【フットサル】ブルーノ・ジャパンの最新序列。W杯出場権を懸けたアジア選手権のメンバー争いを読み解く

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【軍記ひろし】

今週、タイ代表との国際親善試合を終えた日本代表は、10月からAFCフットサル選手権2020予選に臨む。「東アジア選手権」と呼ばれる同大会の目的は、出場7カ国中の上位3チームに入り、2020年2月(予定)の本大会の出場権を獲得すること。そこでさらに上位5チームに入れば、同年秋にリトアニアで開催されるワールドカップに出場できる。2016年W杯の出場を逃した日本にとって、悲願の舞台である。

2016年10月に就任したブルーノ・ガルシア監督の下で始まったプロジェクトは、いよいよ最終ステージへと向かっている。現行のレギュレーションでは、アジア選手権、W杯に登録できる選手は14人。メンバー争いを勝ち抜き、日本を代表して戦うのは、いったい誰になるのか。最新の序列を読み解き、考察する。

今後の代表入りは想像以上に狭き門

この3年間の国内キャンプ、海外遠征、国際親善試合などでブルーノ監督が招集したのは、ゴレイロ10人、フィールドプレーヤー48人の計58人(招集された全選手名は記事の最後に記載)。その過程で「W杯出場」という絶対的な目標から逆算して選手の能力や適性を見極め、今回のタイ代表との国際親善試合で招集した16名について、ブルーノ監督は「70%の中核と、経験値では及ばない30%の選手」と表現した。この構成比率が、まずは大前提となるだろう。

さらにブルーノ監督は、「16名は、国内のみの選手から構成されていて、Fリーグの7クラブから招集しています。プラス3名、逸見勝利ラファエル、平田・ネト・アントニオ・マサノリ、清水和也がスペインとポルトガルでプレーしていて、彼らのことは私の頭の中にあります」と話している。

加えて、タイ戦後には、「海外でプレーしている選手、回復しつつある選手やケガをしているために招集できない選手、本来、呼ばれてもおかしくない選手を招集できない状況でも準備しておく必要がある。今日の試合で出場時間がなかった選手はそのためにトレーニングをして、準備をしてくれています」と、タイ代表がフルメンバーで挑んできたこととは逆に、日本はフルメンバーではなかったことを示唆する言葉を残した。

これらを踏まえると、ブルーノ監督が考える現状のベストメンバーを推測できる。
【日本代表ベストメンバー(14名)】
●ゴレイロ
ピレス・イゴール(39歳)
関口優志(27歳)

●フィクソ
皆本晃(32歳)
滝田学(33歳)

●アラ/フィクソ
吉川智貴(30歳)
西谷良介(33歳)
安藤良平(30歳)

●アラ(攻撃的)
仁部屋和弘(31歳)
逸見勝利ラファエル(27歳)
加藤未渚実(26歳)
室田祐希(27歳)

●ピヴォ
星翔太(33歳)
清水和也(22歳)
森岡薫(40歳)

国際大会の場合、多くの指揮官がゴレイロは2名か3名かで悩むものだが、日本も当然、本大会で3名を登録する可能性を考えると、ブルーノ監督が話す「70%」どころか、もはや「90%」は確定していると見るのが妥当だろう。もちろん、上記メンバーの誰もがその座を「安泰」と捉えている選手はいないと思うが、そうは言っても、現時点から先のメンバー入りは、思った以上に狭き門だということだ。
便宜上、年齢を記載したが、代表チームの目的が「W杯出場」ということを踏まえて、ベテランの役割が高くなることも当然だ。清水和也が唯一の「若手」の位置付けだが、エルポソのトップチームデビューも果たした22歳はもはや若手枠ではない。おそらく、招集歴のない選手を呼ぶ「サプライズ」も考えづらいだろう。

では、このメンバーが本大会に向けてどのように変化する可能性があるのか。

メンバー発表の記者会見ではいつも、ブルーノ監督は選手のポジションを明らかにするため、ポジションの構成バランスを重視して招集する指揮官だと考えられる。そうすると、ゴレイロの招集を2人と仮定すると、守備力、ゲームコントロール、パスやドリブルなどの攻撃志向を持つ「フィクソ」が2人、ゲームメイク、フリーランニング、守備と攻撃のつなぎ役ができる「アラ/フィクソ」が3人、ドリブルやシュート、3人目の動き、フィニッシュワークが得意な攻撃的「アラ」が4人、前線の起点となり、重要なゴールを奪えて、状況に応じたパス回しも苦手としない「ピヴォ」が3人という、現在のバランスが最適だと考えているだろう。現状では「バックアッパー」的な位置付けの強い選手が食い込めるかどうかは、彼らが今後のリーグ戦でどうアピールできるかにかかっている。

では、直近の国内合宿や、ポジション、プレー適性などを踏まえて、現時点の最新序列を読み解いていく。

ゴレイロの3人目は、檜山か篠田か?

