女子の時代到来!? ロサンゼルスで連覇を狙う車いすラグビー日本代表の新しい風
2028年にロサンゼルスで開催されるパラリンピックで2大会連続の金メダルを目指す日本代表(世界ランキング1位)は、2月6日から9日までの4日間、千葉ポートアリーナで開催された2025ジャパンパラ車いすラグビー競技大会に出場。オーストラリア(同2位)、フランス(同4位)、イギリス(同5位)の強豪3ヵ国と戦い、決戦でフランスを51-48で下して優勝。4年後に向けて幸先のいいスタートになった。
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ターンオーバーが起こりやすく目が離せない展開に!?
WWRによると、選手と観客の両方の視点から、定期的にルールを検討しているといい、インバウンド(スローイン)、キーエリア(オフェンスがとどまることができる時間)、ドリブルの制限時間を従来の10秒から8秒に短縮することで、ターンオーバーを増やす狙いがあるという。
また、これまでは選手によるタイムアウトが試合中に4回まで認められ、主に相手のディフェンスから逃れるために使われてきた。しかし、今後はオフェンス時に選手が取ることができるタイムアウトがなくなったため、ディフェンス成功時にターンオーバーが起きやすくなったといえる。
変更を受けてエースの池透暢は「難しい面もある」としつつ、「日本チームはローポインターのスピードがあるので、ミスマッチでもしっかり追いかけてターンオーバーを誘うようなディフェンスができるのではないか」と話し、ディフェンスが得意な日本代表にメリットもあるとした。
新ルールで女子選手が増える!?
車いすラグビーでは、選手にはそれぞれ障がいの程度によって持ち点が与えられており、4人の持ち点が8.0以下になるようにチームを編成しなければならない。男女混合の競技として普及し、従来は女性が1人コートに入る場合は4人の持ち点の合計に0.5点加点されるルールだった。今回のルール改正により、女子のローポインター(0.5-1.5)が入る場合の加点に変更はないが、女子のハイポインター(2.0以上)が入る場合、1人につき4人の持ち点の合計に1.0点加点されることになった。
WWRの担当者は説明する。
「ラフバラー大学の研究結果と提言を参考にしました。女子のハイポインターが直面する課題(男女の筋力差による影響)に対処することに焦点を当てています。女子のローポインターは、同等に不利益が生じているわけではありませんでした」
日本チームの場合、パラリンピックや世界選手権などの主要大会で著しい活躍を見せている倉橋香衣が持ち点0.5のローポインターであり、新ルールによる影響はない。
一方、パリで金メダルを争った宿敵のアメリカにはサラ・アダム(2.5F)というボールを運べてスピードもある女性ハイポインターがいて、今回来日したオーストラリアやイギリスにもハイポインターがいるため、多少なりとも新ルールの恩恵を受ける。
実際、女子のハイポインターが入ったラインと戦ったチームの感覚として「1.0点加点された影響は、さほど感じなかった」(倉橋)と話した者もいれば、「ちょっとあれは嫌ですね」(白川楓也)と話す者もいた。
2人の女子選手が代表に
そんな倉橋を見て「日本代表の女性は1人だったから、たくさんの重圧を背負ってやってきたんだろうな」と話すのは、倉橋と同じ1990年生まれの月村珠実(1.5F)。今大会の日本代表だ。車いすラグビー歴は15年を数えるが、国際大会は初出場。今大会、日本代表チームに初めて複数の女子選手が入ったことになる。
中谷HCは期待を寄せる。
「日本にはすごくいい1.0の選手が揃っている。だからこそ、経験が偏らないように、今大会は月村選手を選出しました。持ち点が1.5ということもあり、本人も意識しているボールハンドリングを活かすプレーがいいと思って見ています」
争うライバルは強敵だが、初の国際大会も落ち着いてプレーして存在感を見せた月村。今大会で橋本と共同キャプテンを務めた乗松聖矢も「月村選手はトライやディフェンスでチームを救ってくれている。(初出場だが)新しい選手とは思っていない」と話すほどだ。
月村は「日本のハイポインターが世界のすごい選手ばかりなので強度には慣れているが、国際大会は試合の進むスピードが早い。そこにもっと対応していきたい」と話し、「パスもスピードもまだまだこれから。全体的にパワーを一段階、二段階上げていきたい」とさらなるレベルアップを誓った。
「うまく絡めたところは絡めたんですけど、マンツーマンになると厳しいところもあった。もっと賢くなりたいなと思ったし、改めて練習していこうと思います」
4ヵ国合わせて計7人の女性選手が躍動したジャパンパラ。ロサンゼルスを見据え、各ラインの組み合わせのカギを握る女子選手にも注目していきたい。
photo by X-1
※本記事はパラサポWEBに2025年2月に掲載されたものです。
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