【サーフィン】五十嵐カノアが日本人初優勝した「CT第3戦バリ」を振り返る

チーム・協会

【PHOTO: © WSL/Dunbar】

日本人として初めてCT優勝した五十嵐カノア

2019年5月25日。

横浜赤レンガ倉庫では『GREENROOM FESTIVAL’19』が開幕、太平洋側では波に恵まれていたこの日、サーフィン界の歴史が塗り替えられた。

五十嵐カノアが日本人として初めてチャンピオンシップツアー(CT)での優勝を成し遂げたのだ。

2016年、18歳でCT入りを果たしたカノアはその年の最終戦『Billabong Pipe Masters』でファイナル進出を果たす。残念ながらタヒチのミシェル・ボウレズに優勝は奪われたが、予選リーグとなるQSとのダブルクオリファイで翌年もCT残留が決定。

2017年も『Billabong Pipe Masters』で活躍して3位に入り、更に夏の『Vans US Open of Surfing』で初優勝。

2018年は目標であったトップ10入りを決め、『Vans US Open of Surfing』では2連覇を達成した。

2019年は東京2020オリンピックに向けて各国代表争いが絡む大切なシーズン。カノアは開幕戦、ベルズを共に9位でフィニッシュしてまずまずの滑り出しとなり、迎えたバリ島・クラマスでのCT第3戦『Corona Bali Protected』では第1回戦(Seeding Round)こそ大敗したが、次の第2回戦(Elimination Round)からはリズムを掴んで第4回戦(Round of 16)までは全てのヒートで7ポイント以上を出して対戦相手を圧倒。

五十嵐カノア PHOTO: © WSL/Dunbar 【PHOTO: © WSL/Dunbar】

第1回戦敗退からの決勝戦進出

ウェイティングピリオド最終日に迎えたファイナルデイでは準々決勝(QF)でベテランのエイドリアン・バッカンを僅差で倒し、小さい頃から側で見ていた憧れのサーファー、ケリー・スレーターとSFで対戦。
スーパーヒートと称されたフィリッペ・トレドとのQFからバレルに焦点を当てていたケリーに対してバリエーション豊かなマニューバーで攻めたカノア。
安定したスコアメイクで2016年の『Billabong Pipe Masters』以来、2度目のファイナル進出。会場では現地の日本人サポーターが熱狂、大きな日の丸の旗もあり、ブラジリアンストームならぬ、ジャパニーズストームに包まれた。

そして、最後は「Quiksilver」のチームメイト、フランスのジェレミー・フローレスとファイナルを戦い、ここでもカノアのペースは崩れず、フローターとトレードマークの一つとなっているパワフルなレイバックで9.10をスコア。
この一本が決め手となり、後半に強烈なターンを披露して追い上げてきたジェレミーをかわしてCT初優勝を果たした。

「やっと達成した。この優勝のためにハードなトレーニングをこなしてきたんだ。波に乗れなかった最初のラウンドの後、これまでのことを考えてみたんだ。ジムでのトレーニング、サーフィン。どんな小さなことでも一人で積み重ね、今やっと形となったよ。自分にとってとても価値がある優勝だし、言葉では表現出来ないね」
五十嵐カノア

2位はジェレミー・フローレス(FRA) PHOTO: © WSL/Dorsey 【PHOTO: © WSL/Dorsey】

11Xワールドチャンピオン ケリー・スレーター

ファイナルデイの朝はこの時期らしく風の影響がすでに入っていたが、潮が上げるのにつれて風もおさまり、サイズ的にもアップ。
公式6-8ftレンジのグラッシーなフェイス、クラマスはパーフェクトコンディションになった。

レイデイの間に話題になっていたケリー・スレーターとフィリッペ・トレドのQF、スーパーヒートはバレルに狙いを絞ったケリーの作戦勝ち。
絶好調だったフィリッペさえも倒してしまったのだ。

「IS KELLY SLATER BACK?」とWSLが特別にトピックスを作った通り、47歳とは思えない(ケリーの年のことを書くのはもはやナンセンスだろう)サーフィンは驚きを通り越す。
12度目のワールドタイトル獲得に加え、2020年東京オリンピックのアメリカ代表に選ばれる可能性も十分にあり、もし、そうなれば9月に宮崎で開催される「ISAワールドサーフィンゲームス(WSG)」にも参加することになるだろう。