守備力と攻撃力を兼備する守護神、ピレス・イゴール 【軍記ひろし】

●ゴレイロ
ピレス・イゴール
関口優志
────────
矢澤大夢
檜山昇吾
篠田龍馬
税田拓基

「ゴレイロ」の三番手はこれまで矢澤大夢だったものの、7月に左膝前十字靱帯断裂で戦線離脱。全治8カ月であるため、アジア選手権本大会の出場も難しく、3月の全日本選手権での復帰が濃厚となる。所属するバサジィ大分は首位争いを演じて好調を維持しているが、復帰後の代表活動で復調をアピールできたとしても経験不足がネックに。そう考えると檜山昇吾や、抜群の安定感がある篠田龍馬の可能性も浮上してくるだろう。

フィクソに求められるのは何よりも経験値

ブルーノ監督が信頼を寄せる皆本晃 【軍記ひろし】

●フィクソ
皆本晃
滝田学
────────
星龍太
森洸
田村友貴

現状の「フィクソ」は、ブルーノ監督のファーストチョイスである皆本晃と滝田学。皆本は推進力に優れ、自らグイグイ押し上げることで攻撃を機能させられる超攻撃的フィクソであり、滝田は、パスを散らしながらゲームを組み立てる司令塔タイプ。いずれも状況判断に優れ、ブルーノ監督の信頼は厚い。ゴレイロを除けば最後方の選手であるため、一つのミスが即失点につながるという意味で、経験値の高さは無視できない。

その2枚看板に割って入る候補としてはタイ戦でデビューした森洸と田村友貴がいるものの、田村にいたっては、2戦目に出場機会を与えられなかった。シュライカー大阪で頭角を現し、アルトゥールを追随する守備の強さと得点感覚を兼ね備える能力に疑いはないが、やはり経験値では及ばない。その点、ケガで離脱中の星龍太には、「名古屋オーシャンズの絶対的フィクソ」、「アジア王者のキャプテン」という実績があり、最終メンバーに食い込んでくる可能性は十分だろう。また、主力メンバーのなかに、パンチ力のある選手が少ないという意味では、後方からシュートを決められる森洸のようなタイプも貴重であることには違いない。

ほぼ確定してしまったアラ/フィクソ枠

日本史上最高の選手の呼び声が高い吉川智貴 【軍記ひろし】

●アラ/フィクソ
吉川智貴
西谷良介
安藤良平
────────
白方秀和
伊藤圭汰
内村俊太
植松晃都

「アラ/フィクソ」についても、吉川智貴、西谷良介という、ハイレベルなオールラウンダーがいるために、割って入ることのできる枠が余っていない。ケガから復調しつつある安藤良平が近年、急激なレベルアップを遂げていることもあり、この枠はほぼ確定してしまったと言える。清水和也と同世代の植松晃都や、技術と経験値が高い内村俊太など、実力は申し分のない選手が選ばれるためには、この先のリーグ戦で圧倒的な結果を出していくしか道は残されていないだろう。

当落線上の室田祐希を上回るアラが出てくるか

“日本の10番”仁部屋和弘 【軍記ひろし】

●アラ(攻撃的)
仁部屋和弘
逸見勝利ラファエル
加藤未渚実
室田祐希
────────
堀米将太
田口元気
内田隼太
田村龍太郎
橋本優也
八木聖人
新井裕生
瀧澤太将

日本フットサルで最も輩出されてきたのが攻撃的「アラ」だが、この4枠の争いも、残すは“最後のイス”かもしれない。“日本の10番”仁部屋和弘が完全復活を遂げたことと、10代の頃から“日本の至宝”と呼ばれた逸見勝利ラファエルを押しのけられる選手は、今の日本にはいないだろう。このポジションには、「ドリブラー」、「シューター」、「パサー」、「レフティー」などの武器が考えられるが、左利きのドリブラーである加藤未渚実も常にハイレベルなプレーを示しているため、優位は変わらない。トリッキーな仕掛けで局面を動かすことのできる室田祐希が当落線上にいることを考えると、A代表デビューを飾った堀米将太や、直前の合宿で呼ばれた田口元気、“清水世代”の内田隼太、名古屋での存在感が増す橋本優也、ケガから復帰した八木聖人などが圧倒的な武器を見せられるかどうか。メンバーが入れ替わる可能性はまだ残されている。

