MLBポストシーズンレポート2024

ヤンキース投手陣は大谷翔平をどう攻略するのか 過去の対戦からわかる「徹底されたコースと配球」

丹羽政善

今季、大谷を上手に抑えたヤンキース

 ということで、過去の対戦から、大谷への攻めに関する様々な傾向を辿ってみた。

 明日の先発はゲリット・コールだが、まず、過去の配球を見ると、56.7%が4シームで、18.6%がチェンジアップ。この1球種で全体の約75%を占め、ナックルカーブが12.4%という割合だった。

大谷に対するコールの配球 【参照:Baseball Savant】

 どのコースへ投げているかというと――。

コールが大谷に投げたコース(球種別) 【参照:Baseball Savant】

 4シーム(赤)は基本的に真ん中より高めに投げ、空振りした4シームも1球を除いて全て真ん中から高めだった。

 次に、大谷が打ち取られたコース、ヒットを打ったコースを比較すると、以下のような感じになった。4シームをヒットにしたのは1球だけ(下図)。2022年8月31日、エンゼル・スタジアムで逆転3ランを放った。ただ、基本的には高めと外角の球を打って凡退、というパターンがほとんど(上図)。

大谷がアウトになったコース 【参照:Baseball Savant】

大谷がヒットを打ったコース 【参照:Baseball Savant】

 外角の球を打って打ち取られるというのは対コールだけではなく、他の投手との対戦でも同様だ。

ヤンキース戦で大谷が、打ってアウトになったコース 【参照:Baseball Savant】

 そうなると当然、ヤンキースの投手陣はいかに大谷に外角の球に手を出させるか、という配球を意識することになる。大谷としては、打ってもアウトになる可能性が高いなら、ファールで凌ぎ、相手のミスを待つか。

 もちろん、外角の球を打っての柵越えもあるので、外角ならそこで仕留めるプロセスが重要になり、そういう術がなければ、簡単には大谷を抑えられないのではないか。

ヤンキース戦で本塁打を打ったコース 【参照:Baseball Savant】

 では今年、ヤンキースはどう大谷を攻めたのか。13打数2安打で、打球初速100マイル以上の打球は2本だけ。うまく抑えたと言える。右投手と左投手に分けてコースと球種を調べると、攻めのパターンが徹底されていた。

 まず、右投手。

大谷に対するヤンキース投手陣のヒートマップ(右投手) 【参照:Baseball Savant】

大谷に対するヤンキース投手陣の配球(右投手) 【参照:Baseball Savant】

 4シーム、チェンジアップ、シンカーの3球種で75%を超える。4シームは内角高め。シンカーは内角高めか外角低め。チェンジアップは外角低め。対角線を利用している。

大谷に対するヤンキース投手陣のヒートマップ(左投手) 【参照:Baseball Savant】

大谷に対するヤンキース投手陣の配球(左投手) 【参照:Baseball Savant】

 左投手の場合は、4シームとカッターの2球種で75%を越え、続いてスイーパー。ただこのときは、第2戦で先発するロドンとの対戦がなかったので、彼と対戦すれば、スイーパーの割合がもう少し増えるはず。

 いずれしても左投手は、徹底して外角低めを攻めていた。

 もちろん、6月の対戦は、大谷の頭にも入っているはず。

 そのことを知っている上で、ヤンキースは同じような攻めをするのか。ガラリとパターンを変えるのか。プレーオフでは、先発もリリーフも短期で対戦する回数が多くなるので、その中でどんな駆け引きがあるのか。明日から始まるワールドシリーズを、楽しみに待ちたい。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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