弱き自分を押し退けるための毎日の筋トレ。そして臨む「勝負のファーストスクラム」
「スクラムで負けたら試合で負けると思っています。ペナルティを取られたらゲームの情勢が変わるので、メンタル的なプレッシャーが大きい。できることをやらずに負けるのが許せないし、みんなにも顔が立たない。だから、心が弱い自分を安心させるために、『誰よりもやってきたんだ』という自負のもとで試合に臨みたくて毎日筋トレをしています」
有藤は中学のころからプロップ一筋。173cmと小柄だが、「僕が生き残っていく道は低くなることしかなかった。低く組んで下から上に突き上げるのが僕の強み」とスクラムで譲れぬ武器がある。ただ、試合では最初のスクラムを組むまで常にプレッシャーがつきまとう。
「ファーストスクラムが始まるまでは怖さも楽しみもある。でも、1本組んで相手の感じが分かれば、僕らはいろいろな引き出しを持っているので、次に何を試そうかというマインドに切り替わります」そこにはスクラムを強化してきた自信もある。有藤は、「今までずっとスクラムで苦戦していたから、今季のスタートミーティングでもかなり厳しいことを言われて、僕としては『スクラムのせいで負けた』ぐらいの感覚で捉えていた」と奮起したきっかけを明かす。
フォワード陣はプレシーズンから積極的にコミュニケーションを取り、より具体的に詳細を突き詰めて改善に力を注いできた。
「これまで取り組んできてスクラムの引き出しが増えたし、だからこそ試合で相手がしてきたことに対して、自分たちで修正できる力が身に付いてきている。柔軟に対応できるのがいまの強みです」
中国RRは昨季1勝で最下位だったのが、今季はすでに5勝を挙げて3位につける。3連勝で勢い付く中、今節は2位の狭山セコムラガッツとの大一番。敗れた前回対戦のリベンジも懸かった試合で、もちろんスクラムでは負けられない。
「今さら新しいことをすることはないので、やってきたことを一つひとつ積み重ねるだけ。受けるスクラムじゃなくて、積極的にいきたい」
1番で先発出場を続ける有藤は試合前日も変わらず筋トレをこなす。「試合前にどれだけ筋肉を張らせられるかが一番大事。それは僕のお守りみたいなもの」。
プレッシャーをかき消すために、むしろいつも以上に力が入る。
勝負のファーストスクラム。このときに向けて「誰よりもやってきた」。筋肉の張りが弱い自分を押し退ける。
有藤は両腕の袖をめくって覚悟を決めた。「攻めのスクラムで押し切ってやる」
(湊昂大)
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