“ピヴォ御三家”を凌駕する選手が登場するのか

日本代表でリーダーシップを発揮し続けてきた星翔太 【軍記ひろし】

●ピヴォ
星翔太
清水和也
森岡薫
────────
平田・ネト・アントニオ・マサノリ
森村孝志
芝野創太
堀内迪弥
小門勇太

「ピヴォ」の3枠は、あまりにも壁が高い。「ピヴォ当ての要」、「4-0システムへの適応」、「前線の起点」、「フィニッシュパターン」、「得点力」、「経験値」といったあらゆる要素が求められるが、それらすべてを兼ね備えた上で、さらに「リーダーシップ」や「オールラウンダー」の資質を持つのが、星翔太、森岡薫、清水和也の3人だ。ブルーノ監督が、星、森岡のベテラン2人に絶大の信頼を寄せているだけでなく、清水はスペインでさらにレベルアップを遂げるエースであるだけに、その座は揺るがない。

残された道は、ブルーノ監督がピヴォを4人にするかどうか。

基本的に、どの選手にも求められるのが総合力であり、一芸に秀でる「ジョーカー」は選ばれづらい。左利きのピヴォである森村孝志や両利きの芝野創太はサイドアタッカーとしての能力も高いが、最低でも星や森岡が持つ「得点力」を見せない限りは厳しいだろう。また、国内最上級のパンチ力を持つレフティー・小門勇太も期待値が高いが、やはり、フットサルに転向してわずか数年の経験不足を無視できるだけのゴールを示せるかがカギとなる。海外組の平田・ネト・アントニオ・マサノリや、負傷離脱中の堀内迪弥も能力値は高いものの“ピヴォ御三家”を凌駕する可能性を示せないことには、メンバー入りは難しいだろう。

ブルーノ・ジャパンに悲劇は許されない

2016年10月に就任したブルーノ・ガルシア監督 【軍記ひろし】

何度も言うことになってしまうが、日本代表の現在の目標は、あくまでも「W杯出場」(出場した上でベスト4ではあるが)である。2016年の“失態”の責任を負っていないブルーノ監督としては、まだ試せていない可能性、組み合わせも当然あるだろう。ただし、起こるかもしれない化学反応を待つよりも、失ったプライドを取り戻すために、指揮官が石橋をたたいて渡るのは仕方のないこと。

タイ戦を前に「招集を見送った選手のことも忘れていない」と語ってはいたが、残された選手は相当な結果でアピールできない限り、最終メンバーに食い込む可能性はない。ブルーノ・ジャパンが、悲劇を繰り返すことがあってはならないのだから。

【2016年10月以降、ブルーノ・ジャパン招集された選手】
※順不同(招集された順番ではありません)
※国内の候補合宿を含む
※名前の後の「※」は初選出の選手

GK
ピレス・イゴール
税田拓基 ※
檜山昇吾 ※
藤原潤
篠田龍馬
関口優志
三浦拓 ※
矢澤大夢 ※
坂桂輔 ※
上原拓也 ※

FP
森岡薫
小曽戸允哉
星翔太
西谷良介
渡邉知晃
滝田学
中村友亮
皆本晃
諸江剣語
岡村康平 ※
星龍太
森洸 ※
仁部屋和弘
安藤良平
白方秀和
宮崎暁
芝野創太
田村龍太郎 ※
吉川智貴
田口元気 ※
前鈍内マティアスエルナン
中井健介 ※
加藤竜馬
内村俊太
森村孝志 ※
田村佳翔 ※
田村友貴 ※
酒井遼太郎 ※
室田祐希
逸見勝利ラファエル
堀米将太 ※
原辰介 ※
宮崎岳 ※
八木聖人 ※
橋本優也 ※
齋藤功一
新井裕生 ※
平田ネトアントニオマサノリ
内田隼太
上村充哉 ※
小門勇太 ※
加藤未渚実
堀内迪弥 ※
宮原勇哉 ※
清水和也 ※
瀧澤太将 ※
伊藤圭汰 ※
植松晃都
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