いでプレーしていたら、モチベーション的に難しい。でも、僕らは違います。第38節磐田戦では冬の雨が降っているナイターに1500人を超えるお客さんが来てくれました。そういう人たちのために最後まで気持ちを込めてプレーすることが大切だと思っています」
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