前走で逃げた馬が多いレースは差し馬有利?

JRA-VAN
チーム・協会

【2019/12/8 阪神11R 阪神ジュベナイルフィリーズ(G1) 1着 4番 レシステンシア】

レース結果を大きく左右することも少なくない「展開」。各レースの予想をする際にはまず、そのレースの展開から考えるという方もいるだろう。一般的には逃げ馬や先行馬が多いレースでは差し・追い込み馬が有利になり、逆に少なければ前残りになりやすいと言われるが、実際の結果も果たしてその通りなのだろうか。今回は「前走で逃げた馬の数」から、脚質別の成績を探ってみたい。
データ分析にはJRA-VAN DataLab.とTARGET frontier JVを利用した(脚質分類はTarget frontier JVによる)。集計期間は表1〜4が2017年以降、表5は2011年以降、本年5月3日まで。集計対象は、キャリアが浅く脚質が定まっていない馬も多い2、3歳限定戦を除いた平地全競走とし、前走脚質も平地競走のみとしている。なお、前走で逃げた馬の数には前走と当該レースの間に除外・取消を挟んだ馬は含まず、当該レースを除外・取消になった馬は含んでいる。

脚質別成績

■表1 【脚質別成績】

まずは2017年以降の「3歳以上」「4歳以上」平地競走における、当該レースと前走の脚質別成績を見ておきたい。このような幅広い条件のレースを対象とした集計では「逃げ」「先行」が好成績を残すことが多く、この集計でも「逃げ」「先行」がともに複勝率35%ほど、そして単複の回収率は100%を超えている
その一方で、前走で「逃げ」「先行」だった馬は、好走確率こそ「中団」「後方」より高めに出ているものの、単複の回収率は決して高くない。それぞれのレースで逃げる馬、先行する馬を確実に当てられれば儲かるが、前走で逃げた馬や先行した馬を買い続けるだけでは損をする、というデータだ。

前走「逃げ」の馬が1頭も出走しなかったレースの脚質別成績

■表2 【前走「逃げ」の馬が1頭も出走しなかったレースの脚質別成績】

表2は、前走で逃げた馬が1頭もいなかったレースについて、脚質別の成績を調べたものである。「逃げ」「先行」の成績が良いのは表1と同じだが、好走確率、単複の回収率ともに表1を上回っている。このようなレースでは、もともと行く気がなかった馬が押し出されるようにして先頭に立つこともあれば、前走で「逃げられなかった」馬が楽に先手を奪うこともある。それらをトータルすればやはり前へ行った馬のほうが有利、そして「逃げ」「先行」に該当する馬をズバリと当て続けられれば、馬券を買っても儲かるということだ。

前走「逃げ」の馬が1頭だけ出走したレースの脚質別成績

■表3 【前走「逃げ」の馬が1頭だけ出走したレースの脚質別成績】

続いて表3は、前走で逃げた馬が1頭だけ出走したレース。やはり「逃げ」「先行」が好成績を残すが、ここで注意したいのは前走で逃げた馬の成績はさほど良くないことだ。別途データを調べると、前走で逃げていた馬のうち、当該レースでも逃げられたのは40%ほどしかいなかった。「前走・逃げ」が1頭のレースというと簡単に展開を予想できると考えがちだが、それでは痛い目に遭うことが多くなってしまいそうだ。

2019年阪神ジュヴェナイルフィリーズは、前走で逃げていた馬がエレナアヴァンティ1頭だった。だが同馬ではなく、前走では2番手からレースを進めていたレシステンシアがハナを切り、そのまま5馬身差の圧勝劇を演じている。

前走「逃げ」の馬が4頭以上出走したレースの脚質別成績

■表4 【前走「逃げ」の馬が4頭以上出走したレースの脚質別成績】

今度は、前走で逃げた馬が4頭以上出走したレースについて見てみたい。逃げ馬が多ければ先行争いが激化し、「中団」や「後方」の好走確率が上がってきそうなものだが、集計結果はまったくそのようなことはなく、やはり「逃げ」「先行」が強かった。あえて言えば「後方」の複勝回収率が表1〜3に比べやや高いが、それでも44%止まりでは到底「買い」とは言えない。

2019年フラワーCは前走で逃げていた馬が4頭出走したレース。そのうちの1頭、2番人気コントラチェック(前走逃げ切り勝ち)がここでも逃げて勝利。前走逃げ切り勝ちで今回は差しに回った1番人気エールヴォアは2着に敗れた。

前走「逃げ」の馬が4頭以上出走したレースの脚質・距離別成績(2011年以降)

■表5 【前走「逃げ」の馬が4頭以上出走したレースの脚質・距離別成績(2011年以降)】

前走で逃げた馬の数は関係なく、前へ行った馬が有利で回収率も高いというのが表1〜4の結果。もちろん、前走ではなくそのレースで「逃げる馬」「先行する馬」を高確率で当てるのが難しいゆえの高回収率だが、展開予想が好きな方にとっては少々面白みに欠ける結果になってしまった感は否めない。
そこで最後に、前走「逃げ」の馬が4頭以上いたレースについて、芝ダートとも1600m以下と1700m以上に分けて脚質成績を集計してみた。サンプル数を増やすために、この表のみ2011年以降を対象としている。その結果、芝のレースでは逃げた馬の複勝率が大きく低下していることがわかった。芝1600m以下では集計対象全体に比べ5.2ポイント減、芝1700m以上では7ポイント減。対してダート1600m以下は2.3ポイント減、そしてダート1700m以上ではわずか0.3ポイント減にとどまる。「先行」の複勝率も芝では全体よりわずかに低下、ダートはほぼ同じだ。芝の「逃げ」「先行」とも単複の回収率は高いため「消し」とは言えないが、疑ってかかるとすればここだろう。

以上、「前走で逃げた馬の数」が脚質成績にどんな影響を及ぼすかを調べてみた。最後の表5ではちょっとした違いをひねり出してみたが、基本的には前走で逃げた馬が何頭いようが、そのレースで逃げられる馬、先行できる馬が「買い」。逃げ・先行馬の中でも各馬のダッシュ力や枠順、騎手の性格などさまざまな要素から、いかに「そのレースでの脚質」を見抜けるかがポイントだ。

文:浅田知広(あさだ ともひろ)
1970年12月、埼玉県生まれ。立命館大学文学部中退後、夕刊紙レース部のアルバイト、競馬データベース会社を経て、現在はフリー。パソコンが広く普及する以前から、パソコン通信でデータ手入力方式の競馬予想ソフトを公開するなど、競馬のみならずPCやネットワークにも精通。その知識を活かし、Webや雑誌で競馬ライターとして活躍するかたわら、ネットワークの専門誌にも連載を持つ。
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著者プロフィール

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