ケリーは次のSFでカノアに敗れた後、インタビューに答えた。

「カノアは良くやったよ。彼は間違いなく後押ししてくれたね。カノアとヒートを戦えて嬉しい。彼はこれから長い間ツアーに参加してトップ10に居座り続けるだろうね。本当に楽しかったよ。ここを得意とするフィリッペや、2度もファイナルに進んでいるミシェルを倒せて良かった。二つ共大きなヒートだったし、勝てて自信になったさ」
ケリー・スレーター

ケリー・スレーター PHOTO: © WSL/Dunbar 【PHOTO: © WSL/Dunbar】

今回の結果により、カノアは一気にランキング2位になり、トップのジョン・ジョン・フローレンスとの差も僅か。
5月29日〜6月9日にオーストラリア・マーガレットリバーで開催されるCT第4戦『Margaret River Pro』の結果次第ではイエロージャージを手に入れる可能性もある。
ベルズで5位、バリ島で3位に入ったケリーもしっかりとランキングを上げて9位に浮上、トップ10入りを果たしている。

ウィメンズ優勝はステファニー・ギルモア

ステファニー・ギルモア PHOTO: © WSL/Dorsey 【PHOTO: © WSL/Dorsey】

ウィメンズは開幕戦で優勝、第2戦『Rip Curl Pro Bells Beach』で3位に入り、イエロージャージをキープしていたキャロライン・マークスが失速。
ディフェンディングチャンピオンのレイキー・ピーターソンもR3(Round of 16)で姿を消し、QFではカリッサ・ムーア、コートニー・コンローグが敗退。
そんな中、ステファニー・ギルモア、サリー・フィッツギボンズ。CTを主導する二人のオージーがファイナリストに選ばれ、ステファニーがイベント唯一のパーフェクト10をマークして圧勝。

開幕戦、ベルズと5位に甘んじていたステファニーはキャロラインさえも追い越し、一気にカレントリーダーの座を手に入れることに成功。
次のマーガレットリバーからはイエロージャージを着用することになる。

「ランキングトップになれる可能性があるなんて知らなかったの。ストークしているわ。自分の意思をはっきりさせるために黄色いネイルに黄色い物を身につけていたのよ。予測不可能だけど、マーガレットリバーもベストを尽くす。そして、ずっとイエロージャージを着て一年を終えられるようにと願っているわ」
ステファニー・ギルモア

PHOTO: © WSL/Dunbar 【PHOTO: © WSL/Dunbar】

サーフィンチャンピオンシップツアー 第3戦『Corona Bali Protected』

メンズ
1位 五十嵐カノア(JPN)
2位 ジェレミー・フローレス(FRA)
3位 マイケル・ロドリゲス(BRA)、ケリー・スレーター(USA)
5位 ウェイド・カーマイケル(AUS)、コロへ・アンディーノ(USA)、フィリッペ・トレド(BRA)、エイドリアン・バッカン(AUS)

ウィメンズ
1位 ステファニー・ギルモア(AUS)
2位 サリー・フィッツギボンズ(AUS)
3位 ブリッサ・ヘネシー(CRC)、ニッキ・ヴァン・ダイク(AUS)
5位 カリッサ・ムーア(HAW)、シルヴァナ・リマ(BRA)、コートニー・コンローグ(USA)、ブロンテ・マコーレー(AUS)

2019CT『Corona Bali Protected』終了後のランキング
1位 ジョン・ジョン・フローレンス(HAW) 17,415pt
2位 五十嵐カノア(JPN) 16,640pt
3位 イタロ・フェレイラ(BRA) 16,075pt
4位 フィリッペ・トレド(BRA) 15,865pt
5位 コロへ・アンディーノ(USA) 13,875pt

2019ウィメンズCT『Corona Bali Protected』終了後のランキング
1位 ステファニー・ギルモア(AUS) 19,490pt
2位 キャロライン・マークス(USA) 18,695pt
3位 コートニー・コンローグ(USA) 17,355pt
4位 カリッサ・ムーア(HAW) 17,290pt
5位 サリー・フィッツギボンズ(AUS) 16,495pt

※ランキング・記事内容は2019/05/25時点のものです。
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