【水戸】私の「ミッション・ビジョン・バリュー」 第4回:瀧澤修平選手「成長し続ける」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

17名の選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
第4回目は瀧澤修平選手です。


(取材・構成 佐藤拓也)

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

Q.瀧澤選手は昨年もMVVを作成しましたか?
「しましたね。昨年からスタンス面談を行い、今年もMVVを作成しました。面談では『なぜサッカーをはじめたのか』というところからスタートして、これまでのサッカー人生を振り返りながら、自分がどういう時にサッカーをする喜びを感じるのかなど、サッカーをする上でのやりがいを発見していくという感じでした」

Q.それだけしっかりと人生を振り返ったことはありますか?
「なかったですね。自分でなんとなく思っていたことが言葉に出てきて、『自分はこんなことを思っていたんだ』と気づくことがありました。それまであまり意識していなかったことを意識できるようになりました」

Q.MVVを作成して、何か変化を感じますか?
「やりがいを明確に感じるようになりましたね。自分が一番幸せを感じるのは他者貢献をした時なんです。そこをモチベーションに頑張ろうとあらためて思うことができました」

【Mission】

Q.まず「Mission」は「誰にでもチャンスはあることを、自分自身を通して証明する」とあります。
「僕はずっとサッカーで強豪校や強豪チームでプレーした経験がありません。僕自身も無名のプレーヤーでした。高校時代は3年時の全国高校サッカー選手権大会予選は県大会にも出られませんでした。そういう環境でも前向きにサッカーに取り組めたのは、中澤佑二選手の本を読んだことがきっかけです。中澤選手は三郷工業高校というサッカー界では無名の高校からブラジルに留学して、日本に戻ってきてプロの契約を勝ち取り、日本代表まで駆け上がりました。そのことを知って、僕にもプロになるチャンスがあるかもしれないと思って取り組むようになりました。そして、実際プロになることができました。なので、今、強豪校や強豪チームに入れなかったとしても、諦めることなく、高みを目指して頑張れば、可能性はあるよということを多くの人に伝えたい。それが自分のMissionだととらえています」

Q.活躍して、強豪チームに入れなかった子どもたちに夢を与えたいということですね。
「進路がうまくいかなかったり、希望のチームに入れなくても、諦めることなく、夢を追い続けてもらいたい。そこで努力を続けることによって、チャンスは必ず転がってくる。その時のために努力し続けてほしいと思います」

Q.プロになるために特別な取り組みをしましたか?
「高校時代、ちゃんと指導してくれる指導者がいなかったので、練習を自分たちで考えないといけなかったんです。もっとうまくなるためにはどうしたらいいかを考えて練習することを繰り返していました。その習慣があったので、それ以降細かいところまでこだわって練習するようになりました。そこで自分の基礎が作られたという実感はあります」

Q.大学時代には大きな挫折もあったとのことですが。
「大学1年の時に大きな挫折をしました。自分がダントツで下手で、『やめたい』とずっと思っていました。乗り越えたというよりも、なんとか耐えたという感じです。まったくうまくいかない状況で全治8カ月のけがをしてしまったんです。でも、その間に頭を整理することができたことによって、力を発揮できるようになりました。それまでは本当に耐えるだけでした。うまくいかない時って、どうしたらいいか方向性が見えなくなることがあるんですよね。でも、そういう時こそ、やるべきことをはっきりさせることが大事だということを学びました。監督にも『どうしたらいいか』を聞きに行きましたし、けがをしている間に自分と向き合えたことが自分を救いました」

Q.そこまで挫折した原因は何だと思いますか?
「はじめてちゃんとした指導を受けたことによって自分の足りないところがたくさん見えてしまったんです。周りはJリーグのアカデミー出身の選手や全国の強豪校出身の選手ばかりだったので、土台がちゃんとできていた。僕は何もない状態だったんです。でも、けがをした時に分からないことを監督に聞きに行ったり、試合を外から見たりして、頭の中を整理することができました。それによって、前に進むことができました」

Q.その経験をしたことによって強くなったのですね。
「その時の挫折は乗り越えられないと思っていました。でも、あれだけサッカーを嫌になっても続けられるぐらい、サッカーが好きなんだと分かったんです。これから、どんなことがあっても乗り越えられると思ったし、どんなことがあってもサッカーを好きでいられる自信がつきました。苦しんだ分、リターンが大きかったです」

Q.大学卒業後、当時J3のFC琉球に加入してJ2昇格を経験。昨年水戸に加入しました。プロとして活躍し続けていることによって、「誰にでもチャンスはある」ことを実証できていると思うのですが。
「まだまだですね。まだ多くの人は『瀧澤修平って誰?』という感じだと思うので、もっと活躍して存在を示していきたいですね」

【Vision】

Q.「Vision」には「誰もがチャレンジすることを諦めない社会に」と書かれています。どんな思いが込められていますか?
「それもMissionとつながるのですが、自分が置かれた環境や境遇を言い訳にしてほしくないんです。環境のせいにしてやりたいことにチャレンジしないことはすごくもったいない。僕がプロとして成功することによって、『俺もチャレンジしよう』と思う人を増やしていきたい。そんな存在になりたいと思っています」

Q.昨年はチャレンジした結果、J1昇格まであと一歩まで迫りました。
「みんなで一つになって1年間戦ってきて、あと一歩及ばなかったというのは自分の人生においてはじめての経験でした。最終戦で決めたゴールを僕は一生忘れないですし、あの悔しさも一生忘れない。昨年泣いた『1点の重み』は絶対に忘れてはいけない。意識的にでも思い出すようにしていきたいと思っています」

Q.今季にもつながっていますか?
「もちろん、忘れたことはないです。試合中だけでなく、練習中からその思いを持ってしっかり取り組むことが大事だと思っています」

【Value】

Q.「Value」についてお話を聞かせてください。まず「良い準備」とは?
「たとえば、食事に関して『何を食べるか』『何を食べないか』や、何時に寝て、何時間寝るとか、毎日お風呂に浸かって、その後にストレッチをするとか、すべての行動をサッカー中心に行って、次の練習のために最大限の準備をすることを心がけています。その積み重ねでパフォーマンスは変わっていくと思いますし、僕みたいな凡人タイプの選手はそういうところをしっかりやらないと周りに追いついたり、差をつけたりできない。なので、細かいところを一つひとつの行動にこだわっていくことを意識しています」

Q.「常に成長する意識」とは?
「練習ではチームの課題と個人の課題にフォーカスして取り組みますが、僕は練習以外の時間でも自分のプレーはもちろんのこと、他のチームの試合の映像を見て、いろんなことを吸収しようと思っています。参考になるプレーの映像を保存して何度も見ることによって、自分のプレーのイメージにつなげることができる。それを自主練習で取り組むことによって成長につながると感じています。他には読書をして、サッカー以外の知識を増やすこともしています。そういうことに練習以外の時間を費やしたいと思っていますし、それによってサッカー選手としても、人としても、毎日少しずつでいいから成長していきたいと思っています」

Q.その次に「自分なりに積み上げ続ける」とありますが、これは今までのサッカー人生で続けてきたことですよね。
「現在大学の同級生でプロとしてプレーしているのは僕だけです。なので、今までのやり方で間違っていないと思っています。方向性は間違っていないとは思うので、これからはさらに質を高めていきたいと思っています」

Q.継続することが大変だと思います。でも、学生時代から日の目を見ない中でも続けてきたことが瀧澤選手の「Value」ですよね。
「そうだと思います。性格的にも一度決めたらずっと続けられるタイプなんです。そこは自分の強みだと思います。今まで自分より才能がある選手をたくさん見てきました。でも、やり続けることができる人は少なかった。そこで差をつけることができたと思っています」

【スローガン】

Q.スローガンは「成長し続ける」。この言葉がすべてですね。
「今までの人生もこの言葉を大切にしてきました。サッカー選手としても、人としても成長し続けることが自分の人生のテーマでもあります。この意識だけは絶対に忘れないようにしています。一生成長していきたいと思います」

Q.成長を感じる時はありますか?
「あります。1日1日では分かりませんが、1年などの大きなスパンで考えた時に成長を感じることはあります。そのためにも日々の取り組みが大事。それがなければ絶対に成長はありません。日々の取り組みを継続することによって、成長と結果につながると思っています」

Q.リーグ戦も終盤戦となりました。最後まで成長し続けて、少しでもいい結果を残したいですね。
「J1昇格は厳しい状況ですが、一つでも順位を上げて、過去最高の順位を目指して戦い続けます。当然試合に出てチームに貢献したいという気持ちが強いので、ピッチに立って水戸の歴史を塗り替えることにチャレンジしていきたいと思います」

【ⓒMITOHOLLYHOCK】

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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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